目の不自由な方を誘導する ガイドヘルプの基本 第2版

  • ページ数 : 174頁
  • 書籍発行日 : 2009年2月
  • 電子版発売日 : 2019年11月25日
¥3,520(税込)
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商品情報

内容

視覚障がい者の誘導法(ガイドヘルプ)を,非常にわかりやすく解説した研修用テキスト.ガイドヘルプの基本技術はもとより,階段の上り下り,エレベータ,バス,電車の利用など主要10場面でのガイドヘルプの手順を,多数のイラストと,懇切丁寧な注を用いて,なぜそうするかの根拠を示しながら解説.ガイドヘルパー,移動支援事業者,介護スタッフにおすすめの実践書.

序文

まえがき

近頃,街の中で一人歩きをしている視覚障害の方をよく見かけるようになりました.白杖を使っていたり,盲導犬と一緒だったりします.

皆さんは外出先で一人で歩いている視覚障害の方を見かけた時,何かお手伝いしようと思ったことはありませんか? 手伝おうと思ったが,「どうしたらいいか分からなかったので,声をかけなかった」方も多いのではないでしょうか.これは「壁」の1 つです.「思い切って声をかけたが,断られた」方もいらっしゃるかもしれません.

視覚障害の方から手助けを断られた場合,「手助けを受けた後で,方向や場所が分からなくなると困る」,「歩き慣れた場所なので,手助けを必要としていなかった」など,ご本人にとってはその時「とにかく手助けを必要としていなかった」と理解するのがよいでしょう.

その反面,助けを求めているのに,「手助けが得られない」と訴える視覚障害の方も多いのです.このことは,実際街中で助けを求めている視覚障害の方をあまり目にしないので意外に思われるかもしれません.

目が不自由でない私たちは,たとえば道を探す場合,まず自力で見つける努力をして,うまくいかなければ,身近な人に「すみません,駅はどう行けばいいですか?」などと助けを求めるのではないでしょうか.もちろん,いきなり身近な人に尋ねる人もいるでしょう.

しかし,人生の途中で全く目が見えなくなった人,あるいはそれに近い人にとって,身近な人を見つけること,そして声をかけることは,私たちが思うほど簡単ではありません.

私たちは助けを求める場合,まず相手を見つけて,近寄っていき(あるいは自分に近づくのを待ち),声をかけます.このような私たちが普段何気なくおこなっている簡単なことが,目が見えない人にとって,とても難しいのです.くつ音や話し声から人が近づくことを知り,声をかけるのです.が,声が小さいため気づかれず,立ち止まってもらえずに去って行かれる失敗を繰り返し,恥ずかしさも加わって,消極的になってしまいます.ここにも「壁」があります.このようなことから,街中で助けを求めている視覚障害の方を目にすることが少ないのです.

「壁」はお互いの「声」を聴き合うことで,もはや「壁」ではなくなります.

視覚障害の方をお手伝いする第一歩は,まず「声をかけること」です.

視覚障害の方に近寄り,普通の声の大きさで「こんにちは」,「どちらまでいかれますか?」と声をかけてみてください.そして「何かお手伝いできることはありませんか?」と尋ねます.「お願いします」と言われたら,「どのようなことか」ききます.街中を一人で歩いている方ですから,「教えて欲しいこと(知りたいこと)」,「して欲しいこと」が具体的に話されるでしょう.

具体的な行き先を告げられた時,ガイドヘルプの仕方を知らないと不安に思う方もいらっしゃるかもしれません.でも心配しないでください.ガイドヘルプが上手でなくても,視覚障害の方から喜ばれているのも事実なのです.

また,街に出ている視覚障害の方の中には,移動についての支援を期待している方ばかりではなく,出会いのあった方の生き方,世界観,人生観などに触れられることを楽しみにしている方もいらっしゃいます.

実際にガイドヘルプをしてみて,もう少しレベルを上げようと感じた方は,本書に基づいてガイドヘルプの知識と技術を習得し,すばらしいサポートにつなげてください.ガイドヘルパーとして活動している人々は,「ガイドヘルパー」としての「やりがい」「充実感」「喜び」などについて,次のように感じています.

・ガイドヘルパーをすることで自分が社会とつながっていると実感できた

・ずっと主婦をしていたが,多くの利用者さんといろいろな場所へ外出の機会が増えて,自分自身が勉強になり,世界が広がった

・「あなたがいるから気持ちよく外出できてありがとう」と感謝された

・「普段行かれない場所へ案内してもらえてよかった」と言われて,自分も元気になり,利用者さんのために健康に気をつけるようになった

・交流が広がり,自分自身が人間として,社会人として,また,よりよい生活者になれた(日常生活の質が高められた)

・利用者さんの一生懸命に生きていこうという気持ちを感じ,自分の生き方に影響を受けた

さて,平成15 年4 月の支援費制度導入後の社会情勢の大きな変化として,平成18 年10 月からの障害者自立支援法の全面施行があります.それに伴って従来の「移動介護事業」が,市町村が実施する地域生活支援事業の中の必ず実施しなければならない「移動支援事業」として位置づけられました.また,ガイドヘルパーの養成は,指定事業者が行っていますが,その研修内容に幅があり,受講者が研修で習得するガイドヘルプ技術に差が生じています.このため平成20 年に社会福祉法人日本盲人会連合会は厚生労働省の障害者自立支援対策臨時特別交付金を受けて,移動支援従業者指導員の養成研修を始めました.


そこで第2 版では,障害者自立支援法の全面施行にあわせて記述内容を変更するとともに,序章,7 章,付録1,付録3,索引などを追加しました.また,統計データを更新し,本文中のわかりにくい記述(図の番号や注の入れ方など)を改めました.

