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なぜベイズを使わないのか!?  臨床試験デザインのために

手良向 聡 (著)

株式会社 金芳堂

168 頁  (2017年7月)

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リリース日: 2018年03月23日

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ベイズの定理を使えば、臨床研究はもっと柔軟になる!ポストP値時代の臨床試験はベイズ統計学が大本命

本書はベイズ流で臨床試験をデザインするにはどうしたらいいのか、1章で統計学の基本的な考え方と、頻度流・ベイズ流の違い、使い分けをわかりやすく説明。2章では医学者がベイズ流統計専門家と協力して臨床試験をデザインする上での必要な知識を事例を紹介し、最後3章では、既にベイズ流が浸透しつつあるアメリカFDAのベイズ流臨床試験ガイダンスを翻訳して収録しています。

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ベイズの定理を使えば、臨床研究はもっと柔軟になる! ポストP値時代の臨床試験はベイズ統計学が大本命

効果的・倫理的に科学的な臨床試験を行う上で欠かすことのできないのが統計学的な処理である。いまのところ日本の臨床試験では頻度論統計学が使われている。しかし、先行研究とベイズの定理を利用すれば、サンプル数を押さえたり、中間解析を柔軟に行う試験デザインができることから、 探索的臨床試験において、ベイズ流統計学に注目が集まり、既にアメリカではFDAがベイズ流統計学を使う際のガイダンスが出るなど、状況が変わってきている。

本書はベイズ流で臨床試験をデザインするにはどうしたらいいのか、1章で統計学の基本的な考え方と、頻度流・ベイズ流の違い、使い分けをわかりやすく説明した。2章では医学者がベイズ流統計専門家と協力して臨床試験をデザインする上での必要な知識を事例を示しながら示した。最後3章では、既にベイズ流が浸透しつつあるアメリカFDAのベイズ流臨床試験ガイダンスを翻訳して収録した。

本書を読めば、少ないサンプルで統計的に効果があるかを判断したり、あるいは有害事象が出た場合の中止判断を柔軟にできるベイズ流統計学の威力を理解できるようになる。


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医学・薬学・看護学の分野に身を置くと,統計学は難しくて分からないという人に多く出会う。それは,私たち専門家の教え方にも問題があると思うが,それだけが原因ではなく,統計学は確率を扱う学問であり,確率とは何かについて多くの考え方があり,適用場面によってそれらを使い分ける必要があるから難しいのである。また,技術的な面は学習によってある程度は克服可能であるが,統計学を適用する場面は社会のほぼすべての領域にわたっていて,その分野の知識と経験がなければ,結果の正しい解釈ができないのである。さらに,統計学は数学の一分野であると思っている人がいるが,それは誤りである。もう30年以上前になるが,私が通っていた大学の数学科に統計学の講義はなく,おそらく今もないと思う。統計学は積分や行列など数学で用いる道具を用いるが,数学の延長線上にはない学問なのである。それは一言でいうと,演繹の学問と帰納の学問という違いである。ただし,数学の一分野である確率論は1500年代にジロラモ・カルダーノ,1600年代にブレーズ・パスカルとピエール・ド・フェルマーが議論した賭け金の分配問題に端を発しており,そこからヤーコブ・ベルヌーイによる大数の法則,アブラム・ド・モアブルによる正規分布などが生まれた。従って,確率論を土台にして数理統計学という学問が生まれたと言うことはできる。ちなみに,ベイズ流統計学の始祖トーマス・ベイズ(1702-1761)はド・モアブル(1667-1754)や偉大な数学者レオンハルト・オイラー(1707-1783)とほぼ同じ時代に生きた。

