補助人工心臓治療チーム実践ガイド 改訂第2版

  • ページ数 : 360頁
  • 書籍発行日 : 2018年11月
  • 電子版発売日 : 2019年8月28日
¥8,800(税込)
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商品情報

内容

最新の人工心臓をいち早く紹介。東大などの治療チームが実践法を解説。

今回の改訂では,補助人工心臓治療の歴史,保険償還などの背景,国内外の最新の補助人工心臓治療情報を追加するとともに,今の日本の補助人工心臓治療をリードする認定施設チームの実際について解説した。実際に使用しているチェックシートやスライドなどを多数引用し,実践的なチーム医療が学べるようになっている。
本書は現在治療にかかわるスタッフや,これから資格取得を目指す医療従事者に向けた,補助人工心臓治療チームのためのガイドブックである。

序文

わが国の人工心臓の開発は1958年の東京大学木本外科渥美和彦らの研究に始まる。東大型補助人工心臓(VAD)は1980年にはヤギにおいて288日の当時の世界最長生存記録を達成し,同年5月,筆者らは三井記念病院においてヒトにおける本邦最初の臨床応用を実施した。

当時の日本では,心臓移植の代替治療としての人工心臓の開発という研究者の壮大な夢とは裏腹に,臨床では心臓手術後の体外循環離脱困難症例に対して自己心機能の回復を目指して緊急避難的に使用するのが最大の目的であった。一方,欧米では1982年に完全置換型人工心臓(TAH)Jarvik 7を用いたdestination therapy(DT)が行われ,歯科医師Barney Clark氏は112日生存し,米国ではその後も心臓移植へのブリッジ(BTT)と並行して本来の開発目的であった心臓移植代替治療としての人工心臓開発が営々として続けられた。

1980年初頭に免疫抑制剤シクロスポリンAが臨床導入され,心臓移植が飛躍的に増加するとともに,VADによるBTTの有効性が広く認識されだした。1990年代に入り第一世代の拍動流植込型LVAD(Novacor®︎,HeartMate®︎VE)がBTTデバイスとして広く世界に普及し,長期成績の向上とともに心臓移植代替治療としての植込型LVADの価値が再評価された。2001年に報告された REMATCH studyの結果,「心臓移植非適応症例においても植込型LVADは内科治療より有効である」ことが証明され,米国で2002年にHeartMate®︎VEを用いたDTが保険償還された。2000年以降,第二・第三世代の連続流植込型LVADが臨床導入され治療成績が飛躍的に向上していくなかで,2010年にHeartMateⅡ®︎がDTデバイスとして保険償還された。また,HeartMateⅡ®︎でポンプ血栓が問題となったが,2015年10月にポンプ血栓頻度が劇的に減少したHeartMate 3TMがCEマークを取得し,2017年8月に短期補助LVAD(BTT・BTR適応)としてFDA承認を取得した。日本にも近い将来導入される予定である。

植込型LVADを装着してQOLの高い社会生活を実現するためには,単に自宅に戻るだけでなく,通常の社会生活を送ることが重要である。心臓外科医の役割は主として植え込み手術を問題なく実施することに限定されるようになり,以後の退院トレーニングから在宅治療,社会復帰には循環器内科医・看護師・臨床工学技士・理学療法士・その他広範な職種の医療関係者がチームとしてかかわるようになった。良いチームを構成することが治療成績を左右することが明らかになり,人工心臓管理技術認定士(VADコーディネーター)の役割が飛躍的に大きくなった。

循環器内科医のVADに対する考え方も,10年前の「心臓移植のチャンスがほとんどないからVADを植え込んでも仕方がない」という意見は少数派となり,「移植まで長期待機が必要だから植込型VAD治療によりQOLの高い生活を患者さんに提供すべきだ」という意見が多数派を占めるようになった。さらに欧米では2010年以降,高齢者を中心とした移植非適応症例においても,内科治療よりも社会復帰可能な植込型LVADによるDTを選択する患者が急速に増加し,最近のINTERMACS Registryでは50% 前後がDT症例である。


