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レジデントノート増刊 Vol.18 No.14 救急・病棟での悩み解決!高齢者診療で研修医が困る疑問を集めました。

  • ページ数 : 222頁
  • 書籍発行日 : 2016年11月
  • 電子版発売日 : 2018年10月12日
¥4,950(税込)
ポイント : 90 pt (2%)
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商品情報

内容

高齢者診療でぶつかる疑問の答えが必ず見つかります!

基礎疾患がある,内服薬が多いなどの高齢者ならではの問題にどう対処すべきかを,現場でよく出会う場面ごとに解説!研修後にも必ず役立つ一冊です.

レジデントノートバックナンバー

序文

本書は,病院というセッティングで診療することの多い研修医を主対象に,現場での疑問に答える形でさまざまなトピックを扱っています.本編に進む前に,どうしても確認しておきたいことがあります.それは,病院という場所は非常に特殊な空間であり,そこで出会う高齢者もまた特殊な高齢者である,ということです.


高齢者の多様性

当然のことですが,高齢者にもさまざまな高齢者がいて,山登りを日課とするような90歳がいたかと思えば,認知症があってたくさんの併存疾患をもっていてベッド上で寝たきりのような90歳がいたりします.つまり「年齢」は,その患者を規定する1つの要素ではあるけれど,それよりも,ADL,認知機能,併存疾患などの方が,その人を規定するより重要な要素であるという点です.われわれが日々,特に病院セッティングで対峙する高齢者は,ADLが低下し,認知機能が障害され,複数の併存疾患があって,かつ何らかの急性病態を発症した高齢者であることが多いわけですが,そのような高齢者は実は,世の中の高齢者からすれば特殊な高齢者である,ということをまず知っていただきたいと思います.

また,高齢者だから病気が治らないのではなく,上記のような高齢者ほど当然入院を要する急性病態を生じやすいわけで,そのような高齢者を診る機会が多いために,「高齢者は治らない」という観念を抱くことが多い,ということを自覚してください.本書では,そのような高齢者の多様性の評価方法を総論(第1章)で詳説しています.


高齢者の複雑性

われわれが今まで学んできた教科書やテキストには,急性病態の典型的な症状と診断方法 ,cureを目的とした治療法が記されており,それを現場で適用しようとすると,「教科書どおりにいかない」高齢者に対する苦手意識が増幅します.また良かれと思って入院させても,せん妄,転倒・骨折,薬剤による副作用など,医療介入によって生じる有害事象は無視できません.高齢者は単に小さい成人ではありません.フレイルと呼ばれる高齢者特有の虚弱状態や,それに起因して生じる老年症候群について熟知し,そのような高齢者を診るためのスキルの修得が求められているのです.「非典型的なプレゼンテーションであることの方がむしろ典型的」である高齢者をいかに評価し,医療介入のゴールをいかに決めるか? そして,そのゴールがcureではなくてもcareができる,いやむしろ,careを中心に考えることこそが多くのケースで大切になる,ということを知ってほしいと思います.care中心の医療介入のゴールとは,cureも視野に残しながら,目の前の患者がよりよく生きる(well-being)ためにどんな医療介入を行えば良いか,を自問しながら達成されるものです.

本書の第2,3章では,救急外来や病棟で出会う具体的な状況をとりあげ,そのような複雑系としての高齢者にいかにアプローチし,care中心の医療介入を行うか(または時にcureをめざすか)について詳説しています.


病院の特殊性

もう1つの知っておいていただきたい点は,病院での高齢患者との出会いは,点の出会いだ,ということです.人生という線,周囲環境という面に対して,「点の出会い」とは急性病態との対峙,と換言してもよいでしょう.日々の診療のなかで,特に病院というセッティングに慣れれば慣れるほど,点に集中してしまいがちで,線や面がおざなりになってしまうことが少なくありません.しかし,患者にとっては,病院という特殊環境での経験は,文字どおり「点」であり,すべての患者にはER(または外来)に受診するまでの物語があり,入院加療を終了してわれわれの目の前からいなくなっても,当然のことながら人生は続いていきます.care中心の医療を考えるときに,この線や面の意識は医療者にとって必須です.急性病態を,人生という文脈のなかでとらえ,周辺環境をふまえて,目の前の患者にとってのベターなゴールを共有し,介入する...「これって医者の仕事?」そんな風に思うこともあるかもしれません.そうです,線と面の理解なくしては,care中心の医療のための医師としての任務を果たすことはできないのです.


本書では,その点についてすべてを語ることは誌面の制限上できませんが,第4章では,病院から離れても高齢者診療は続いていくことを念頭において,薬の継続や検診について解説しています.加えて第1〜3章のなかでもそのポイントとなるいくつかのテーマをとり上げています.

高齢者診療は,そのセッティングによって提供される医療内容に大きな幅があります.上記のポイントをふまえて本編を読み進めていただくことで,よりバランスのとれた理解が促進されるものと思います.

