わが国の近代新生児医療発展の軌跡

  • ページ数 : 256頁
  • 書籍発行日 : 2015年11月
  • 電子版発売日 : 2016年7月8日
¥3,960(税込)
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商品情報

内容

新生児医療者必読の感動ドキュメンタリー

本書は著者が自らの足でご本人やご家族、同僚だった先生を訪ね、そのインタビューに基づいて執筆された、雑誌『Neonatal Care』の連載記事を纏めた、わが国の新生児医療発展の貴重な記録です。
近代新生児医療そのものの中に身を置いた著者の個人的な思い入れが色濃く出た箇所も多々あり、学問的な仔細を超えた人間ドラマとして楽しんで読んでいただけます。

序文

今日、わが国の新生児医療が世界のトップレベルを誇るのは、医学と医療技術の発展があったことも然ることながら、日本人ならではの肌理細やかな医療管理や看護など、多くの先達の努力の積み重ねがあった。

わが国の近代新生児医療は、従来の「保温・栄養・感染防止」という新生児医療の3 原則に沿った児の生きる力に寄り添う医療を経て、大人が積極的な治療で助かるなら新生児にも可能な範囲の医療を行うべきであると、人工換気療法をはじめとした新生児集中治療室(neonatal intensive care unit:NICU)が導入された1970年代前半に始まると言えよう。偶々アメリカの新生児専門医の資格を得て1974年に帰国した筆者は、わが国の近代新生児医療の歩みそのものの中に身を置き、世界のトップに上りつめる先達や仲間たちの汗と涙のドラマのような姿を間近に見聞きしたところから、それらを書き残すことが、筆者に託された使命のように感じていた。

幸い筆者は、そのドラマチックな時代を、雑誌『Neonatal Care』に2009年から2015年まで前後編、全62回にわたって、「新生児医療に生きた人々」と「近代新生児医療発展の軌跡」のタイトルで連載する機会を得た。本書はそれを纏めたものである。

第Ⅰ部「新生児医療に生きた人々」では、近代新生児医療にその命と情熱を捧げた先人を紹介した。第1 章「その基礎を築いた偉大な先達たち」で取り上げた6 人は、筆者も個人的にその方々の謦咳に触れているが、年代的に親しく教えを乞うよりは見上げる先達であった。共通していることは、わが国の医学と医療に歴史的な業績を残された以上に、新生児医療を目指す多くの若者に夢と希望を与え育ててくれたことである。第2 章「歴史の中を共に歩んだ敬愛する先輩と盟友」では、筆者と体温を感じる距離で、共にこの世界を生きてきた6 人を取り上げた。もちろん、その他にも、わが国の近代新生児医療に足跡を残した多くの新生児科医がいるが、筆者と個人的な接点が濃い方々に登場してもらったことをおことわりする。

第Ⅱ部「近代新生児医療発展の軌跡」では、歴史の中で特筆すべきテーマを取り上げて解説する。第1 章「世界をリードするわが国の新生児医療」で取り上げた、パルスオキシメータ、サーファクタント補充療法、高頻度人工換気療法、経皮的ビリルビン測定、アンバウンドビリルビン測定は、わが国が世界に先駆けて研究開発した、新生児医療の世界を変えるほどのインパクトのあるものであった。各々の内容の重要な部分は、それに関わった方々の人間臭いドラマであり、筆者自身が取材の中で、こんなエピソードがあったのか、と感じ入ることが稀ではなかった。とくに第3 章「わが国の新生児医療の進歩にまつわるエピソード」の未熟児網膜症や股関節脱臼は、長く新生児医療に関わってきた筆者でも、そんなことがあったのかと膝を叩く思いであった。最後の第16節「新生児科OBは今 新生児科医と新生児医療が進む未来への道」では、わが国の新生児医療の行く末を思いながら、NICUでその青春を滾らせたいわゆる新生児科OBが、その経験から学び取って新生児のために行っているさまざまな活動を取り上げた。