2005年に出版した「補助循環マスターポイント100」は日本の心臓移植治療の進行とともに好評を博し,2008年には改訂第2版「補助循環マスターポイント102」を出版した。2007年に関連学会が厚生労働省に「ニーズの高い医療機器」として迅速な本邦導入を要請した植込型LVADも,2011年のEVAHEART®︎,DuraHeart®︎をスタートに,2014年までにHeartMate Ⅱ®︎,Jarvik 2000®︎の4機種が保険償還された。その後,体外設置型VAD AB5000,小児用VADBerlin Heart EXCOR®︎,経皮的LVAD IMPELLA®︎が承認され,HeartWare HVAD®︎も製造販売承認待ちである。中長期ECMOシステムCardioHelpや国立循環器病研究センターとニプロ(株)で共同開発した体外設置型連続流VADシステム「BR16010」も臨床治験に入っている。2010年にHeartMate Ⅱ®︎のDT適応が米国でFDA承認され保険償還されたが,日本においても2016年9月に臨床治験が始まった。まさに,機械的補助循環の領域は日進月歩の状況である。

2014年に「実践!補助人工心臓治療チームマスターガイド」を出版したが,世界の機械的補助循環システム・治療戦略は想像を絶する速度で進歩し,4年を経て既に多くの記載が改訂を必要とするようになった。補助人工心臓システムも13年前の「補助循環マスターポイント100」出版時には想像もつかなかったようなハイスピードで進歩している。そのなかで本邦開発のサンメディカル社のEVAHEART®︎とテルモ社のDuraHeart®︎は,世界で最も普及しているHeartMate Ⅱ®︎やHVAD®︎に勝るとも劣らない治療成績を達成している。当初から世界市場を目指したDuraHeart®︎は残念ながら2017年3月で新規症例に対する供給を中止した。日本が誇るべき植込型LVADの1つが市場から撤退したことは臨床医としても,また,日本の植込型LVAD開発を推進してきた研究者としての立場からも極めて残念なことである。一方,EVAHEART®︎は数々の改良を経て小型のEVAHEART®︎2が開発され,2017年末に製造販売承認を受け,米国臨床治験もスタートしようとしている。


本書が重症心不全に苦しまれている多くの患者さん達の救命とQOLの高い社会生活の達成に少しでもお役に立つことができれば,著者全員の無上の喜びである。心より患者さん達の快癒を願って序文とさせて頂きたい。


2018年10月

東京都健康長寿医療センター センター長

許 俊鋭

目次

Ⅰ 補助人工心臓の基本知識を理解する!

1. 心不全の理解と基本治療

心臓の生理学と心不全/心不全の分類/心不全に対する薬物療法の基礎/心不全に対する非薬物療法の基礎

2. 補助循環の位置づけ

①重症心不全治療の中での補助循環の位置づけ

②補助循環の種類と臨床使用の歴史

3. 補助人工心臓の開発と原理

完全置換型人工心臓と補助人工心臓/血液ポンプの基礎理論/拍動流ポンプ/連続流ポンプ:遠心ポンプと軸流ポンプ/その他の補助人工心臓ポンプ

4. 補助人工心臓治療の社会基盤・施設認定基準を知る

①補助人工心臓治療関連学会協議会の設立経緯と役割

②植込型補助人工心臓にかかわる開発・審査のガイドライン

③体外設置型補助人工心臓(成人用)の施設認定・保険償還

④植込型補助人工心臓の施設認定・実施医認定・保険償還

⑤小児補助人工心臓の施設認定・実施医認定・保険償還

⑥人工心臓管理技術認定士(VADコーディネータ)資格と役割

⑦補助人工心臓治療チーム

⑧INTERMACS,J-MACSレジストリー設立経緯と意義,役割

⑨在宅安全管理ガイドライン

⑩補助人工心臓治療と医療経済

5. 補助人工心臓の種類

人工心臓の定義・分類/完全置換型人工心臓(TAH)/体外設置型補助人工心臓/植込型補助人工心臓/経皮的補助人工心臓

Ⅱ 補助人工心臓の適応・装着手技・周術期管理を理解する!

