自分らしく働くために 看護キャリアの描き方・作り方

  • ページ数 : 190頁
  • 書籍発行日 : 2017年6月
  • 電子版発売日 : 2018年11月23日
¥3,080(税込)
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商品情報

内容

「キャリア開発ラダー」を導入することで,看護現場ではどんな効果があるのかを解説します。

患者さんやその家族の皆様と長期間近くにいてケアをしている透析クリニックの看護師,地域医療の最先端を担っている中小規模の医療機関の看護師を対象として作りました.「キャリア開発ラダー」に取り組む,透析クリニックや中小規模病院を支援します.

序文

プロローグ

キャリアという捉え方は,自分らしさの追求といってもよいでしょう.キャリアは,自分らしくあるための生き方,働き方を問うものです.そのキャリアを開発するための一つの人材育成の仕組みが「キャリア開発ラダー」です.

「キャリア」とは,たとえば転職に有利になったり,周囲からの評価を勝ち取るためのものではなく,さまざまな仕事での経験(うまくいったことも,失敗も含めて)を自分自身の成長につなげられる・変換できる力ではないだろうか,と考えています.

現実の職場(組織)は,些細なことから構造的なことまでさまざまな問題を抱えているのが現実です.しかし,それにただ不満を述べるにとどまらないで,この環境のなかで自分らしい仕事をしていくためにはどうしたらいいのか,組織と自分とのすり合わせをしながら,悩みながら仕事をしていく.この積み重ねが「キャリアを磨く」ことにつながっていくのではないでしょうか.キャリアは自分一人で築けるものでなく,それはやはり組織という他者との関わりのなかで磨かれていくものなのだと思います.


「キャリア開発ラダー」を導入することで,看護現場ではどんな効果があるのでしょうか.たとえば,新卒での入職から4~5 年間,ただただ毎日の仕事のことだけを考えて一生懸命仕事をしてきたときに,この先どうしたらいいのかとふと考え込むことがあります.「キャリアは自分自身で考える」という発想がないと,決められたレールに乗るか乗らないかの選択しかないと思い込みがちです.そして,将来に向けた方向性がわからなくなり悩みを抱えるようになるということもしばしば起こります.

こういう時に「キャリア開発ラダー」の仕組みにより,看護師として新人のときから,あるいは中途採用のときからどのような働き方をするのか,どんな能力を開発していくのかの方向性を描くことができます.ラダーとは「梯子」という意味です.自ら目指す方向に梯子をかけて登っていくイメージです.その能力の段階は,「キャリア開発ラダー」によって可視化され,能力の指標は具体的です.「キャリア開発ラダー」は,長い時間をかけて一人の人間として,看護師としての成長を期待できるものなのです.卒業して3 年経過したある看護師は,ラダーの仕組みを知ったことで,看護の仕事に対する迷いが吹き飛んだと,嬉しそうに語りました.また30 代の看護師は,看護師としての自分のキャリアを考えるきっかけになったと話してくれました.

また,プライベートな生活と仕事との両立で悩むこともしばしばあります.たとえば,結婚や育児や介護,あるいは進学などで仕事を継続することが難しくなる時期があります.一時期仕事を休んだり辞めたりすることが,自身の仕事に大きなダメージを与えるのではと悩みます.看護師としてどんな仕事の仕方をしたらよいのか,仕事を続けることができるのか,辞めなければいけないのか,岐路に立つこともしばしば起こります.しかし,「キャリア開発」の理念は,人間尊重です.組織の中心にある「人」を大切にするための仕組みが「キャリア開発ラダー」です.したがって,自分自身でキャリアをデザインし,自己決定して自分なりの歩み方を許容する仕組みでもあるのです.今は子育てに専念したいと決めた中堅の看護師は,他の看護師と比べる必要もないことを知り,自分らしくキャリア開発できることで,仕事も子育ても充実できると笑顔を見せていました.

看護師のキャリア開発とは,個々の看護師が社会のニーズや各個人の能力および生活(ライフサイクル)に応じてキャリアをデザインし,自己の責任でその目標達成に必要な能力の向上に取り組むことです.そして,一定の組織のなかでキャリアを発達させる場合,その組織の目標を踏まえたキャリアデザインとなり,組織はその取り組みを支援するものであることが示されています(日本看護協会「継続教育の基準ver. 2」).また,2009 年の保健師助産師看護師法などの法改正により,看護師の資質の向上や,自ら進んで能力の開発・向上に努めることが法律にも明記されています.今や看護師の能力開発は,社会的な責務なのです.そのために,組織には,多様な専門性や能力をもつ人材を育成することが求められます.また,個々の看護師の働くことに対する意識は多様化しています.自分のキャリアを組織に任せるのではなく,自分自身で考える必要が出てきたのです.

患者さんやその家族にとっても,「キャリア開発ラダー」の意義はとても大きいと考えます.看護師が実践する看護をどのように保証するのか,それが「キャリア開発ラダー」の仕組みであり,運用であり,活用であると思います.

キャリア開発ラダーは,それを導入さえすれば個人がやる気をもち組織が活性化するという「魔法の杖」では残念ながらありません.風通しのよい組織風土がなければ,キャリア開発ラダーの仕組みを作っても絵に描いた餅と化してしまいます.組織においてさまざまな仕組みを動かすのは「人」ですから,人の可能性を信じて人材育成に取り組む組織文化の醸成が問われています.


