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実験医学増刊 Vol.34 No.15 遺伝子制御の新たな主役 栄養シグナル

矢作 直也 (編)

株式会社 羊土社

231 頁  (2016年6月)

Android 対応製品 iOS/iPhoneOS対応製品

eBook Price(ダウンロード販売): ¥5,940 (税込) 

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リリース日: 2019年02月06日

「食べる≒生きる」あらゆる生命現象に関わる栄養について取り上げた一冊。

生体の構成物やエネルギー源だけではなく,情報物質としての機能を持つ栄養.質量分析,in vivoイメージング等の解析技術の進歩により見えてきた栄養シグナルと生命,がん・糖尿病などの疾患との関係に迫る!

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生体の構成物やエネルギー源だけではなく,情報物質としての機能を持つ栄養.質量分析,in vivoイメージング等の解析技術の進歩により見えてきた栄養シグナルと生命,がん・糖尿病などの疾患との関係に迫る!


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外界から栄養を摂取し,代謝して生きる,というのは,ヒトはもとより,動物すべてに共通の営みであり,日常の言葉のなかでも,「食べていく」と「生きていく」はほぼ同義で使われるくらいに,「食べる≒生きる」は当たり前のこととされています.しかし,「食べる」ことから,「生きる」こと,すなわち生命活動へつなげていくプロセスは実際には気が遠くなるほどに多くの過程からなり立っていて,そこには複雑な調節機構があるはずです.にもかかわらず,哺乳類だけをとってみても,草食動物もいれば肉食動物もおり,雑食の動物もいて実にさまざまな栄養環境に置かれているなかで,体の構造や組成は大きくみれば種を超えて保たれ大差はない,というのは,たいへん不思議なことに思われます.

一方,数年〜10数年というスパンで見ていくと,過食が肥満や糖尿病,動脈硬化といった,いわゆる生活習慣病につながることもある,というのも広く知られている事実です.また,カロリー制限は酵母・線虫・昆虫・哺乳類に共通して,寿命延長効果があるとされています.しかし,これら周知の事実についても,「過食とは何か...?」「そもそも適正なカロリーとは...?」「最も健康的な食事とは...?」と考えていくと,どんどんわからないことだらけになっていきます.早い話,私自身,糖尿病外来では患者さんたちに「食事は控えめに,外食のときは食事を残しましょう」と話した同じ日に,家に帰れば自分の子ども達には,「ご飯は残さず,しっかり食べなさい」と言うわけで,ことはさほど単純ではありません.だからこそ,生体も「高度な情報処理」を日々,行いながら,なんとか難しいバランス・落としどころを探りつつ上手に生きている,ということでしょう.

このように謎に満ちた生命と栄養との関係がいま,生命科学・医学の研究課題として改めて大きな注目を集めはじめています.単なるエネルギー源として,または生体の構成物質としてとらえられていた栄養の,「情報物質」としての新たな側面が質量分析などの技術革新を背景に次々と明らかにされつつあります.また同時に,それらの情報がどのように処理されていくのか,その「情報処理系」についても,ゲノム科学の進歩やさまざまな個体解析技術の発展を通じて,新たな知見が積み上がってきています.

本書では,「情報物質」としての栄養・代謝物についての最新の話題(第1章)から,「情報処理系」としてのニュートリゲノミクス(第2章),そしてさらに,それらと疾患とのかかわり(第3章)まで,非常に幅広いテーマを扱いました.各章のより詳しい内容については,それぞれの概論もご覧ください.専門外の方や一般の方からは,「ニュートリゲノミクス」と聞いてもなんだか難しそうでよくわからない...という声も聞こえてきそうです.そういう方はぜひ,こんなふうにイメージしてみてはいかがでしょうか.ゲノム・クロマチンというのは,細胞にとって意思決定の最高中枢機関であり,会社で言えば「役員会」のような場です.「栄養」はざっくり言えば「お金」に当たります.ニュートリゲノミクスとは,この「役員会」をそこに出席している「財務担当役員」の目で見ていく,そんなイメージです.

考えてみれば,冒頭に書いたように,「食べる≒生きる」であり,すなわち,あらゆる生命現象に栄養はかかわっているわけで,ニュートリゲノミクスという研究分野も,実際のところ,あらゆる生命現象が対象です.また,ゲノム編集を含む遺伝子改変技術やin vivo イメージング技術,あるいは次世代シークエンサーを用いた腸内細菌解析技術など,「個体まるごと」でのアプローチ手法が近年,大きく進歩してきたことも,ニュートリゲノミクス研究を後押ししてくれています.本書が1 つのきっかけとなり,潜在的にはこれまでも栄養シグナルとのつながりが見え隠れしていた現象・研究に今後,正面から「ニュートリゲノミクス」の光が当たるようになれば,編者の意図としては大成功です.


