胸部画像診断のここが鑑別ポイント 改訂版

  • ページ数 : 277頁
  • 書籍発行日 : 2011年2月
  • 電子版発売日 : 2013年8月22日
¥5,940(税込)
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商品情報

内容

画像診断の基本を押さえたい研修医、読影に強くなりたい医師にピッタリ!の 大人気シリーズ「できる!画像診断入門シリーズ」の胸部画像診断が電子書籍となりました。

腫瘍やびまん性肺疾患など、115の重要疾患をピックアップ!900点もの疾患画像を用いて、理詰めで考えて診断できる力を伝授します。

序文

改訂の序

「できる!画像診断入門シリーズ」の第3弾として,胸部画像診断を発刊してからすでに5年近くが経ち,改訂版を発刊することとなった.初版発刊時に比べて,疾患概念や分類が変更された領域も少なくない.画像診断技術の進歩は,やや停滞期(成熟期)であるが,疾患や病態に関する進歩は,ますます加速するばかりで,これについていくのは容易ではないことを実感する毎日である.

そのなかで,胸部疾患の診療における画像診断の役割は,ますますその重要性を増している.肺癌に診断においても,間質性肺炎などのびまん性肺疾患の診断においても,画像診断なしには,十分な診療は不可能な状況になっている.しかし,画像診断は,疾患の診断や理解のための一方法に過ぎない.胸部疾患の画像所見は,病理像をきわめてよく反映していることがわかっているが,その所見は,非特異的である.したがって,画像所見の解釈にあたっては,疾患に対する深い理解,その他の臨床症状や検査所見などが必要となる.

画像診断は,理論的には,いくつかのステップに分けられる.まず第一段階は,正しく所見をとるステップである.このためには,正常像の理解,すなわち病変の正確な場所や部位を同定するために解剖学的知識が必須である.第二には,病的所見の解釈である.すなわち,異常所見の背景にどのような病理像を推定しうるか,あるいは病態生理学的な過程を想定し,どのような病的プロセスを考えたらよいかを考えるステップである.このステップを正確にクリアするためには,各画像診断modalityの基礎と画像の成り立ちをある程度理解し,また病理形態学的知識を組み合わせて判断しなければならない.このステップこそ放射線診断医のprofessionalismが発揮されるところであろう.最後のステップは,鑑別診断と最終的な診断である.これには,診断医がどれだけ疾患を知っているか,あるいはその臨床像を熟知しているかによる.すなわち,その診断医のもつ画像知識,臨床的知識を総動員して診断をすることになるが,診断のセンスも問われることになる.

これらの3つのステップは,明確に分かれるものではなく,相互に行きつ戻りつしながら行われることも少なくないが,できれば,ある程度意識して分けて考えた方がよいと思っている.これは,もし,診断を誤った場合に,どのステップで判断を誤ったのかが明確にできれば,その後,ふたたび同様の誤りを犯さないように注意することができるからである.画像診断は決して手品ではない.臨床の場であるから,at a glanceで診断が浮かぶこともある.しかし,at a glanceで診断がついたとしても,鑑別診断は十分に考えなければならない.なるべく,理詰めで考えて診断に至る道を探るのが,画像診断の王道であり,胸部画像診断は,その他の領域に比べて理詰めで議論できる部分が多い.この点は,私が胸部画像診断が好きな理由の1つでもある.若い診断医諸氏にはこの診断の醍醐味を是非味わってほしいものである.


2011年1月

酒井文和



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初版の序

今般,「できる!画像診断入門シリーズ」の第3巻として胸部の画像診断を発刊することになった.的確な画像診断のためには,モダリティに対する正しい知識と疾患自体に対する深い知識はいわば車の両輪であり,どちらもおろそかにすることはできない.肺を中心にする呼吸器の画像診断は,高分解能CT(HRCT)があまりに優れた診断手法であるために,腹部などのほかの領域に比べて新しいモダリティの開発がやや遅れている領域かもしれない.また疾患に対する正しい知識が的確な診断に必須の領域でもあり,ややもすると画像診断医にとってはとっつきにくい領域の1つかもしれない.

本書は胸部画像診断の第一線で診断に従事しておられる先生方が,胸部画像診断のコツともいうべき最重要部分を,鑑別診断を中心にして執筆したものである.研修医あるいは胸部画像診断の勉強を始められた方をその主な対象として執筆していただいたが,その内容は実戦的であり,ある程度のレベルにある診断医の先生方の知識の再整理にも役に立つように構成したつもりである.

