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救急・ERノート1 もう怖くない めまいの診かた、帰し方

  • ページ数 : 262頁
  • 書籍発行日 : 2011年4月
  • 電子版発売日 : 2014年12月12日
¥4,950(税込)
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商品情報

内容

救急でのめまい診療に自信がつく!

「めまい」が苦手の原因となる4つのポイントをしっかり解説!
①患者のめまい感を正しく分類できない…
②BPPVを適切に診療できない…
③致死的疾患との遭遇が少なからずある
④根拠と効果の疑わしい治療法が行われていて混乱する…

救急診療に携わる全ての医師に役立つ一冊です。

序文

めまいはありふれた症候の1つであるが,訴えの曖昧さやとらえにくさから初学者や見慣れていない医者には苦手意識がつきまとってしまう.どうして苦手なのかを私が大づかみに分けて

① 患者のめまい感を正しく分類できない

② 良性発作性頭位めまい症(BPPV)を適切に診療できない

③ 致死的疾患との遭遇が少なからずある

④ 根拠と効果の疑わしい治療法が行われていて混乱する

という点にあるのではないかと考えて研修医向け雑誌の特集にしたことがある〔「レジデントノート」2008 年6月号特集「めまい診療を根底から見直そう!」(編集/箕輪良行)〕.幸いにその企画は,「めまい」に苦手意識をもっている若手医師が非常に多かったせいか,予想を遥かに超えた多くの読者(主に初期研修医)から反響をお寄せいただいた.

一般にジェネラリストであれば,発熱,胸痛,腹痛,頭痛といった主要な症候のすべてに関してそれぞれ30 分程度で説明できるぐらいの臨床力があるのが望ましい.と考えながらも自省するとはなはだ心もとないな,と気づいたのはちょうど医者になって10数年目だった.ありふれた症候は自ら経験する機会もありテキスト,マニュアルに眼を通すことも多く学んでいたが,どうも「めまい」が死角になっていてあやふやだ,と気づいた.救命センターの部長を拝命した医者19 年目の船橋市立医療センターでのことだった.北米の家庭医訓練を修了して帰国,茅ヶ崎徳洲会総合病院にいらした木村眞司先生(現 松前町立松前病院院長)がそのころ,BPPV へのEpley 法の日常診療での有用性を紹介して普及を始めていた.さっそく救急車でやってきた患者を対象に試してみたのが,「めまい」修練のきっかけとなった.

自分自身の苦手意識を振り返りながら,上記の4つを確信した.患者の訴えを適切な医学用語として認識する過程は診断の入口,semantic sentence の定着そのものであり,ジェネラリストの臨床能力そのものである.めまいはこの過程が結構むずかしく,訴えを分類したうえで,典型的な「回転性めまい」と把握して鑑別診断していく流れに入っていければしめたものである.ともすればこの病歴聴取の過程をすっ飛ばして,脳卒中,特に小脳病変の危険をおそれて「とにかく頭部CT だ」と盲目的に走ってしまうのがよくあるパターンである.2~5 % にすぎない中枢病変にすぐにとびつかないで,よくあるありふれた病気へのアプローチを試みること,さらにそれがうまくいく成功体験がないとますます「めまい」は苦手となってしまう.ここでBPPV が登場してくる.この病気がジェネラリストの知識として広がらなかったのは,教科書的に有名なメニエール病が医学生の講義などでよく扱われてきたヒストリーに比べて,おそらくBPPV は学問的な蓄積や専門医の関心の低さも手伝っていたこと,さらには耳石置換法のような治療法への興味が低かったことも関係していたのだろう.実際に治療に成功すると本疾患が身近に感じられてくる.

BPPV のように科学的な根拠も相当にそろっている疾患がめまいにもあって,ジェネラリストでも手が届くように感じること,そしてそれ以外にも根拠の示された治療法が用意されてくると,「めまいは耳鼻科」と短絡することなく,心筋梗塞や糖尿病といった内科の病気と同じように扱えるようになるのではないか.10 年以上も前にかかわり始めためまいと私のお付き合いはとうとう,関連する領域で専門家がみてジェネラリストでも手にとどく一定の深さまで扱ってみようということに至った.苦手意識を生む背景に正面から立ち向かい,「めまい」の臨床的アプローチを根底から見直すことをめざすだけでなく,さらに一歩進んで,基本的知識のみならず,若手医師から上級医へとキャリアアップするために必要となる現場での考え方や実践法までも扱いたい.本書のねらいは,専門家からみたらまだまだ不十分だろうが,上記のような苦手意識を克服して,最後には科学的な根拠のある診療,未解決の課題の存在にまで至れば,症候からの診療を身上とするジェネラリストにまた1つ得意技が増えるようになることである.このねらいが実現でき,めまい苦手意識を少しでも和らげることになることを願っている.