新たに加えた「7 章 ガイドヘルプの現場での注意点」では,「教科書通りにはいかないケース」や「実際にあった事故例とヒヤリ・ハット事例」を具体的に解説していますし,付録1 の「ガイドヘルプ研修でのチェックポイント」は,ガイドヘルパー養成研修において,どの程度技術を習得できたか自己チェックするのにたいへん便利です.このチェックリストはNPO 法人しろがめの養成研修で実際に行っているチェック内容に基づいています.


本書により,一人でも多くの方が視覚障害の方を理解し,社会参加を支援してくださればこの上なく幸せです.


※なお,本書は視覚障害の方にとっての危険な全局面を,完全にカバーするものでないことをご了承ください.


2009年1月

村上 琢磨
関田 巖

目次

序章 ガイドヘルパーの心得

A.言葉による情報提供の10ポイント

B.視覚障害の方に接する際の19ポイント

1章 視覚障害者ガイドヘルプの基礎知識

A.視覚障害の方の生活・移動手段とガイドヘルパーの役割

B.視覚障害の方への福祉制度とサービス

C.視覚障害者ガイドヘルパーとサービス

D.視覚障害者ガイドヘルパーの養成研修

E.視覚障害者ガイドヘルパーとしての就業

F.本書で解説する視覚障害ガイドヘルプ技術の特徴

 1.常に前に位置するガイドヘルプ技術

 2.肘などをつかんでもらうガイドヘルプ技術

 3.白杖を操作しないガイドヘルプ技術

 4.ガイドヘルパーの動きを重視するガイドヘルプ技術

 5.中途視覚障害の方にも適応できるガイドヘルプ技術

 6.サイン(合図)を用いないガイドヘルプ技術

G.視覚障害の方のガイドヘルプサービスの利用

H.歩行関連の視覚障害用装具・日常生活用具など

2章 視覚障害と関連疾病の理解

A.見え方の構造

B.視覚障害の理解

C.視覚障害の原因になる主な病気とガイドヘルプでの注意点

3章 視覚障害の方の心理,感覚,コミュニケーション

A.視覚障害の方の心理

B.視覚障害の方の感覚

C.視覚障害の方の心理とコミュニケーション

D.視覚障害の方の声

4章 視覚障害者ガイドヘルパーとは

A.なぜガイドヘルプが必要か

B.ガイドヘルパーを利用する視覚障害の方々

C.視覚障害者ガイドヘルパーに必要な心構え

5章 視覚障害者ガイドヘルプの基本技術

A.ガイドヘルプの基本技術は,ガイドヘルプ動作の「型」を習得すること

 1.ガイドヘルプ動作の「型」

 2.「声かけ」は必要だが限界がある

 3.ガイドヘルパーの動作「型」によるガイドヘルプ

B.ガイドヘルパーがしてはいけない動作

C.ガイドヘルプの基本技術1

 1.基本姿勢

 2.ガイドヘルプで使う手,腕,足

 3.基本姿勢をとる

 4.基本姿勢を保つ

D.ガイドヘルプの基本技術2

 1.声かけ

 2.水平移動・上下移動

 3.止まる

 4.視覚障害の方の足元を見る

 5.視覚障害の方の手を導く

 6.対象物を支持する

E.ガイドヘルプの基本技術のまとめ

6章 主要10場面でのガイドヘルプ

[1]平地移動

A.平地移動・右折・左折

B.Uターンする

[2]いすへの着席

A.いすへの接近

B.視覚障害の方の手をいすに導く

C.着席を見守る

[3]狭い所,ドアの通過

A.狭い所の通過

B.一般的なドアの通過

C.引き開くドアの通過

D.押し開くドアの通過

E.自動ドアの通過

F.引き戸の通過

[4]段差,階段スロープの上り下り

A.段差の通過

B.手すりのない階段の上り下り

C.手すりのある階段の上り下り

D.不規則な階段の上り下り

E.ラセン階段の上り下り

F.スロープの通過

[5]トイレの利用

A.便房(個室)の利用

B.小便器(男性用)への誘導

C.洗面所の使用

[6]エレベータの利用

A.エレベータへの接近

B.エレベータに乗る

C.エレベータから降りる

[7]エスカレータの利用

A.エスカレータに乗る

B.エスカレータから降りる

C.エスカレータに視覚障害者の方と一緒に乗り降りする方法

[8]タクシーの利用

A.タクシーへの乗車

B.タクシーからの降車

[9]バスの利用

A.歩道(段差あり)から車道に下りる

B.バスの乗車

C.バスからの降車

D.車道から歩道に上がる

E.座席の利用

[10]電車(列車)の利用

A.駅舎エレベータ・エスカレータの利用

B.切符の購入

C.改札口の通過

D.改札口からプラットホームへの移動

E.プラットホームでの移動

F.電車(列車)への乗車

G.電車(列車)からの下車

7章 ガイドヘルプの現場での注意点

[1]教科書通りにはいかないケース

[2]実際にあった事故例とヒヤリ・ハット事例

付録1 ガイドヘルプ研修でのチェックポイント

付録2 視覚障害者ガイドヘルプ関連の制度とサービス

A.障害者(児)福祉の制度とサービス

B.ヘルパーのサービスについて

付録3 NPO法人 視覚障がい者支援しろがめについて


索引

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対応機種

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  • Androidロゴは Google LLC の商標です。

書籍情報

  • ISBN:9784830643491
  • ページ数:174頁
  • 書籍発行日:2009年2月
  • 電子版発売日:2019年11月25日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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