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亜鉛欠乏症の臨床

宮田 學(著)

株式会社 金芳堂

124 頁  (2009年10月)

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リリース日: 2013年01月01日

必須微量栄養素のなかで日本人は特に亜鉛とカルシウムが不足している。これらのうち本書では、亜鉛についての基礎的知識から欠乏症までを記す。

亜鉛については一般知識も含めて、仮説や根拠の乏しい情報が錯綜している感がある。本書ではこれまでに発表された多くのすぐれた文献を礎とし、精査して確かな知識を提供する。一般医師をはじめ、医療関係者必読。

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須微量栄養素のなかで日本人は特に亜鉛とカルシウムが不足している。これらのうち本書では,亜鉛についての基礎的知識から欠乏症までを記す。亜鉛欠乏症患者は一般に考えられているより遥かに多くいるといわれるが,亜鉛の重要性についての認識が医療関係者の間で明らかに不足している。欠乏症は高齢者において特に深刻で,味覚障害による栄養障害のみならず,褥瘡などの原因ともなり,今後,高齢化が進むことを考えると,亜鉛についての知識の周知は急務といえる。

 亜鉛については一般知識も含めて,仮説や根拠の乏しい情報が錯綜している感がある。本書ではこれまでに発表された多くのすぐれた文献を礎とし,精査して確かな知識を提供する。一般医師をはじめ,医療関係者必読。


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体内に僅か2 g ぐらいしか存在しない微量の亜鉛が,ヒトの健康や生存に必須の元素であることが分ったのは,1963 年中近東の地方病で,はじめ鉄欠乏性貧血に依るとされていた青年男子の発育不良,二次性徴の遅滞,脱毛,皮膚炎,異食症などの症候群が,食事中のフィチンが原因の亜鉛欠乏症であることをPrasad が発見したことに始まる。

次いで1970 年Henkin は,ペニシラミン治療による味覚障害が,ペニシラミンが持っているSH基の亜鉛キレート作用による薬剤性味覚障害であることを発見,亜鉛内服治療で治癒せしめている。

さらにHenkinらは,1968 ~ 1969 年米国で流行した香港かぜのあとで急増した味覚嗅覚合併障害の一群(PIHH)に亜鉛欠乏が多発し,亜鉛内服治療が有効であったと報告した。

また1973 年Barnes とMoynahan は,腸性肢端皮膚炎が先天性亜鉛欠乏症であり,亜鉛内服治療が有効であることを報告した。

それらの論文に触発されて,首都圏で亜鉛治療を始めていた私共臨床家が,薬学や分析化学の研究者を糾合し,緒方富雄東大名誉教授を世話人代表として,1975年11月東京・学士会館で第1 回微量金属代謝研究会を立ち上げた。これが日本における組織立った亜鉛研究の始まりである.その後,お茶の水の駿河台日大病院講堂に会場を移し,毎年学術集会と会誌発行を続けていた。

私が宮田學博士の存在を意識したのは,1987 年の学術集会で,博士の講演を拝聴したことに始まる。改めて学会誌を繙くと,宮田博士は京都大学老年医学教室所属で11 集(1983)から放射化分析による組織中微量元素の研究を毎年発表されている。私にとっては,1987 年に発表された「経口亜鉛負荷試験」が,患者の亜鉛の腸管吸収の病態を知るために,日常の臨床に大変役に立つ検査法であることで強く印象づけられたのである。

しかしその発表を最後に,宮田博士のお姿を研究会で見掛けなくなり,1989 年私が主催した第2回国際微量元素医学会議,つづいて発足した日本微量元素学会でも,暫らくお姿を見ることはなかったが,1996 年第7 回日本微量元素学会が京都で開催された折,懐しいお顔に巡り合えた。宮田さんは研究を離れていたが,老人医療の専門医として第一線で活躍していらっしゃった。そしてまた時が過ぎ,2005 年突然宮田學著「亜鉛と健康」―不老と長寿の必須微量金属―が送られてきた。

博士はそのまえがきに「亜鉛の知名度は,鉄に比べると総理大臣と一年生議員ほどの差があり,この活躍が期待される一年生議員をよく知っていただこうと思ってこの本を書いた」と述べておられる。この気持は亜鉛の素晴らしい働きを識っている研究者達が抱いている共通の焦燥感である。とくに亜鉛は,公害大国日本において,1970 年から1980 年代にかけて,鉛に似た金属と誤解され,謂れのない迫害に苦しめられた必須微量元素であったからである。