2011年4月

聖マリアンナ医科大学救急医学
箕輪 良行

目次

第1章

1 総論:救急外来・ERでみるめまいへのアプローチ 6割をクリアするために

・緊急度の高い傷病者を優先して扱うアプローチ

・救急外来・ERにおけるめまいの典型的なアプローチ

・回転性めまいへのアプローチ

・ありふれた疾患としてのBPPV

・自分たちで耳石置換法を試みる

・脳血管障害による中枢性めまいの鑑別診断

・めまい患者の入院適応基準

・Tips & Pitfalls1 Dix-Hallpikeテストの注意点

・Tips & Pitfalls2 小脳梗塞に注意

2 危険なめまいを見逃さないぞ

・めまい診療の現状

・危険なめまい(特に脳卒中)の頻度

・中枢性めまいと末梢性めまいの鑑別

・実際のめまい診療の流れ

・例外の存在(末梢前庭障害との鑑別が困難な中枢性めまい)

・脳卒中以外の原因による中枢性めまい

問題解決型ケーススタディCASE(1)

・見逃さないで済んだ脳血管障害ケース

3 よくあるめまい,特にBPPVを診療する

・疫学および病態

・病歴:誘因,持続時間,性状が大切

・身体診察(眼振検査)

・治療

4 めまい診療においてのdisposition(入院・帰宅)決定時に振り返るべきこと

・振り返りポイント(1) 患者の言う「めまい」とはどんな症状だった?

・振り返りポイント(2) めまいの原因として頭・耳以外は考慮した?

・振り返りポイント(3) 回転性めまいイコール耳性めまいと早合点していないか?

・振り返りポイント(4) 真剣に神経学的所見は探したか?

・振り返りポイント(5) 頭部CTやMRIを過信しすぎていないか?

・振り返りポイント(6) 安易にBPPVとゴミ箱診断していないか?

・振り返りポイント(7) 患者は歩けるか? 経口摂取ができるか? 患者や家族の希望に配慮したか?

・入院を考慮するべきめまい

問題解決型ケーススタディCASE(2)

・入院のトリアージで迷うケース(オーバートリアージ)

5 めまいの病歴聴取におけるピットフォール

・めまいは前庭(小脳)系由来とは限らない!

・末梢性めまいか脳卒中(小脳・脳幹梗塞)か?

・4つの代表的な良性(非悪性)めまい疾患の特徴を知る

・小脳梗塞の特徴は?

・発症誘因を見逃さない

・非回転性めまいでは常に全身疾患とその治療薬の影響を考慮する

・浮動性めまいの最多の原因は緊張型頭痛・肩こりである

・Tips & Pitfalls1 発症誘因を訊き出すコツ

問題解決型ケーススタディCASE(3)

・めまいの不整脈ケース

6 めまいの身体診察法(総ざらい)

・体平衡検査

・眼振検査

・自律神経機能検査

・Tips & Pitfalls1 眼振所見がわかりにくい場合

7 めまいの画像診断 CT/MRIの適応をはっきりさせる

・頭部CTの適応について

・頭部MRIの適応について

・MRI,MRAを施行する前に考えるべきこと

問題解決型ケーススタディCASE(4)

・めまい,どういうときにMRIを撮る?

問題解決型ケーススタディCASE(5)

・CT適応のオーバートリアージ どこまで許される?

8 薬物療法のEBM メイロン®,メリスロン®,セファドール®,セルシン® ほか

・めまいの薬物療法

・文献的には

・日本で頻用される治療薬

・Tips & Pitfalls1 まずは特異的な治療から

9 ガイドラインに則っためまい関連の脳血管疾患治療

・小脳梗塞

・小脳出血

・椎骨動脈解離

・Tips & Pitfalls1 血栓溶解療法,抗凝固療法,抗血小板療法の選択

第2章

1 小脳脳幹病変のめまいの特徴 病歴と身体診察から画像所見を予測する

・主訴から

・めまい患者の病歴を聴取するうえで重要なポイント

・身体診察手順および検査手順

・受診時にすでにめまいが消失している場合

・症例紹介

One More Experience(1)

・方向交代性眼振と中枢病変

・方向交代性眼振って何?

