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- 外来でのコミュニケーション技法第2版
商品情報
内容
最初の3分間は患者さんのためにどのようにして患者さんをリラックスさせるか?
患者さんの「健康問題物語」を聴きましょう
患者さんの話が止まらなくなった! ・・・
著者自身の診療経験をもとに,忙しい外来でも実践できるよう工夫されたコミュニケーション技法とそのためのツールを紹介しています。
序文
第二版の序
『外来でのコミュニケーション技法』が装いを新たにし、第二版として出版されることになりました。一九九五年の初版以来、八刷を数えたそうです。多くの読者に利用していただいたことは、著者の大きな喜びです。
改版までのこの一〇年間に、医療の分野に大きな変化がありました。まず、医療事故、医療過誤が大きな社会問題になり、その予防策に関する議論がなされるようになりました。また、医療は患者のためのものであるという、ごく当たり前の認識が一般的なものになり、患者自身の意思決定が重視され、医療情報の公開が強く求められています。
このような変化を反映して、臨床の現場でも、良好な患者―医師関係を築くこと、患者のニーズを捉え、これに応えることが重視されるようになりました。そしてその基盤は良好なコミュニケーションにあるということが、より深く理解されてきたのです。苦労して身につけた医学知識や技術も、良好なコミュニケーションなしには活かされず、患者の満足につながらないのです。
この一〇年間に、医学校や研修機関では医療コミュニケーション技法についての実習がいっそう盛んになりました。その評価法であるOSCE(objective structured clinical examination ;客観的臨床能力試験)も幅広く取り入れられてきました。今後、このような教育を受けた若い医師達が、患者中心の医療の担い手になるはずです。
ところで、英国で誕生したNBM(narrative based medicine ;ナラティブ・ベイスド・メディスン)という臨床技法が、日本でも広まりつつあります。これは、医師が、「患者の物語」を基盤として「医師自らの物語」をすり合わせ、両者の納得と合意に基づく「より新しい患者の物語」を創出するための技法です。本書の第3章には、『患者さんは「健康問題物語」を作り上げて医師を受診する』という節があります。ここで紹介したArthur Kleinmanの解釈モデルは、NBMにおいても重要な理論的基盤となっています。本書が多くの読者に支持されてきた理由の一つは、このような内容の斬新性にもあったと自負する次第です。
〈junior新書〉として生まれ変わった本書が、さらに多くの医療関係者の方々にご利用いただけることを期待します。
二〇〇六年 三月
著者
初版のまえがき
若いドクターのための参考書として、また第一線の医療の現場で活躍中の先生方には生涯教育の資料としてご使用いただくために、「外来診療を中心とした医療におけるコミュニケーションに関する実用的な本」を書きたいと何年も前から考えておりました。これまでに出版されている面接やカウンセリングに関する本、精神療法の本は、臨床の場で用いるには理論偏重であったり、忙しい外来での実用性という点を配慮していないものが多いのではないかと感じていたからです。
自治医科大学では、一九九〇年から医学部四?五年生に対して「医療コミュニケーション技術」と称する必修カリキュラムを設けました。ここでは、健康問題に関するシナリオを用いたロールプレイとそのビデオ録画による検討という学習法を用いています。患者さんや家族とのコミュニケーションのあり方が重要な学習目標の一つです。著者はこのカリキュラムの創設と運営に関わりました。
このほか著者は、自治医科大学地域家庭診療センター行動医療学外来での教育・診療経験一九九三年から始まり十数回におよぶ全国各地の医師会の先生方との「医療におけるコミュニケーション」の勉強会や、医学生対象の行動医療学ゼミナールなどを通じて本書のテーマについての学習を深めることができました。
以上のような事情の中でこの本ができあがりました。
この本は次のような点を特徴としております。
①外来診療の時間的経過(患者さんとの出会いから診療の終了まで)に沿って、各々の場面でのコミュニケーションのあり方について述べました。
②医師のマナーや診断学という領域のみでなく、医療人類学、社会心理学、精神医学、生命倫理学、医療法律学といった領域の学問的成果をふまえました。
③コミュニケーションの各場面で医師はどのように行動すればよいのかという実用的な側面を重視しました。
④医療におけるコミュニケーションという比較的抽象的な内容をイラストや図表によってできるだけ視覚化、簡潔化しました。
⑤コミュニケーションの概念を幅広くとらえ、「文字表現によるコミュニケーション」も重視しました。そのための道具は付録として綴じ込み、読者の方が拡大コピーしてそのまま使用できるようにしました。