そして,とかく実臨床と乖離して「わかっちゃいるけど,できません!」となりがちな高齢者診療の特集ですが,今回は,第一線の現場に密着し日々「より良い高齢者診療を」と研鑽し続けている,尊敬すべき仲間に,「evidence-basedでありながらも,日常診療での悩みもひっくるめて現場に即した」内容の原稿を執筆いただきました.依頼のとおり,実用的で素晴らしい原稿を書いてくださった執筆者の先生方に厚く御礼申し上げますとともに,読者一人ひとりが,各自与えられたセッティングで,本書を片手に,患者のwell-beingをともに考え,高齢者診療の醍醐味を実感するきっかけとなれば,これ以上の喜びはありません.


2016年10月

アドベンチストメディカルセンター 家庭医療科
許 智栄
信州大学医学部附属病院 総合診療科
市立大町総合病院 総合診療科
関口健二

目次

Color Atlas

第1章 総論:高齢者診療のキホンを教えてください

1.高齢者の全体像をとらえる

1. 目の前の高齢患者のゴールは何か,常に自問する

2. 高齢者の機能障害を病名(病態)として理解する

3. 評価を難しくしている障害(コミュニケーションバリア)につまずくな,障害を同定してそこから回避する

4. スクリーニングツールを有効に使う

5. 「高齢者」を意識したプロブレムリストを立てる

2.高齢者特有の問題を理解する

1. 高齢患者の特徴

2. 「フレイル」な高齢者

3. 老年症候群

4. 高齢患者へのアプローチ

5. 高齢者システムレビュー(geriatric review of system)

3.アドバンス・ケア・プラニング(ACP)をはじめよう!

1. まずはACPについて知ろう

2. ACPをはじめるタイミング

3. ACPをはじめよう!

4. ACPは総合診療医の必須スキル

第2章 救急外来で困るあれこれ

1.ERですばやく患者把握するには?

1. 高齢救急患者の評価に潜む危険

2. ERでの高齢患者の評価

3. 連携が大切

2.その救急外来の患者さん,どこまでの医療介入をすべき?

①救急医の立場から

1. CPA症例から学ぶ

2. 肺炎からの敗血症性ショックが疑われる症例から学ぶ

②高齢者救急にかかわる救急医の立場から

1. 高齢者の救急症例にどのように対応すべきか?

2. 医師の使命と臨床倫理

3.「元気がない」はどこまで検索する?

ステップ1. 「元気がない」を解剖しよう!

ステップ2. onset(発症)とprogression(経過)を把握する

ステップ3. 絞り込めなければ,疾患群にフォーカスを移す

ステップ4. 薬剤の可能性を必ず一度は考える

ステップ5. 鑑別診断を想定しながら身体診察・検査を行う

ステップ6. それでも病態が絞り込めないとき

4.熱源はどこまで検索する?

1. 発熱精査はこれからはqSOFAが合言葉

2. 肺炎は高齢者のお友達!?

3. 尿路感染症は高齢女性の恋人!?

4. 衣類と戦え! 皮膚軟部組織感染症

5. 発熱精査では隙だらけ! 腹腔内感染症

6. レアだが生命にかかわる細菌性髄膜炎

7. その他の生命にかかわる感染症

5.様子がおかしい(意識変容)はとりあえず頭部CT?

1. 高齢者における意識変容

2. 頭蓋外疾患

3. 頭蓋内疾患:発症時期,時間経過に注目する

4. 精神科疾患:意識変容をうつ病・認知症の視点から眺める

5. 医原性:高齢者の救急受診では常に薬剤による影響を考慮する

6.この症状,もしかして薬のせい?

1. 高齢者を診る際には薬剤有害事象を鑑別の1つにあげておく

2. 患者が服用している薬剤を把握する

3. ハイリスク薬をリストアップする

4. 多職種チームとして患者を診る

7.その転倒の患者さん「ナートして帰宅」でよい?

1. 頭から血を流している=死んでしまうんじゃないかと思うものである!

2. "普通とちがう"危険性を知る!

3. 100人の怪我に100とおりの物語がある!

4. 背後に隠れた物語に耳をそばだてる!

5. 正しく虐待を疑って関係者みんなを助ける!

6. 「ナートして帰宅」にはまさしく総合診療力が必要!

8.この患者さん,帰してもいいですか?

1. 帰宅許可までの手順

2. 簡便なツールなどを活用しながら,CGAの項目に沿ってざっくりと情報収集を行う

3. 現時点で予後悪化に寄与するリスクを抽出し,それぞれに具体的介入策をたてる

4. 説明用の退院時サマリーを作成し,サマリーに沿って口頭で本人・家族に説明

5. 関係者に退院時サマリーを送付し可能なら口頭でも連絡しておく

第3章 病棟で困るあれこれ

1.家族の「認知症はありません」って信頼できない?

1. 認知症って? 軽度認知機能障害とは?

2. 病棟や救急研修で認知症,MCIを知っておくことはなぜ大事?