・自発性の方向交代性眼振

・注視性の方向交代性眼振(注視方向性眼振,左右側方注視眼振)

・頭位・頭位変換性の方向交代性眼振

2 日本めまい平衡医学会「めまいの診断基準」(1982年)の概説

・本基準の成り立ち

・各疾患についての概説

3 眼振の病態生理

・眼振とは

・良性発作性頭位めまい症(BPPV)

・診断に必要な眼振の生理学

・前庭神経炎

・メニエール病

4 BPPV 後半規管 / 外側半規管型の病態生理と病歴,眼振所見の特徴

・BPPVの病態

・BPPVの臨床学的特徴と責任部位

・半規管の生理機能

・病歴聴取

・眼振所見による患側の決定

・鑑別診断

・Tips & Pitfalls1 くり返すめまい

・Tips & Pitfalls2 頸椎異常,椎骨脳底動脈循環不全との鑑別

・Tips & Pitfalls3 小脳疾患との鑑別

One More Experience(2)

・EpleyかSemontかLempertか(耳石置換法)-方法と適応

・耳石置換法

・Epley法

・Semont法(liberatory maneuver)

・Lempert法

5 メニエール病の病因,診断,治療の実際 救急外来からはじめるべき事柄

・メニエール病の原因

・メニエール病の症状

・メニエール病の補助診断

・治療

6 前庭神経炎の診断,病態,治療の実際 救急外来からのアプローチ

・診断

・病態

・症候

・治療

One More Experience(3)

・長く続く方向固定性眼振は末梢性か?

・長く続く方向固定性水平性眼振

・長く続く方向固定性垂直性眼振

One More Experience(4)

・救急で悪性発作性頭位めまいを見落とさないために 日常診療からの発信

・発作性頭位めまい

・悪性発作性頭位めまいの診断に役立つ特徴的症候

・症例呈示

・MPPVの症状に対する考察~小脳下虫部 症候~

7 めまい理解に必要な正常解剖生理学 非耳鼻科医のために

・平衡機能系神経ネットワーク

・末梢性・脊髄性の体性感覚系とのネットワーク

・Tips & Pitfalls1 回転性めまいと浮動性めまい

第3章

1 「心因性めまい」の鑑別疾患

・心因性を疑う第一歩

・心身症の理解

・心因性めまいの訴え方

・心因性めまいと精神疾患

・Tips & Pitfalls1 病歴聴取の注意点

・Tips & Pitfalls2 隠れうつ病

Pros & Cons~救急医を悩ます問題~(1)

・耳石置換法,Epley法が効かない場合はBPPVではないのか?

・BPPVとCPPVの鑑別

・2BPPVに対する耳石置換法の治療効果

・3BPPV難治例の頻度

Pros & Cons~救急医を悩ます問題~(2)

・自律神経機能異常はめまい発症に強くかかわっているか?

・めまい患者の全身的な自律神経機能異常

・めまい患者の交感神経機能の左右差

・めまい患者の椎骨動脈血流の左右差

・めまいの発症機序としての交感神経機能・椎骨動脈血流仮説

・めまいの発症に自律神経機能異常が関与しているめまい患者の治療

2 椎骨脳底動脈循環不全(VBI)とTIAとしてのめまい

・VBIと末梢性めまいとの鑑別

・VBIの診断に至るまでの検査の組み立て

・VBIに対し救急診療で行うことのできる対処

Pros & Cons~救急医を悩ます問題~(3)

・前庭性てんかんとは何か?

・位置づけに関する基礎知識

・前庭性てんかんと臨床診断するめまいとは

・自験例の検討

・鑑別診断

3 片頭痛性めまいはどの程度存在するか?

・一次性頭痛とめまい

・片頭痛性めまい(migrainous vertigo)

・片頭痛性めまいの発現機序

・片頭痛性めまいの治療

・片頭痛性めまいの頻度

4 小児のめまいをみるヒント

・小児のめまい,その特徴

・小児のめまい疾患

・時期別での小児のめまい,平衡障害

・小児の急性期におけるめまい

・小児のめまい・平衡機能検査

・治療について

・平衡機能のリハビリテーション

・Tips & Pitfalls1 先天性眼振への対応

・Tips & Pitfalls2 小児良性発作性めまいの診断

Pros & Cons~救急医を悩ます問題~(4)

・CVDリスクファクターで中枢性か末梢性か予見できるか?

・ERでのめまい疾患とCVDの関連

・CVDリスクファクターとめまい

・メタボリックシンドロームとめまい

・CVDリスクファクターから中枢性か末梢性かを予見できるか?

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書籍情報

  • ISBN:9784758113410
  • ページ数:262頁
  • 書籍発行日:2011年4月
  • 電子版発売日:2014年12月12日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

※今日リンク、YNリンク、南山リンクについて、AndroidOSは今後一部製品から順次対応予定です。製品毎の対応/非対応は上の「便利機能」のアイコンをご確認下さいませ。


※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。


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※書籍の体裁そのままで表示しますため、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。