統計学を本格的に勉強し始めると思想・哲学の重要性に気付く。従って,統計学を本当に理解したければ,まずは科学哲学,特に確率の哲学やそれにまつわる思想を学んだ方がよい(たとえば『偶然を飼いならす』『確率の哲学理論』『偶然とは何か』『 科学と証拠』『 確率の出現』など)。特に,プラグマティズムという思想は統計学と関係の深い重要な思想である(『パースのプラグマティズムなど)。本書で主に扱うベイズ流統計学は,古典的と呼ばれている頻度流統計学に対して異端の統計学として扱われてきた歴史をもつ。しかしながら,近年はベイズ流統計学ブームと言ってもよいくらいの人気で,ここ数年間に膨大な数の参考書が刊行されている。これらの多くはデータサイエンス,ビッグデータのブームと連動し,主にデータ解析に主眼が置かれている。本書では,それらとは異なる視点で臨床試験のデザイン(いわゆる実験計画)にこれまで主として用いられてきた頻度流の方法の利点と欠点を述べながら,それを補うような形でベイズ流の方法をどう利用するかについて分かりやすく解説することを意図している。また本書では,標本サイズの計算やデータ解析を行うための詳細な技術についてはほとんど述べず(多くの良書を参照し),その考え方の基本を伝えることを目標としている。最初に断っておくが,臨床試験のデザインと解析に頻度流の方法が有用な場面は多く,すべての臨床試験をベイズ流の方法で行うべきだと主張するつもりはない。

ベイズ流臨床試験を行う際には,臨床研究者と統計家の真の協同が不可欠である。臨床研究者は,事前情報の確かさ,目標値の見積もり,臨床試験を継続するかどうかを決定する確率閾値などについて,専門家としての見解を持っている。統計家は,事前情報や目標値の妥当性,実施可能性などについて臨床研究者と議論し,デザインを決定しなければならない。近年,臨床試験にベイズ流接近法が有用であるという報告が増えつつある。米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)医療機器・放射線保健センターは,2010年に企業とFDA スタッフ向けに「医療機器の臨床試験におけるベイズ流統計学の利用に関するガイダンス」を公表した(第3部「ベイズ流臨床試験のガイダンス」参照)。今後,新しい臨床試験デザインの開発は,医薬品や医療機器の承認申請にインパクトを与える可能性がある。特に,資源を有効に活用するという観点から効率よく臨床試験を行うことが今後ますます重要になるであろう。

本書は,ベイズ流臨床試験デザインを多くの方に知っていただくことを意図しているが,それらは第2 部(第11章から第15章)に書かれている。第1部(第1章から第10章)は,その準備のための章であり,臨床試験デザインの基本および古典的な頻度流接近法の長所と短所について解説している。特に,第10章には頻度流統計学の問題点をまとめている。それらの部分を読む必要のない方は第2部から読み進み,必要に応じて第1部,および第3部を参照していただければ幸いである。

本書の内容は,多くの先生方からの指導・助言に基づいている。まずは,臨床試験の方法論についてご指導いただいた福島雅典先生,生物統計学について長年ご指導いただいた大橋靖雄先生,折笠秀樹先生,佐藤俊哉先生に深く感謝したい。また,共同研究者または同僚として多くの助言をしてくれた松山裕先生,松井茂之先生,森田智視先生,山中竹春先生,大門貴志先生,大庭幸治先生,吉村健一先生,田中司朗先生,横田勲先生に感謝したい。さらに,本書の原稿を読んで有益な助言をしてくれた大門貴志先生,木下文恵氏,金芳堂の浅井健一郎氏には改めて感謝したい。


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第1部 臨床試験デザイン入門

1.医学研究と統計学

コラム「確率の哲学」

2.臨床試験の計画

3.統計的仮説

4.解析対象集団とサブグループ解析

5.中間モニタリング

6.頻度流統計学-仮説検定

7.頻度流統計学-推定と信頼区間

8.標本サイズ設定と検出力解析

9.頻度流の標本サイズ設定

10.頻度流統計学の問題点

コラム:P値は試験計画に依存する

第2部 ベイズ流臨床試験デザイン

11.ベイズ流統計学

12.事前分布、尤度、事後分布、予測分布

コラム「共役解析」

13.単群臨床試験デザイン

コラム「頻度流の標本サイズ設定との関係」

14.2群臨床試験デザイン

15.メタアナリシス

第3部 ベイズ流臨床試験のガイダンス

1.はじめに

2.序文

3.ベイズ流統計学

4.ベイズ流臨床試験の計画

5.ベイズ流臨床試験の解析

6.市販後調査

7.技術的詳細


索引

特記事項

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