3. 研修医には,何ができる? 具体的に何をしたらよいのか?

4. 自然歴を知る,ステージングを知るtrajectory mapping

2.入院中のADL低下は防げない?

1. 高齢者と入院

2. ADL低下につながる危険因子

3. まずは日々の回診時に機能評価を行う

4. ADL低下を防ぐには

5. 具体的にはどうしたらよいか

◦Advanced Lecture:在宅「入院治療」は難しい!?

3.入院中の不穏にどう対処する?

1. せん妄とは?「いつもと違う」からはじめよう

2. せん妄が初期研修のキモでハイライト? あなたが患者を救う

3. せん妄に気づこう!

4. 安全確保と治療できる疾患の検索・除外,システマチックな介入

5. せん妄予防は早期介入を兼ねる

6. 脱拘束!? は可能か? 必要か?

◦Advanced Lecture:1. IA-ADAPT

◦Advanced Lecture:2. 術後せん妄

◦Advanced Lecture:3. 迷ったときは「注意力」に注目,そして...

4.「家に帰る!」と言ってきかない患者,帰してもよい?

1. 患者の希望をそのままとり入れてよいか?

2. 意思決定能力

3. 患者の意思決定能力を評価しよう

4. そして治療方針決定へ:shared decision making

◦Advanced Lecture:軽度認知症患者の評価

5.入院中の「意識レベルが下がっています」にどう対処する?

1. 病棟での鑑別疾患は,入院後経過から推理!

2. 鑑別疾患は1(ワン)―2(ツー)―あら?

3. 低活動性せん妄ってなに?

6.入院中の転倒にどう対処する?予防はどうする? 転倒の上流と下流にも目を向けよう

1. 病院における転倒とその概要

2. 転倒予防のためのスクリーニング(リスク評価)

3. 多職種による転倒予防へのアプローチ

4. 転倒発生を認めたら

5. 症例への対応

7.入院中の発熱にどう対処する?

1. 高齢者の入院中の発熱

2. 感染症での発熱

3. 非感染症での発熱

8.入院中の食欲不振にどう対処する?

1. 高齢者に多い食欲不振の原因

2. 入院している高齢者への対応の実際

9.入院前は嚥下できていたのに,入院したら食べられなくなった? 嚥下障害の評価と介入

1. 嚥下障害とサルコペニア

2. 入院に伴う嚥下機能低下の原因

3. ベッドサイドでの嚥下機能評価

4. 誤嚥予防のための介入

◦Advanced Lecture:脳血管障害における「抗誤嚥薬」

10.その入院患者さん,どこまでの医療介入をすべき? 病院総合医の立場から

1. 困難な意思決定

2. 症例での4つの要素

3. アドバンス・ケア・プラニングの重要性

11.スムーズな退院支援のために知っておくべき社会・医療資源は?

1. 入院前の生活状況を早期に把握する

2. スムーズな退院支援のための病状説明

3. 退院に向けて訪問看護と薬局とうまく連携する

◦Advanced Lecture:生物心理社会モデルで退院支援を考えよう!

12.終末期に酸素や輸液って止めていいの?

1. 家族だけでなく医療者も終末期の輸液に対してさまざまな意見をもっている

2. 終末期の輸液に対してのガイドライン

3. 輸液には延命効果,QOL向上の効果があるとは限らない

4. 酸素投与は呼吸苦を改善させるとは一概にはいえない

5. 倫理面で悩んだら,臨床倫理の4分割法を活用しよう

6. 輸液を止めると残り時間は1,2週間程度

13.病院での望ましい看取りって?

1. 治療から看取りへの転換

2. 臨死期の患者と家族の苦痛とその対応

3. 看取り

第4章 治療はどう考える?

1.この薬,いつまで続けるの?

1. 服用しているすべての薬剤を把握すること,またその服用理由についても確認すること

2. どの程度処方を減らした方がよいのか,薬剤によって引き起こされる危険性は何か,について検討 

3. 処方を中断することが妥当かどうか薬剤ごとに考えていく

4. 中断する薬剤の優先順位をつける

5. 薬剤中断プランの実行と観察

2.薬は少なければ少ないほど良い?

1. ポリファーマシー:多量の薬剤を使用している状態

2. ポリファーマシーにおけるPPOsの関係

3. PPOsを発見するには

4. 開始する際に注意すること

5. 「start low,go slow」が当てはまらない薬剤:抗菌薬

6. PPOsを減らすこと

7. 本症例に対する対応

3.がん検診っていつまでするべき?

1. まずはガイドラインをみてみよう

2. 高齢者にとっての検診

◦Advanced Lecture:高齢者の予後予測

4.高齢者,どうなったら「末期」と言われるの?

1. 末期の臨床像とは?

2. 次に何ができるだろうか?

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書籍情報

  • ISBN:9784758115797
  • ページ数:222頁
  • 書籍発行日:2016年11月
  • 電子版発売日:2018年10月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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