本書は,患者さんやその家族の皆様と長期間近くにいてケアをしている透析クリニックの看護師,地域医療の最先端を担っている中小規模の医療機関の看護師を対象として作りました.

透析看護の特徴は,「病いとともに生きている人へのケア」です.透析患者やその家族と看護師の関係性は,「ケア」そのものであり双方の成長を期待できるものです.透析クリニックの看護師の育成は重要な課題でもあります.しかしながら,大病院には当たり前のようにある継続教育のシステムや「キャリア開発ラダー」の仕組みは,透析クリニックにはほとんど取り入れられていないのが現状です.

中小規模病院は,地域住民の健康管理の最初の窓口です.中小規模病院で働く看護師の役割や期待は大変大きく,そこでの看護のありようは,社会に最初に評価される場でもあります.中小規模病院であるがゆえに,人材育成に力を入れ「キャリア開発ラダー」の活用が求められていると思います.

そこで本書は,透析クリニックや中小規模病院の現場において,「キャリア開発ラダー」の仕組み作りを支援するためのものとなるように,多くの事例を紹介しながら構成しました.学習する組織となるように,現場でできる研修方法もいくつか紹介しています.また,透析クリニックに限定した主任・師長のための「管理ラダー」も紹介しています.「自分らしく働くために 看護キャリアの描き方・作り方― 透析施設をモデルにした中小規模病院でのキャリア開発ラダー」という本書のタイトルは,筆者らの長年の願いと期待を表すものです.

今,「キャリア開発ラダー」に取りかかろうとしている施設,「キャリア開発ラダー」を前にして困り果てている施設などいろいろな状況があろうかと思います.是非,興味のある章から読み進めていただきたいと思います.チームカンファレンスなどを活用して,話題にしていただくとともに,「キャリア開発ラダー」の構築に一歩ずつ取り組んでいただければ大変幸甚に思います.本書を活用してみてご意見やご批判もいただきたいと思います.

また,「キャリア開発ラダー」に取り組む,透析クリニックや中小規模病院の支援もしていきたいと思っておりますので,NPO 法人日本看護キャリア開発センターへお問い合わせください.


長年の夢でありました本書の出版を支援していただきました日本メディカルセンターに深謝申し上げます.最後に,我々の原稿執筆のペースを尊重して辛抱強く支援し,適切なアドバイスとともに多くのご指導をいただきました日本メディカルセンターの澤村玲子氏に心より感謝申し上げます.


2017年4月

筆者を代表して 下山 節子

目次

第1章 キャリア開発ラダーに取り組む前に ここがポイント!

1.キャリアとは何だろう?

キャリア--積み重ねてきたすべての経験/自分の持っている能力や方向性を「たな卸し」してみる

2.キャリアを開発することの意義とは?

キャリア開発の基本的な考え方/キャリア開発プログラムの考え方

3.キャリア開発ラダーとは?

キャリア開発ラダーの意義とは?/能力段階とは?/「構成要素」とは?/導入の現状と課題は?/透析クリニックでキャリア開発ラダーは必要か?/キャリア開発ラダー導入の効果は?

4.キャリア開発ラダーと目標管理はどのように関係するの?−明確で有効な目標を設定する

そもそも目標ってどう立てる?/目標管理とは--組織の目標と個人の目標の連動のさせ方/目標面接の進め方

第2章 さぁ キャリア開発ラダーの導入に進みましょう!

1.キャリア開発ラダー導入が成功するためのコツは何?

2.キャリア開発ラダー導入は14のステップを踏んで進めよう!

導入計画のスケジュールを立てる/キャリア開発ラダーの導入手順の14のステップ

3.キャリア開発実践ラダーの実際

透析室キャリアラダーのモデル例/ユニークな実践例の紹介

第3章 キャリア開発ラダー運用の実際

1.評価・申請システム

評価の考え方/申請の考え方/評価・申請の仕組み/評価方法/ラダー別実践能力評価表/評価会のあり方

2.教育システム

教育の考え方/教育の仕組み/ラダー別教育プログラムを作成する

3.処遇システム

処遇の考え方/処遇のアイデア

4.キャリア開発ラダーを運用するうえでのQ&A

第4章 キャリアを活かす研修プログラムの作り方 ここがポイント!

1.成人教育の考え方を踏まえた研修の企画とは?

成人教育学(アンドラゴジー)の考え方/学習をどう動機づけるか?− 学習支援者の役割とは/「経験」を共有することが成長につながる

2.【臨床実践能力】 関連研修① リフレクション研修

3.【臨床実践能力】 関連研修② ナラティブ研修

4.【人間関係】 関連研修 コーチング研修

5.【教育・研究能力】 関連研修 事例検討

第5章 管理者のためのマネジメントラダーの作り方 ここがポイント!

マネジメントラダーにおける構成要素と段階は?/マネジメントラダーにおける申請と評価システムは?/マネジメントラダーにおける教育方法は?/マネジメントラダーにおける処遇方法は?/マネジメントラダーの運用のコツは?

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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784888759250
  • ページ数:190頁
  • 書籍発行日:2017年6月
  • 電子版発売日:2018年11月23日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:2

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特記事項

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