1. 補助人工心臓の適応

①適応疾患

②補助人工心臓適応に関する重症度分類

③急性心不全に対する適応条件と適応除外条件

④慢性心不全に対する適応条件と適応除外条件

⑤右心不全

2. 人工心臓手術の周術期(術前・術後)管理

①右心不全管理

②呼吸不全管理

③腎不全管理

④肝不全管理

⑤糖尿病

⑥感染対策

⑦抗血栓・出血傾向対策

⑧脳血管障害(脳梗塞・頭蓋内出血)

⑨精神的サポート

3. 植込型補助人工心臓装着手術(総論)

術前準備/麻酔/術中モニター/体外循環/装着手術の基本手技/VAD装着時の同時手術/体外循環離脱/閉胸

4. 心臓移植手術時の補助人工心臓脱着手技

手術準備/麻酔/術中モニター/体外循環/手術アプローチ/心臓移植/体外循環離脱/補助人工心臓デバイス摘出/ドライブライン出口部の処置/閉胸

5. 補助人工心臓装着・交換手術における体外循環のポイント

6. 体外設置型補助人工心臓の患者トレーニング・長期院内管理の要点

7. 創部管理・ドライブライン管理・メンタルヘルスケア

①創部管理における看護師の役割:機器管理と安全の確保

②ドライブラインの管理

③QOLの向上とメンタルヘルスケア

④小児における補助人工心臓装着患者の看護

8. リハビリテーション

VAD装着患者のリハビリテーション総論/術後急性期・亜急性期のリハビリテーション~周術期離床から日常生活動作自立に向けて~/植込型VAD装着患者の退院に向けたリハビリテーションプログラム/植込型VAD患者の退院後のフォローアップ/小児VAD患者のリハビリテーション/VAD離脱に向けたリハビリテーション

9. 植込型補助人工心臓患者の退院に向けての準備と実際

①在宅療養環境の確認

②外出プログラム

③外泊プログラム

④機器取扱いトレーニング

⑤創部管理トレーニング

⑥自宅復帰プログラムの特徴と療養支援の実際

  事例①東京大学医学部附属病院

  事例②大阪大学医学部附属病院

  事例③国立循環器病研究センター

10. 遠隔期(退院後遠隔期)合併症と対策

①右心不全管理

②不整脈対策

③大動脈弁逆流

④肺高血圧管理

⑤腎不全管理

⑥肝機能障害管理

⑦糖尿病

⑧感染対策

⑨ポンプ血栓

⑩消化管出血

⑪脳血管障害(脳梗塞・頭蓋内出血)

11.植込型LVAD症例の在宅治療のQOL向上に向けて

①通勤・就職

②通学・就学

③航空機を用いた旅行

④スポーツはどこまで可能か

⑤運転(自動車,自転車,オートバイ)

⑥食事,禁酒,禁煙に関する事項

⑦入浴・シャワー浴

⑧夫婦生活

12. Bridge to recovery 補助人工心臓離脱

①Bridge to recovery 離脱基準

②LVAD weaningの実際と離脱に向けた駆動補助"off test"

③体外設置型補助人工心臓離脱手術

④定常流植込型補助人工心臓離脱手術

⑤離脱後の心不全治療

13. 補助人工心臓治療成績

①急性心不全における補助人工心臓治療成績

②心臓移植ブリッジにおける補助人工心臓治療成績

③Destination Therapyにおける欧米の植込型LVAD治療成績

14. 小児における補助人工心臓治療

小児に用いられる補助人工心臓デバイス/適応と手術タイミング/植え込み手術のポイント/周術期管理/合併症対策/治療成績

Ⅲ 補助人工心臓の特徴と各セットアップ・管理のポイント!

1. ニプロ補助人工心臓(東洋紡,国立循環器病研究センター型)

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント(チェックリスト)

2. AB5000

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント

3. Berlin Heart EXCOR®

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント(チェックリスト)

4. EVAHEART®・EVAHEART®2

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④機器管理のポイント(チェックリスト)

5. HeartMateⅡ®

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント(チェックリスト)

6. HeartMate3TM

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤植え込み後患者のチェック(外来)

7. Jarvik 2000®

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント(チェックリスト)

8. Heartware HVAD®

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント

9. IMPELLA®

①システムの特徴

②植え込み手術時のデバイスセットアップ

③植え込み手術のポイント

④ポンプ駆動のポイント

⑤機器管理のポイント

Ⅳ 人工心臓治療の今後の課題について

1. 完全埋込型LVAD(fully implantable LVAD)の開発

2. Destination Therapy の臨床導入

~わが国における植込型補助人工心臓DT適応適正化の考え方~

3. 植込型LVAD:終末期医療・緩和医療

4. 補助人工心臓と再生治療

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書籍情報

  • ISBN:9784758319515
  • ページ数:360頁
  • 書籍発行日:2018年11月
  • 電子版発売日:2019年8月28日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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