◆   ◆   ◆


本書の企画に際しては,日本分子生物学会で2014,15年と2度に渡って行われたワークショップ(2014年「『食』と『カラダ』の相互作用:メタゲノミクスからニュートリゲノミクスまで」と2015年「栄養・メタボライトと遺伝子発現調節〜ニュートリゲノミクスの最前線」)から多くのことを学ばせていただきました.また,さらにその背景として,平成23〜27年度文部科学省新学術領域研究「生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御(転写代謝システム)」では5年間にわたり,非常に多くの先生方と交流させていただき,なかでも領域代表の深水昭吉先生には多大なるご支援を賜りました.さらにそのまた背景としまして,平成16〜21年度文部科学省特定領域研究「遺伝情報発現におけるDECODEシステムの解明」では領域代表の五十嵐和彦先生をはじめとする諸先生方にたいへん温かくご指導いただきました.こうした研究活動の熱く楽しい議論の場を通じて貴重なご縁をいただいた先生方に,今回,本書のご執筆をご快諾いただけたことも,個人的にはたいへん嬉しく,有難いことでした.この場をお借りしまして,これまでのご指導・ご高配,ならびにご執筆の労をおとりくださいましたことに厚く御礼申し上げます.

ニュートリゲノミクスはまだ発展途上の学問領域であり,本書も同じく「未完の書」ではありますが,本書が次なる段階への一歩となり,この分野がさらに発展していくきっかけになれば望外の喜びです.


2016年8月

矢作 直也


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第1章 新たに見えてきた,栄養・代謝物シグナルによる遺伝子制御メカニズム

[概論] 栄養シグナルの一覧と全体像

1. 栄養・代謝物シグナルのメタボローム解析

2. アミノ酸によるトア(TOR)制御メカニズム―その傾向と対策

3. S-アデノシルメチオニン代謝と全身性傷害応答

4. Sirtuin・NAD+と遺伝子制御

5. 解糖系派生物メチルグリオキサールによるメタボリックシグナリング

6. 核内のピルビン酸キナーゼM2による転写調節機構

7. 脂肪酸結合タンパク質と遺伝子発現調節

8. コレステロールによる遺伝子発現制御

9. 栄養による胆汁酸代謝遺伝子制御からの代謝疾患へのアプローチ

10. 鉄代謝と遺伝子制御

第2章 栄養環境応答において,ゲノムはどのように読まれるか?〜ニュートリゲノミクス〜

[概論] ニュートリゲノミクスとは

1. FAD依存性ヒストン脱メチル化酵素による遺伝子制御

2. エネルギー代謝とDNAメチル化制御

3. 絶食時のエネルギー代謝とヒストンアセチル化制御

4. エネルギー代謝とメディエーター複合体

5. 酸化ストレス応答転写因子NRF2の転写制御機構

6. 摂食・絶食サイクルの転写調節機構

第3章 栄養による遺伝子制御と生命現象・臓器機能〜その破綻と疾患の観点から〜

[概論] 医学・疾患研究とニュートリゲノミクス

1. オートファジーと栄養遺伝子制御

2. 低酸素と栄養遺伝子制御

3. 食品-腸内細菌-宿主クロストークによる腸管免疫制御

4. 栄養摂取による概日遺伝子発現の制御

5. 栄養から見る線虫の寿命制御経路

6. 哺乳類の老化・寿命と栄養遺伝子制御

7. 栄養と代謝物による遺伝子発現と脂肪細胞の機能制御

8. メカノ-メタボ連関と栄養による遺伝子発現制御―エネルギー代謝コーディネータとしての骨格筋機能

9. 栄養素によるグルカゴン,インスリンの変動と糖尿病との関連

10. 動脈硬化と栄養遺伝子制御―膜貫通型転写因子が制御する脂質代謝と動脈硬化

11. 腸内細菌による栄養成分の代謝物と宿主病態―発がん・がん予防との関連に着目して


Topics

i. 哺乳類の細胞サイズを規定する分子基盤

ii. ERRによるメタボリックスイッチとiPS細胞誘導

特記事項

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