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3Dプリンター×テーラーメイド医療 実践股関節手術

中田 活也, 尾田 雅文 (編著)

株式会社 金芳堂

180 頁  (2016年11月)

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リリース日: 2017年12月01日

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3Dプリンターは整形外科のテーラーメイド医療化を加速する!

3Dプリンターの基礎的な知識から、実物大骨モデル・患者個別手術テンプレート(PST)を作成するためのソフトウェアの使い方などを紹介。人工股関節全置換術に限らず、さまざまな骨切り術や回転移動術といった高度な手術の精度を高めようとする整形外科医におすすめです。

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3Dプリンターは整形外科のテーラーメイド医療化を加速する!

本書は股関節手術分野における3Dプリンターの実践的な活用法を示したものである。

3Dプリンターの基礎的な知識から、実物大骨モデル・患者個別手術テンプレート(PST)を作成するためのソフトウェアの使い方、出力のため3Dプリンタ運用をどう運用したらよいのか(院内生産か外部発注か)、どのように骨モデルやPSTを運用するのかについて、実際の手術をする上での注意点を示した。

とくに本書で紹介する3Dプリンターで作成したPSTは、適応範囲の広さと柔軟性、初期導入と維持費用の低くさ、導入施設を限定しない高い利用可能性、簡便な操作性、保管スペースの節約、インプラントの種類を限定しない汎用性、使用方法の簡便性、手術精度の向上などその期待される費用対効果は極めて高いと考えられ、今後の整形外科のテーラーメイド医療化に欠かせない技術である。

人工股関節全置換術に限らず、さまざまな骨切り術や回転移動術といった高度な手術の精度を高めようとする整形外科医におすすめする。


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はじめに

3D技術の初期臨床応用:画像から実物大モデルへ

 

股関節外科で扱う疾患(変形性股関節症,大腿骨頭壊死症,関節リウマチ,急速破壊型股関節などの変性疾患や外傷性疾患)により,股関節の疼痛が出現し,可動性や支持性が低下すると股関節機能障害を呈するようになる.股関節機能が保存的治療では向上しない場合,関節鏡,骨切り術および人工股関節置換術などの手術治療を選択する場合が多い.

股関節は骨盤と大腿骨の間を摺動させる関節であり,骨盤,大腿骨ともその複雑な形態が故に,股関節外科医は股関節手術の計画と実践に苦慮してきた.臨床現場では,平面的ではあるが股関節の形態を単純X線によりある程度認識できるため,数十年間に渡りX線をトレーシングペーパーに透写し2次元的な手術計画を立案し手術を施行してきた.

3次元で可動する股関節を2次元の計画にて立案することに無理があることは現代では自明のことではあるが,技術的制限により3次元での関節形態評価,動態解析,動作解析などが困難であった当時においては致し方なかったと容認せざるを得ない.それでもその複雑な骨盤と大腿骨の形態を2次元的(平面的)ではなく3次元的(立体的)に視認して手術治療に反映させようとする試みは古くからあった.

股関節の立体視に関する最初の報告は,1982年の岡らの研究1)である.一方,日本股関節学会の業績集において,3次元(3D)または立体的というキーワードが現れるのは1985年が初めてである2).CT画像を重積して立体画像を作成するという試みは1988年頃から散見されるが,コンピューター(PC)の処理能力,CT画像の精度や撮影性能の低さのため構築した画像をPC外に出力することは困難であった.そのため,股関節形態,寛骨臼回転骨切り術,寛骨臼骨折など3D-CTを用いて再構築してPC上のみで形態計測,立体視,シミュレーションする研究3-6)がほとんどで,実物大モデルとしての抽出や手術技術に反映できる技術には至らなかった.

筆者がレジデントであった1990年に,勤務先病院の上長が研修医の一人に「骨盤を立体的に見られたら役立つのだが......」と先天性股関節脱臼に対してtripleosteotomyを施行する予定の症例を前につぶやいたことがあった.その研修医は5mmスライスのCT画像をスライスごと実物大に拡大し,一枚一枚トレーシングペーパーに透写し,さらにその透写画を5mm厚の発泡スチロール板にトレースした後に切り抜き,一枚一枚糊付けして積み上げて実物大の骨盤モデルを作成し手術に役立てたことを記憶している.3Dプリンターが一般に実用化していなかった4半世紀に,古典的ではあるが手作りの実物大積層骨モデルにより視覚援助のもとで手術を施行したエピソードである.

