『麻酔科学レビュー2018』が完成したので，ここにお届けしたい．

本書が最初に刊行されたのは1996年であり，実に20年以上のロングセラーである．小生の大先輩でもある天羽敬祐先生が編集を担当され，長年にわたって項目に適した執筆者を厳選し，そしてその時代に合わせたトピックスを選んでこられた．2016～2017年は長崎大学ならびに旭川医科大学の名誉教授である澄川耕二先生と岩崎 寬先生がその監修を引き継いでこられたが，縁あって2018年度版から弘前大学大学院医学研究科麻酔科学講座の廣田和美先生と小生が監修を担当することになった．大変光栄に思うと同時に責任の重さを感じているところである．

本書は，麻酔科専門医はもちろん，これから専門医を目指す若手医師および研修医を読書対象とし，国内外で発表された麻酔科学関連の論文を網羅的に集め，重要な情報を簡潔に提供することを特徴としている．そして，この2018年度版は，2016年8月～2017年7月の約1年間に発表された論文の中から，それぞれの領域における第一人者が，注目すべき情報として掘り下げ解説いただいたものである．

今回の著書の特徴としては，従来の項目を引き継ぐとともに，執筆者を一部刷新させていただいたことに加え，麻酔科医が把握しておくべきガイドラインを多く取り入れた．すなわち，「術前絶飲食」「周術期禁煙」「悪性高熱症」「宗教的輸血拒否」「危機的出血」「WHO安全な手術」「産科危機的出血」「Awake craniotomy 麻酔管理」，そして「抗血栓療法」である．これらについても新しい文献を加え，わかりやすく概説いただいた．さらには，最近急増している内視鏡手術の麻酔管理（ロボット手術も含む）と集中治療における血液浄化のトピックスにも言及した．

それぞれの分野のエキスパートが概説しているため，概説を読むことでその特徴を理解でき，また特に読んでいただきたい文献は太字で強調しているので是非原文を読むようにお勧めしたい．さらに，それぞれの分野のエキスパートが，担当分野の最近の特徴をどう読み解いているのかを考えて読むのも一考である．

最近，麻酔科学領域だけでも40誌近くあるであろう学術誌に目を通し，最近の趨勢を正確に把握することは，情報が氾濫しているが故にかえって難しくなっているのではないかと感じる．監修者として本著の校正ゲラに目を通しているが，この時点でだいぶ得した気になっているのは小生だけであろうか．本著が日本の麻酔科医の学術臨床の底上げになることを願ってやまない．

2018年3月

監修者を代表して

山蔭 道明

札幌医科大学医学部麻酔科学講座　教授