放射線診断は,大きく3つのプロセスに分解して考えることができる.第1には所見を拾い上げて正しく認識し,記載する作業である.これには典型的な所見を教科書で読んだり,日常の臨床の場で繰り返し学び取らなければならない.第2には,所見を正しく解釈する作業である.肺でいえば拾い上げた所見を解釈して,病変の場と性質を背景とする病理像を想定しつつ考える作業である.このためには解剖学の知識やサブマクロの病理形態像に対する豊富な知識,病態生理の知識が要求される.第3の作業は以上の所見や解釈を臨床情報と有機的に結びつけて総合的な判断である診断,鑑別診断に至る作業である.この過程では,放射線医学の知識のみならずその診断医のもつ総合的な臨床的知識と診断のセンス,発想の豊かさが問われるのであろう.これらの作業はできる限り理論的一貫性をもたなければならない.もちろんこの3つの作業プロセスは不可分であり,必ずしもその順序通りにはならないことは当然のことである.

編者が研修医のころは胸部単純撮影と断層撮影が胸部画像診断の主な手法であり,ややもすると胸部画像の読影は経験とカンにもとづく名人芸的な面もあった.しかし,高分解能CTの開発と広い臨床応用により読影がより論理的になり,その思考過程を言葉として若い先生に伝えることができる時代に入ったというのが実感である.胸部高分解能CTの開発と臨床応用の確立については,福井大学の伊藤春海先生をはじめとする日本の胸部放射線診断医の果たした役割はきわめて大きいものがあることは,わが国の胸部放射線診断医の誇りとすべきことである.

読者の先生は,経験のみにもとづいた,手品師のような診断を目指すのではなく,自己の診断に至るプロセスができるだけ論理的に記載できるように努めていただきたい.もちろん経験とカンにもとづく読影が必要な場面も日常臨床で多いのも事実であるが,診断のプロセスをできるだけ理詰めで考え,もし誤った場合はどこが間違っていたのかをよく考えることが必要である.この繰り返しが自己の診断能力を高める最短の道であることを肝に銘じてほしい.


2006年3月

酒井文和

目次

序 章

1. 読影の基本ポイント

胸部単純X 線

CT

MRI

核医学検査(肺血流・換気シンチグラフィ,腫瘍シンチグラフィ,骨シンチグラフィ,FDG-PET)

2. どんな臨床情報が大事か?

第1章 肺循環障害

001 うっ血性(静水圧性)肺水腫[肺水腫]

002 急性呼吸促進(促迫)症候群[肺水腫]

003 肺血栓塞栓症

004 肺高血圧症

第2章 肺腫瘍

005 腺癌[末梢性肺腫瘍]

006 びまん型粘液産生腺癌[末梢性肺腫瘍]

007 扁平上皮癌[末梢性肺腫瘍]

008 小細胞癌,大細胞癌[末梢性肺腫瘍]

009 低悪性度の肺腫瘍[末梢性肺腫瘍]

010 肺門型肺癌(1) 早期例

011 肺門型肺癌(2) 進行例

012 肺癌のstaging (1) T

013 肺癌のstaging (2) N, M

014 血行転移性肺腫瘍[転移性肺腫瘍]

015 癌性リンパ管症[転移性肺腫瘍]

016 肺肉腫[その他の悪性肺腫瘍]

017 肺悪性リンパ腫[その他の悪性肺腫瘍]

018 過誤腫[肺の良性結節性病変]

019 結核腫[肺の良性結節性病変]

第3章 感染症と無気肺

020 肺結核症(二次または成人結核)[抗酸菌感染症]

021 気管支結核[抗酸菌感染症]

022 非結核性抗酸菌症[抗酸菌感染症]

023 大葉性肺炎[細菌感染症]

024 気管支肺炎[細菌感染症]

025 敗血症性塞栓症[細菌感染症]

026 肺化膿症[細菌感染症]

027 肺クリプトコックス症[真菌感染症]

028 肺アスペルギルス症[真菌感染症]

029 ニューモシスチス肺炎[真菌感染症]

030 マイコプラズマ肺炎[ウイルス,クラミジア,マイコプラズマ]

031 クラミジア感染症[ウイルス,クラミジア,マイコプラズマ]

032 ウイルス肺炎[ウイルス,クラミジア,マイコプラズマ]

033 水痘肺炎[ウイルス,クラミジア,マイコプラズマ]

034 サイトメガロウイルス肺炎[ウイルス,クラミジア,マイコプラズマ]

035 ウエステルマン肺吸虫症[寄生虫疾患]