文献的には1980年代後半から1990年代初頭にかけて,3D技術が股関節外科領域で利用され始めている.当初は股関節形態の立体的評価や骨盤骨切り術などの術前計画などに応用されていた7-10).その術前計画を手術へ反映させる技術を大きく進歩させたのは3Dプリンターである.3Dプリンターの進歩

PC上で作成した3D画像を3Dモデルとして抽出する技術の発端は,1980年代初頭の光造形技術の開発である.その開発に貢献したのは小玉秀男11,12)(特許出願S55-48210「立体図形作成装置」),AlanJ.Herbert13),CharlesW.Hull14)である.光造形技術とは,3D-CADデータに基づき紫外線により光硬化樹脂を硬化させて層を作成し,その層を積層することによって立体造形物を作成する技術である.Hullはアメリカでの特許取得(USP4,575,330:"Stereolithography")とベンチャー企業および3DSystems社の立ち上げにより,その技術開発を大きく促進させた.光造形技術の利点はその造形速度の速さと精度であり,試作品をCADデータから直接かつ迅速に作成するRPとして応用されてきた.しかし,高価な光樹脂を使用することに加えて,未硬化で無駄になる光樹脂があるため運用経費が高いという欠点があった.

1990年頃に開発されたシート積層造形法,FDM法や粉末焼結積層造形法によりランニングコストを抑えた積層造形法に発展し,1992年にレーザー焼結を利用して樹脂粉末や金属粉末を積層造形する実用機が開発された.高性能なファイバーレーザーや電子ビームの開発や粉末材料の進歩などに伴い,高速で高密度・高精度な造形物をそのまま製品として利用できるRM技術またはAM技術(1992年ASTMF42委員会)として利用が拡大してきている.

1987年にHullが起業した3DSystems社が初の3D積層造形技術とされる商品を開発したが,1993年にMITが開発した原理を基に1995年にZCorporation社が"3DPrinting"の商標で積層造形法による製品を販売したことが「3Dプリンター」という呼称の始まりと考えられている.当時,数百万円から数千万円していた3Dプリンターは企業などの事業所でのみ導入されていたが,2000年代半ばに基本特許が切れたのに伴って,数万から数十万で販売されるようになり広く普及するようになっている.現在では,自動車部品各パーツ,ターボファンエンジンやエンジンカバーなどの航空機部品,ロケットエンジンノズルや燃料噴射装置などの宇宙開発関連,生体インプラントなどの機器の作成が可能となっている一方で,家庭や医学研究・医療現場などでも利用されるようになっている.股関節外科における3Dプリンターの応用

3Dプリンターで使用できる積層造形材料(特に金属粉末)の種類の拡大とレーザー技術の進歩により高密度,高強度かつ3次元的複雑形状の製作が可能になり,医療の各分野において3Dプリンターは応用されつつある."3Dプリンターは人命を救う"などのメディア紹介15)や経済産業省の2013年版ものづくり白書"世界のものづくり産業が注目する3次元プリンタ"16)などによると医療への応用も始められつつあることが読み取れる.現在では,体材料を高速度で造形できるようになり,頭蓋骨インプラント,歯科用クラウン,脊椎固定用インプラント,人工関節,金属表面加工などに利用されるようになっている.

医学中央雑誌のWebページ(2015.12.1現在)にて3Dモデル×股関節で業績検索をすると86件抽出でき,そのうち57件は2010年以降の業績,2000年以前の業績はわずかに1件であった.さらに3Dプリンター×股関節で検索すると2014年以降に5件がヒットするのみであった.つまり,股関節外科における3Dプリンターの活用は始まったばかりであると考えられる.

1998年にRadermacherら17)がtripleosteotomyの3D術前計画を立案し,それに基づき3Dプリンターを用いて骨切りガイドを作成したのが股関節外科における3Dプリンター利用の最初である.2003年にはBrownら18)が,骨盤骨折をはじめとした骨折にRP技術を応用し,骨片整復,内固定材料(プレート,スクリュー)の位置や大きさを術前に決定しシミュレーションした結果,手術時間の短縮と手術精度の向上,イメージによる被曝時間の短縮につながったと報告し,3Dプリンターの臨床応用への可能性を拓いた.本邦では2003年に,縄田ら19)が,デンプン粉とパラフィンを用いて実物大の骨モデルを3Dプリンターにより作成し,THA術前シミュレーションに利用した結果,カップ設置位置やサイズの決定に有用であったことを報告している.その後,実物大骨モデルを手術に利用した報告がなされるようになった20-23).

1998年にRadermacherら17)が報告した手術テンプレートの臨床応用を発端として,2000年代後半から整形外科各領域において3Dプリンターを用いて作成した患者個別手術テンプレート(テーラーメイド手術テンプレート24)が盛んに考案されるようになり,骨折後の遺残変形に対する矯正骨切り術25),手関節手術26),人工膝関節全置換術27)などが報告されてきた.