本書は科学史と言えるものであり、本来は事実(史実)を記すべきであるが、冒頭に述べたように、近代新生児医療そのものの中に身を置いた筆者の目から描かれるところから、筆者の個人的な思い入れが色濃く出た個所が多々あることをお詫びする。しかし同時に、それらが本書に生きた物語としての生命を吹き込んでいると自負しており、学問的な仔細を越えた人間ドラマを楽しんでいただければ、望外の喜びである。

本書が多くの新生児医療従事者の手に届くよう全面的にバックアップしてくださった新生児医療連絡会の皆さまと中村友彦会長、さらに陰の力になってくれたメディカ出版の宮本明子氏に心からの感謝を述べる。

末尾ながら、その命をわが国の新生児医療の発展のために燃焼させた先達と仲間たちに、心からの感謝と哀悼の意を表して、本書を献じるものである。

「微笑みし

新生児らの瞳に 揺らぎたる
  君が命の あたたかき焔」

2015年 猛暑の夏に

仁志田博司

目次

・序 仁志田博司

・本書の刊行によせて 中村友彦

【第I部 新生児医療に生きた人々】

<第1章 その基礎を築いた偉大な先達たち>

◆第1節 反骨のロマンチスト 山内逸郎先生

◆第2節 清貧に生きたあたたかき心の師 小川次郎先生

◆第3節 剃刀の鋭さに含羞の漂う孤高の指導者 馬場一雄先生

◆第4節 京都の粋と大阪の逞しさを持った指導者 松村忠樹先生

◆第5節 新生児に生きた真のクリスチャンドクター 三宅 廉先生

◆第6節 わが国の新生児医療の一断章 関 保平先生を知っていますか?

<第2章 歴史の中を共に歩んだ敬愛する先輩と盟友>

◆第7節 学問というストレートボールを投げ続けた小児科医 大西鐘壽

◆第8節 新生児仲間の爽やかな兄貴分 小川雄之亮

◆第9節 新生児仲間への思いに命を賭けた男 内藤達男

◆第10節 古武士のような凛とした新生児科医 竹峰久雄

◆第11節 福島に田沼 悟という男がいた

◆第12節 ひたすらに新生児医療を愛した男 増本 義

【第II部 近代新生児医療発展の軌跡】

<第1章 わが国の新生児医療の変容>

◆第1節 新生児医療の地域化(regionalization of neonatal medicine)

◆第2節 新生児医療のidentityを求めて

◆第3節 新生児医療から周産期医療への発展

<第2章 世界をリードするわが国の新生児医療>

◆第4節 脳と目を守る血液酸素モニタの開発における世界への貢献

◆第5節 医学の歴史に残るサーファクタント補充療法

◆第6節 臨床医と技術者の情熱が世界に発信した 石の肺でも換気するHFO

◆第7節 世界基準となった赤ちゃんにやさしい黄疸管理 経皮的ビリルビン測定

◆第8節 核黄疸予防の切り札として世界に発信した アンバウンドビリルビン測定器

◆第9節 世界に冠たるわが国の超低出生体重児医療

<第3章 わが国の新生児医療の進歩にまつわるエピソード>

◆第10節 未熟児網膜症をめぐる光と影の歴史

◆第11節 新生児を股関節脱臼の悲劇から救う医学的・社会的活動

◆第12節 周産期医療の扉を開いた山下家の五つ子誕生

◆第13節 サリドマイド児の親である発生学者としての矜持が生んだ周生期研究会

◆第14節 世界に誇る母子健康手帳 その誕生と周産期医療への貢献

<第4章 NICUを越えた新生児医療の広がり>

◆第15節 新生児の命を助ける医療から心を育む医療へ ディベロプメンタルケア

◆第16節 新生児科OBは今 新生児科医と新生児医療が進む未来への道

(1)赤ちゃん成育ネットワーク

(2)出生前(後)小児保健指導

(3)開業産科医・助産師との協働

(4)障害を持つ子どもたちと家族へのサポート

・索引

・謝辞

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書籍情報

  • ISBN:9784840454612
  • ページ数:256頁
  • 書籍発行日:2015年11月
  • 電子版発売日:2016年7月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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