耳鼻咽喉科医である私にとっても同じ思いがある。近年ますます増えている味覚障害の原因の中で,日頃の食事中の亜鉛不足が全症例の30%を占めるが,次に多い20%の症例は,約240 種類にのぼる服用薬剤の副作用によるものであり,主に高血圧,脂質異常,糖尿病,前立腺肥大などの成人病により複数投与されている薬剤が原因の薬剤性味覚障害である。しかし多くの医師は自分の処方で患者の舌がおかしくなっていることに気付いていない現状に,怒りに似たもどかしさを感じるのである。

「亜鉛と健康」は、コンパクトに良く纏められていて,亜鉛の臨床に詳しいつもりでいた私でさえも教えられたところが数多くあった。しかし一般の読者には少し難しいかなと思っていたら,やはり医家からの反響が大きかったらしい。その医界からの要望が更にこの大著になったわけである。

目次を通覧し,さらに内容に目を通してみて,亜鉛の素晴らしい働きを臨床医に広く知ってもらいたいと願う宮田博士の情熱を強く感じるのである。

70歳以上の人口は平成20 年には2000 万人を超えている。亜鉛は300 を超える酵素活性に関っており,日々の食事から必要量を摂取しなければならない栄養素であるが,厚生労働省の2010 年版日本人の食事摂取基準によれば,70 歳以上の亜鉛摂取量の平均値は男性8.4 mg 女性7.3 mg と一応推奨量に達しているようにみえるが,倉澤らの長野県北御牧村住民の血清亜鉛値の分布図をみると,30 歳前後の女性と70 歳以上の高齢者では,基準値下限の80μg /dL に達していない住民が有意に多く,その群の中の住民はやはり亜鉛欠乏による多彩な症状を訴えており,亜鉛内服療法が良く奏効することを報告している。

亜鉛欠乏症は,とくに高齢者に予想外に多いのである。この書が家庭医に広く読まれることを希望する。そして亜鉛は栄養素としてビタミンと同列にみなし,高齢者では欠乏しやすい栄養素として蛋白質並みに考えて栄養指導して頂きたい。

亜鉛の効用が広く常識化すれば,必ずや元気な高齢者が増え,厚生労働省は医療費の低減に驚くことであろう。


平成21 年9 月

日本大学名誉教授
日本微量元素学会初代理事長
国際微量元素医学会議名誉会員
ドイツ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会名誉会員

冨田 寛


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第1章 必須微量栄養素としての亜鉛

1 必須微量元素とは

2 生体における金属元素の相互作用

3 微量元素とビタミン

4 微量元素の欠乏症と過剰症

第2章 亜鉛の体内分布と1日必要量

1 組織中および血清中亜鉛濃度

2 亜鉛の吸収と排泄

3 生体内亜鉛の恒常性維持

4 亜鉛トランスポーター

5 亜鉛の1 日必要量

6 亜鉛の有用量と毒性量

7 食品中の亜鉛含有量

第3章 亜鉛の生理作用

1 酵素の活性化

2 遺伝情報の伝達

3 創傷治癒の促進

4 免疫能の保持

5 抗酸化作用

6 メタロチオネイン

7 ストレス反応

8 生殖機能の保持

9 味覚・嗅覚の保持

第4章 亜鉛欠乏症

1 亜鉛欠乏症の発見(プラサド症候群)

2 腸性肢端皮膚炎

3 小児の亜鉛欠乏症

4 経腸栄養,高カロリ-輸液による亜鉛欠乏症

5 高齢者の亜鉛欠乏症

6 亜鉛欠乏症の診断基準

7 亜鉛欠乏症の治療

第5章 疾患と亜鉛

1 消化器疾患と亜鉛

2 循環器疾患と亜鉛

3 腎疾患と亜鉛

4 血液疾患と亜鉛

5 内分泌疾患と亜鉛

6 下腿潰瘍と亜鉛

7 皮膚疾患と亜鉛

8 膠原病およびリウマチ性疾患と亜鉛

9 男性不妊と亜鉛

10 整形外科疾患と亜鉛

11 眼科疾患と亜鉛

12 味覚障害と亜鉛

13 神経疾患と亜鉛

14 精神疾患と亜鉛

第6章 老化と亜鉛

1 感染症と亜鉛

2 悪性腫瘍と亜鉛

3 骨粗鬆症と亜鉛

4 褥瘡と亜鉛

5 アルツハイマ-病と亜鉛

付録 亜鉛欠乏症の症例報告

特記事項

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