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実験医学増刊 Vol.36 No.15 動き始めた がんゲノム医療

中釜 斉 (監修) / 油谷 浩幸, 石川 俊平, 竹内 賢吾, 間野 博行 (編集)

株式会社 羊土社

243 頁  (2018年9月)

Android 対応製品 iOS/iPhoneOS対応製品

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リリース日: 2018年11月16日

がん関連遺伝子を対象とするパネル検査が始まったいま,社会からの期待が高い「がんゲノム医療」の現状を整理して基礎研究上の課題を示し,さらなる進展に向けて研究者に何が求められているかを解説します.

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がん関連遺伝子を対象とするパネル検査が始まったいま,社会からの期待が高い「がんゲノム医療」の現状を整理して基礎研究上の課題を示し,さらなる進展に向けて研究者に何が求められているかを解説します.


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序 〜がんゲノム医療の次なる一手〜

近年のゲノム解析技術の革新的な進歩により,がん医療においてゲノム情報に基づく個々人に最適な医療提供が可能となっています.EGFR変異を有する非小細胞肺がんに対するEGFR阻害剤やALK融合遺伝子陽性肺腺がんに対するALK阻害剤の劇的な臨床的有用性は,抗がん治療薬の臨床試験に対する考え方や進め方に関して大きな意識変革をもたらしました.マルチプレックス遺伝子パネル(多遺伝子パネル)を用いたがんのゲノム検査の国民皆保険制度のもとでの医療提供,いわゆる「がんゲノム医療」が実現に向けて動きはじめています.

がんゲノム解析の医療実装が大きく展開しようとしているなか,現状のゲノム医療提供体制が抱えるいくつかの課題が浮き彫りになっています.そのなかの大きな課題は,ゲノム検査で同定された変異に対応する分子標的治療薬の開発研究の爆発的な加速化です.遺伝子変異に応じた適切な治療薬の提供が可能な症例は,現状では全体の10〜20%程度に留まっており,ゲノム検査の結果に見合う医療提供のための創薬が喫緊の課題です.加えて,がんの罹患率および死亡率の低減に資する早期診断や治療効果予測のためのバイオマーカーの開発も重要な課題です.

全国規模でがんゲノム医療を推進する体制として,2018年に入ってからがんゲノム医療中核拠点病院および連携病院が選定され,診療情報およびゲノム情報の患者レポジトリーの体制として「がんゲノム情報管理センター(C-CAT)」が設置されました.ゲノム医療において,日本が世界をリードする新たな医療モデルの提示をめざしています.C-CATに構築される患者レポジトリーデータとがんゲノム知識データベース(CKDB)は,がんゲノム医療の全国実装等の臨床応用に留まらず,複雑で多様な病態を呈するがんという病態の本態解明を含め,国内のみならず国際的なさまざまな開発研究および基礎研究の飛躍的推進のための貴重な基盤・ツールとなることは疑いの余地がありません.C-CATに蓄積されたデータはわが国の保険診療の共通の資産であり,創薬や最適医療(個別化医療)等の種々の医療シーズ開発のための研究基盤として,広くアカデミアや企業等の研究者が二次利活用する体制を早急に確立することは,がん研究者および医療者の威信をかけて一丸となって取り組むべき重要なテーマと考えています.

同時に,機微な個人情報を有するデータベースの利活用の促進にあたっては,倫理的・法的・社会的な視点からの人文科学的な議論をこれまで以上に深化させるとともに,ゲノム医療にかかわるあらゆる局面での人材育成への取り組みや,ゲノムおよびゲノム医療に対する国民のリテラシーを高める必要があります.ゲノム教育という観点からも新たな課題を提示してくれるはずです.また,ゲノム医療の実装とその体制整備は開発的な側面での改革に留まらず,臨床現場においても大きな変革が期待されます.従来の臓器縦割り的な診療体制に加え,ゲノム異常を切り口とした臓器横断的な診療体制の構築です.現在一部の大学病院やがん専門機関においては,Oncology(腫瘍学)部門・診療科の設置がすでに進められていますが,まだまだ一般的とはいえないのが現状です.

本書の企画が,真のPrecision Medicineの実現に向けた「がんゲノム医療の次の一手」として,日本におけるがんの基礎研究のさらなる深化に加え,臨床と基礎研究者の協働によるトランスレーショナル研究(TR)やリバースTRを一層加速し,世界をリードするがん研究者の創出の一助となることを大いに期待します.


2018年8月

中釜 斉


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概論

がんゲノム医療の可能性を切り拓く基礎研究の深化への期待

第1章 ゲノム医療の体制:現状と課題

1.がんクリニカルシークエンスのプラットフォーム開発

2.形態病理学と分子病理学の統合

3.遺伝子パネル検査―意義付けの標準化やデータ利活用に向けて

4.がんゲノム医療用知識データベース

5.知識統合に向けた意義不明変異の解釈

6.変異原・変異シグネチャーの理解からゲノム予防へ

7.ゲノム医療の経済評価における研究動向と課題

第2章 actionableパスウェイ

1.チロシンキナーゼの基礎研究がもたらした分子標的治療の現状と課題

2.ゲノム異常がもたらすTGF-βシグナルの二面性と治療標的としての有用性

3.発がん性チロシンホスファターゼSHP2

4.RAS/MAPK系に対する治療開発と課題

5.がんにおけるPI3K/Akt/mTOR経路の異常とそれを標的とした治療法の開発

6.PARP阻害剤:がん治療における新しい合成致死アプローチ

7.がんにおけるエピジェネティクス異常

8.ユビキチン・プロテアソーム系(UPS)とがん治療戦略

9.がん代謝

10.がんゲノムからみた免疫チェックポイント異常

11.CAR-T細胞療法開発の現況と将来展望

12.上皮間葉移行とがん幹細胞のシグナルパスウェイ

第3章 倫理・遺伝カウンセリング

1.遺伝性腫瘍の遺伝カウンセリング

2.人を対象とする医学研究のインフォームド・コンセント―医学・生命科学の基礎研究で必要な手続きを中心に

3.人材育成

4.がんゲノム医療におけるプライバシー保護

第4章 技術革新・創薬開発

1.FFPE検体を用いた遺伝子パネル検査の限界と今後の方向性

2.ゲノム医療とクラウドの利用

3.ゲノム医療におけるエピゲノム解析

4.ゲノム医療における一細胞解析

5.腫瘍環境の網羅的免疫ゲノム解析

6.がんゲノム解析での長鎖シークエンサー活用法

7.臨床医から見たcfDNAの今とこれから

8.ゲノム医療のバイオインフォマティクス・パイプライン

9.ゲノム医療におけるビッグデータサイエンス

10.ゲノム医療における深層学習

11.ゲノム医療におけるin vivoイメージング,分子イメージング

12.リアルワールドとin vitroをつなぐモデル系① ゲノム医療の時代の患者由来がんモデル

13.リアルワールドとin vitroをつなぐモデル系② 患者由来がんオルガノイドによる表現型駆動のがんゲノム研究

14.リアルワールドとin vitroをつなぐモデル系③ 臨床応用を目的としたヒトがんを再現するマウスモデル

15.治療薬開発のためのがん遺伝子スクリーニングプログラム

16.がんゲノムにおける国際連携体制の構築

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