⑥医療の場におけるコミュニケーションについて議論する際には、必ず時間の問題、経済性の問題が出てきます。本書ではできるだけ時間を効率的に使用し経済的にも問題が生じないような方法を示しました。
⑦健康と病気に関して患者さんの家族は重要な位置を占めます。したがって、家族とのコミュニケーションについても多くの紙面を割きました。
本書の出版が、第一線の医療における良好なコミュニケーションが促進されるためのささやかな契機になれば幸いに存じます。
本書の出版にあたり、山形県での一〇年間の地域医療活動の同僚であり、今は浦和市で第一線医療に従事されている飯島美千穂博士には、すべての原稿に目を通していただき、内容の批評から校正にいたるまで貴重な示唆と支援をいただきました。お蔭で内容が実践的かつコンパクトになったと思われます。心より感謝いたします。
自治医科大学地域医療学教室の大西康史、今井康友、吉村学、高木史江、三瀬順一の諸先生方には、若いドクターの立場から貴重なご意見をいただきました。その結果、本書の内容に新鮮さが吹き込まれたものと感謝しております。
日本医事新報社の編集スタッフには、「読んでもらえる本」とするために企画の段階から様々なご示唆をいただくとともに、たびたびの激励によって執筆意欲をかき立てていただきました。厚く感謝するものであります。
一九九五年 五月
著者
目次
第1章 臨床のかなめとしてのコミュニケーション
1 コミュニケーションが及ぼす診療への大きな影響
2 治療(癒し)としてのコミュニケーション
3 患者さんも医療者もコミュニケーションを求めている
第2章 医師と患者さんとの出会いかた
1 出会いは診察室の外でもう始まっています
2 診察室の外でも医療哲学を実践していますか?
3 待合室での医療者の行動や電話での応対は大丈夫ですか?
4 専門職としての役割以前に、社会人としてのマナーがあります
5 どのようにして患者さんをリラックスさせるか?
第3章 診療の開始 患者さんのニーズ、問題をとらえていますか?
1 患者さんは「健康問題物語」を作り上げて、医師を受診する
2 患者さんの話が止まらなくなった!
3 患者さんの解釈モデルをとらえる
4 コミュニケーションを構成する三つの要素
第4章 患者さんの症候をとらえるコツ
1 症候をとらえるための質問を整理しておく
2 患者さんへ質問する際の落し穴
第5章 色々な医療コミュニケーションの方法と道具
1 様々なコミュニケーションの方法
2 コミュニケーションの道具の紹介
第6章 プライベートな情報を手に入れるには―疾患についてだけでなく、「病気を持つ人間」についての効果的な情報を得る
1 両耳で患者さんの話を聴きましょう
2 「身体心理社会的三角形」を用いたアプローチ
3 要注意!「異常はありません」「精神的なもの」という説明
4 心理社会的情報を得ること=患者さんのプライベートな領域に入ること
5 患者さんの心理社会的領域への入場券を手に入れるには
第7章 家族とのコミュニケーション
1 なぜ家族か?
2 家族とのコミュニケーションが重要な局面
3 図式モデルを利用した医師患者家族関係の理解
4 どのように家族へアプローチするか?
第8章 どうなさっていますか?―よくある対応が難しい場面
1 「先生、治るでしょうか?」
2 患者さんが急に黙り込んでしまった
3 「先生、私はもうだめなんでしょうか?」
4 「病気は治らないし、いっそのこと早く楽になれたら......」
5 患者さんが怒り出してしまった
第9章 癒しとしてのコミュニケーションのちから
1 感情の発散―医師はうっ積した感情のじょうずな受け手です
2 告白―ひとりで抱えるには苦しい秘密。先生にしか話す人がいません
3 保証―先生に診てもらうと安心して元気が出る
4 孤独感の解消―私には先生がついている
5 医師による「病人である」という認定―診断書によって安心して環境に再適応できる
6 期待するほど効果がある―プラセボ効果の活用
7 優しさの科学―愛情も健康回復のための大きなちから
8 文化的なレベルでの癒し―地元のカミサマにかかったら良くなりました
第10章 診療の終了―帰り際のどんでん返しに気をつけて!
1 本当に終わって大丈夫?
2 患者さんに確認しましょう
3 ドア・ノブコメントに注意!
4 診療終了時のその他の重要事項
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書籍情報
- ISBN:9784784941353
- ページ数:256頁
- 書籍発行日:2006年3月
- 電子版発売日:2012年2月3日
- 判:新書判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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