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起立性調節障害の診かた

森下 克也 (著)

株式会社 中外医学社

156 頁  (2014年9月)

Android 対応製品 iOS/iPhoneOS対応製品

eBook Price(ダウンロード販売): ¥3,024 (税込) 

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リリース日: 2014年12月05日

「朝、起きられない」はこうして治せ

診療ガイドラインも作成され、疾患概念として確立してきた起立性調節障害。その不可解な病の全体像から診察法、具体的な治療法に至るまでのすべてを、本疾患のエキスパートたる心療内科医がわかりやすく解説。
起立性調節障害の治療を成功させるノウハウがつまった一冊です!

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はじめに

「朝,起きられない」を「病気」とみるか「怠け」とみるか.結論からいうと,どちらも間違っている.まず,「病気」である.「朝,起きられない」を「病気」とみるとき,一般的な医師の認識は,「原因があって結果がある」というギリシャのアリストテレス以来の因果論に基づいている.つまり,起立性調節障害という明確な身体的メカニズムがあり,その結果,「朝,起きられない」という現象が起きていると考える.

確かに,起立性調節障害には「朝,起きられない」以外にも,めまい,立ちくらみ,頭痛,食欲不振,下痢,便秘,腹痛,冷え,生理痛,倦怠感などの多彩な症状があり,その身体的なメカニズムを追求することには意味がある.医学は,その得意とする還元主義的思考でもって,そのことに延々と時間を費やしてきた.溯れば,1930年代のドイツあたりに起立性調節障害の研究の起源を見出すことができるだろう.最近では,日本小児心身医学会が診療ガイドラインを作成するまでに至り,起立性調節障害は疾患単位としての存在を益々強固なものにしつつある.

しかし,起立性調節障害と「朝,起きられない」の2つを,「原因があって結果がある」という単純な因果論で結びつけてしまうと大きな間違いを犯す.他の医療施設を経由して私のクリニックを訪れる患者さんを診させていただくと,「起立試験の結果,診断基準に当てはまるから起立性調節障害と診断した.よって,昇圧剤を処方した」という単純なロジックで治療をして失敗している例が実に多い.

そういう因果論が当てはまるのは,軽症例のみであると考えて差しつかえない.不登校を伴う中等症以上の起立性調節障害においては,一方通行の因果論は当てはまらない.なぜなら,そこには,身体的要素のみならず,心理・社会的な要素が絡んでくるからである.

身体・心理・社会的な疾患構造において,原因は原因にとどまらず結果にもなり得る.多くの医師が起立性調節障害の原因と考える「自律神経の機能不全」は,もちろん原因のこともあるが,心理・社会的なストレスがもたらした結果であることも多々ある.これが,昇圧剤一辺倒の治療が行き詰まる理由である.起立性調節障害を理解するには,この疾患構造を知らなければならない.

次に,「怠け」である.「怠け」とは,明白な意図を持ったサボタージュである.しかし,起立性調節障害の子供たちにそのような意図はない.よって,「怠け」と決めつけて一蹴してはいけない.起立性調節障害の症状は,午前中が悪く,午後から夕方にかけて改善し,夜半にはうそのように元気になる.それが,大人たちには「怠け」にみえてしまう.医師にも理解できない.ここに誤解が生じる.

この誤解を読み解く鍵は2つある.1つは時代背景,もう1つは子供の心理特有の未熟性の問題である.

時代背景とは,少し乱暴にいってしまえば,30年前,起立性調節障害は存在しなかったということである.

その当時,起立性調節障害を発症しうる体質的な虚弱さを持った子供は今と変わらず多くいたと思われるが,学校には行くことができていた.なぜなら,「行かない」という選択肢を親が持たなかったからである.

当時の子供たちの親の世代は,儒教にもとづく日本の伝統的な倫理観や教育勅語の影響をまだ色濃く受けており,我が子にもそれを伝えていた.学校は行くものであり,自分の都合で休むなどはあり得ないことだった.だから,少々体調が悪くても,子供はつらい身体を引きずって登校した.それで何ら問題は起きなかった.

だが,時代が下って,そういう考えは「優しくない」とされ,悪しき伝統のように退けられるようになった.「子供には休む権利がある」と声高に叫ばれ,時を同じくして起立性調節障害が現れるようになった.