036 ヒト肺犬糸状虫症[寄生虫疾患]

037 閉塞性無気肺[無気肺]

038 非閉塞性無気肺[無気肺]

039 円形無気肺[無気肺]

第4章 非感染びまん性疾患

040 通常型間質性肺炎[特発性間質性肺炎]

041 非特異性間質性肺炎(含むリンパ球性間質性肺炎)[特発性間質性肺炎]

042 剥離性間質性肺炎および呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患[特発性間質性肺炎]

043 急性間質性肺炎[特発性間質性肺炎]

044 特発性器質化肺炎[特発性間質性肺炎]

045 膠原病の肺病変(1) UIP とNSIP[特発性以外の間質性肺炎・肺線維症]

046 膠原病の肺病変(2) OP,DAD,LIP[特発性以外の間質性肺炎・肺線維症]

047 慢性過敏性肺臓炎[特発性以外の間質性肺炎・肺線維症]

048 網谷病(特発性上葉限局型肺線維症)[特発性以外の間質性肺炎・肺線維症]

049 Hermansky-Pudlak 症候群[特発性以外の間質性肺炎・肺線維症]

050 サルコイドーシス[肺肉芽腫疾患,血管炎]

051 肺Langerhans 細胞組織球症[肺肉芽腫疾患,血管炎]

052 Wegener 肉芽腫症[肺肉芽腫疾患,血管炎]

053 リンパ脈管筋腫症[肺嚢胞性疾患]

054 SjÖgren 症候群[肺嚢胞性疾患]

055 肺気腫[肺嚢胞性疾患]

056 肺胞微石症[代謝性肺気管支疾患]

057 異所性石灰化[代謝性肺気管支疾患]

058 肺気管支アミロイドーシス[代謝性肺気管支疾患]

059 MPO-ANCA 関連肺疾患(MPA を中心に)[肺血管炎]

060 Churg-Strauss 症候群[肺血管炎]

061 珪肺症[塵肺症,職業性疾患]

062 石綿肺症[塵肺症,職業性疾患]

063 過敏性肺臓炎(急性,亜急性)[アレルギー性肺疾患]

064 急性好酸球性肺炎[アレルギー性肺疾患]

065 慢性好酸球性肺炎[アレルギー性肺疾患]

066 LÖffler 症候群[アレルギー性肺疾患]

067 薬剤性肺障害

第5章 気道疾患

068 気管支拡張症[中枢気道疾患]

069 再発性多発性軟骨炎[中枢気道疾患]

070 閉塞性細気管支炎[細気管支炎]

071 びまん性汎細気管支炎[細気管支炎]

072 急性気管支炎[細気管支炎]

073 気管支喘息[細気管支炎]

第6章 先天性疾患

074 肺分画症

075 気管支閉鎖症

076 先天性嚢胞状腺腫様形成異常

077 肺動静脈奇形・肺動静脈瘻

078 片側肺動脈近位途絶

079 その他の奇形

第7章 縦隔・心大血管疾患

080 胸腺腫

081 奇形腫

082 悪性胚細胞腫瘍

083 縦隔悪性リンパ腫

084 胸腺嚢胞

085 心膜嚢胞

086 胸郭内甲状腺腫

087 後縦隔神経原性腫瘍

088 胸郭入口部神経原性腫瘍

089 気管支原性嚢胞

090 特発性縦隔気腫

091 特発性線維化性縦隔炎

092 結核性リンパ節炎

093 胸部大動脈瘤

094 大動脈解離(1)

095 大動脈解離(2)(血栓閉鎖型)

096 心膜炎

097 収縮性心膜炎

098 高安動脈炎

099 横隔膜ヘルニア

100 気管腫瘍

第8章 胸膜胸壁疾患

101 びまん性胸膜中皮腫

102 胸膜播種

103 胸膜線維腫

104 多発性骨髄腫

105 胸壁アスキン腫瘍

106 膿胸関連悪性リンパ腫

107 慢性結核性膿胸,気管支胸膜瘻

108 細菌性膿胸

109 石綿関連良性胸膜病変

110 自然気胸

第9章 胸部外傷

111 肺挫傷,肺出血,肺血腫

112 食道損傷,気管気管支損傷

113 縦隔血腫と大動脈損傷

114 横隔膜損傷

115 外傷性気胸

付 録

1. 重要語句解説集

2. 略語集

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書籍情報

  • ISBN:9784758107747
  • ページ数:277頁
  • 書籍発行日:2011年2月
  • 電子版発売日:2013年8月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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