股関節外科において3Dプリンターによる手術テンプレートが利用されるようになったのは,2008年以降である.西井ら28)は,大腿骨すべり症に対する3次元骨切り術に手術テンプレートを用いた1例報告の中で,手術テンプレートを大腿骨表面に固定するスロットと骨切りスロットを組み合わせることによりCTによる術前計画を術中手術手技に高い精度で反映させることに成功している.その後,大腿骨頭回転骨切り術29,30)にも適応されてきた.

THAにおける手術テンプレートについては,2009年にHananouchiら31)が寛骨臼用テンプレートを報告したのが始まりであり,3〜4度以内の誤差でカップが設置できると報告されている32,33).その後,表面置換型THA34-36),THAにおける大腿骨側の骨切り術37,38)にも利用され,近年では再置換術39,40)への3Dプリンター技術の応用も報告されており,今後ますますその応用範囲が広がっていくと考えられる.さらに,日本人工関節登録制度(2016)によると小切開を含む (MIS手技)によるTHAは44.3% の症例に適用されており,一つの確立した手技になっている.MIS手技の中でも筋間進入法によるTHAは比較的難度が高く,正確なインプラント設置をするためには手術テンプレートの発展による適用の拡大が望まれる.

3Dプリンターの応用は,テーラーメイド的股関節治療,治療成績の向上,人工股関節の固定性,適合性および耐用性の向上,低侵襲手術や骨温存手術の実現,早期社会復帰の実現など股関節外科に寄与する点が多いと期待できる.特に,患者個別手術テンプレートは,適応範囲の広さと柔軟性,初期導入と維持費用の低減,導入施設を限定しない高い利用可能性,簡便な操作性,保管スペースの節約,インプラントの種類を限定しない汎用性,使用方法の簡便性,手術精度の向上などその期待される費用対効果は極めて高いと考えられる.

本書では,3Dプリンターの種類とその作成物,ソフトウェアーの使用方法,患者個別手術テンプレートとTHAへの応用,その他難度の高い股関節手術への応用について解説し,実際に3Dプリンターを活用することができるように詳説している.本書が,股関節疾患治療と臨床研究の発展および3Dプリンターの新たな活用への礎となることを期待する.


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はじめに

I部 股関節手術における3Dプリンタの意義

1. 3Dプリンターとは:種類とその制約

1.1 3次元造形方法と3Dプリンターの特徴

1.2 各種造形法

1.3 3Dプリンターの今後の展望

2. 3Dプリンターで作れるものとメリット

2.1 実物大骨モデル

2.2 人工骨

2.3 インプラント

2.4 実物大骨モデルによる骨形状評価と手術への応用

2.5 患者個別手術テンプレート

3.3Dプリンター製品の作成手順

3.1 機器

3.2 ソフトウェア

3.3 3Dプリンターによる出力

3.4 外部発注と院内生産

II部 人工股関節全置換術への3Dプリンターの活用

4. 人工股関節全置換術におけるPST

4.1 THAにおけるPST使用の意義と背景

4.2 PST使用による手術の特徴

4.3 PSTの作製

4.4 PSTの設置精度

4.5 THAにおけるカップ設置用PST

4.6 表面置換型THAにおける大腿骨コンポーネント用PST

4.7 THAにおけるステム設置大腿骨頸部骨切り用PST

5. THA寛骨臼コンポーネント

5.1 3D術前計画によるカップ設置位置決定

5.2 3D術前計画に基づいたPST設計の手順

5.3 PSTによるカップ設置の実際および設置精度

6. THA大腿骨コンポーネント

6.1 3D術前計画によるステムの選択

6.2 3D術前計画に基づいたステム用PST作成手順

6.3 3Dプリンターによるステム用PSTの作成

6.4 PSTによるステム設置の実際

7. インフォームド・コンセント

7.1 ICにおける実物大骨モデルの有用性

7.2 手術支援のための実体模型を作る際に必要な説明

8. PSTの精度検証の各種方法

8.1 PSTを設置した時の目標設置位置からの誤差

8.2 骨切りもしくはリーミングなどを行った際の術前計画からの誤差

8.3 インプラントを設置した後の目標設置位置からの誤差

III部 THA以外での3Dプリンターの活用

9. 寛骨臼回転骨切り術

10. 寛骨臼回転移動術

11. 大腿骨頭回転骨切り術

12 大腿骨矯正骨切り術併用THA

13 人工股関節再置換術臼蓋再建における手術シミュレーション

14 カップ再置換術における実物大骨モデルの活用

15. カスタムメイドインプラント作成の試み

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