子供に優しい教育を悪いとはいわない.だが,安易に「優しく」することには大きな問題がある.「優しさ」は,必ずしも人を成長させない.子供の心が未熟なままでいることを許してしまう.

子供の「未熟さ」は,狡猾な一面を持つ.それは,子供自身も気付かないうちに大人たちの「優しさ」を巧みに利用し,「体調が悪いから朝起きられない」=「体調が悪いのだから起きなくていい」という心理構造を作り上げてしまう.

起立性調節障害の治療は,この未熟性を成長に導くことである.「怠け」といってはばからない親や教師や医師は,この未熟性を糾弾していることになるが,子供だから未熟なのは当然であり,そこを責めるのは的外れである.

本書を書かせていただいた理由は,起立性調節障害という不可解な病気について,できるだけ多くの医師にその本質を知っていただきたいからである.子供たちを偏見から守り,正しいサポート態勢を作っていただきたい.本書が,起立性調節障害の治療に臨む医師にとって,少しでもお役に立てれば著者としてこれ以上の幸せはない.


平成26年7月9日

森下 克也


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第1章 起立性調節障害とは何か

起立性調節障害の概要

起立性調節障害の何が問題か

「身体型」と「心身症型」

起立性調節障害の診断 1.症状

起立性調節障害の診断 2.問診

起立性調節障害の診断 3.除外診断

起立性調節障害の診断 4.サブタイプ判定

起立性調節障害の診断 5.重症度診断

「新しい診断基準」の限界

起立性調節障害の疾患パラダイム

発症パターン

起立性調節障害を構成する3つの要素

起立性調節障害の成人移行例について


第2章 起立性調節障害の身体症状の診かた

循環動態の異常

サブタイプ別の臨床像

スモールハート(滴状心)

起立性調節障害の脳循環

起立性調節障害と内分泌・代謝異常

めまいをどう診るか

小児良性発作性めまい(BPV)との鑑別

頭痛をどう診るか

慢性疼痛としての頭痛

嘔気をどう診るか

上腹部不定愁訴とストレス

腹痛・下痢・便秘をどう診るか

起立性調節障害にみられる呼吸苦

「朝,起きられない」の身体的問題

起立性調節障害と月経不順・アレルギー疾患


第3章 起立性調節障害の心理的な側面

病院を受診する起立性調節障害は心の問題を抱えている可能性が高い

「身体型」の起立性調節障害における心理的な問題

起立性調節障害の精神医学的問題点

起立性調節障害における心身症とは何か

起立性調節障害にみる心身症の核心

ストレスを溜め続ける子供たち

起立性調節障害にみられる性格傾向

ストレスが身体に出やすい子供の心

心身症症状がもたらす予期不安と広場恐怖

思春期ゆえの過敏性

「朝,起きられない」の心理的問題

人間形成に及ぼす起立性調節障害の本質的な問題

「学校に行きたいのに行けない」となぜいうのか


第4章 起立性調節障害の心理アセスメント

何を選ぶか

コーネル・メディカル・インデックス(CMI)

YGPIⓇ(矢田部―ギルフォード性格検査)

エゴグラム

状態―特性不安検査(STAI)

その他の心理テスト


第5章 習慣性の問題

習慣性の問題とは何か

クロノタイプについて

起立性調節障害とクロノタイプ

睡眠相後退症候群としての「朝,起きられない」

睡眠相後退症候群の心理・社会的側面

身体症状と生体リズムの脱同調

概日リズム異常と気分障害

ゲーム・携帯電話・パソコンと生活リズム

「今さら行けない」という心理

小児慢性疲労症候群

起立性調節障害と小児慢性疲労症候群


第6章 治療の進めかた

全人的医療

初診時,まずすべきこと

治療法の選択

説明のポイント

日常生活での注意点

嘔気への対処

上腹部不定愁訴の治療

過敏性腸症候群の治療

チルトトレーニング

心肺機能と筋力をきたえる

西洋薬による薬物療法

抗うつ薬・抗不安薬はできるだけ使わない

漢方薬による薬物療法

虚実と気血水

東洋医学から見た起立性調節障害

女子における月経不順の問題

睡眠相を改善する

登校をどこまで促すか

「種蒔き」としての対話

「自分に合わせる」ことの大切さ

入院治療について


おわりに

索引

特記事項

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