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シリーズ生命倫理学 第19巻 医療倫理教育

伴 信太郎, 藤野 昭宏 (編)

丸善出版 株式会社

270 頁  (2012年7月)

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リリース日: 2018年06月29日

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W.オスラー博士の「平静の心」に代表されるヒポクラテスの誓詞の道徳的立場に基礎を置いた統的な医の倫理は、日本では1990年代に入ってから陰を潜め、生命倫理学を重視する傾向が一気に強まっている。現在では患者中心の医療を病院の基本理念に掲げることが第三者医療評価機関から認定されるための必須条件となっている状況下にある。一方で、こうした患者中心の医療倫理への行き過ぎに警鐘を鳴らすかのように、最近になって医療専門職のプロフェッショナリズムとしての倫理教育の重要性を再評価しようとする動きもある。シリーズ19巻「医療倫理教育」はこうした現在の状況を踏まえながら,12章にわたる構成を企画した。 医療に関する様々な専門職業倫理、法規制、医療経済・政策論を解説。高齢化や社会福祉に関する情報、遺伝子工学、ナノテクノロジーなどの先端技術に関する情報を収載。第Ⅱ期は第12巻・第14巻・第18巻・第19巻を同時刊行。

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W.オスラー博士の「平静の心」に代表されるヒポクラテスの誓詞の道徳的立場に基礎を置いた統的な医の倫理は、日本では1990年代に入ってから陰を潜め、生命倫理学を重視する傾向が一気に強まっている。現在では患者中心の医療を病院の基本理念に掲げることが第三者医療評価機関から認定されるための必須条件となっている状況下にある。一方で、こうした患者中心の医療倫理への行き過ぎに警鐘を鳴らすかのように、最近になって医療専門職のプロフェッショナリズムとしての倫理教育の重要性を再評価しようとする動きもある。シリーズ19巻「医療倫理教育」はこうした現在の状況を踏まえながら,12章にわたる構成を企画した。 医療に関する様々な専門職業倫理、法規制、医療経済・政策論を解説。高齢化や社会福祉に関する情報、遺伝子工学、ナノテクノロジーなどの先端技術に関する情報を収載。第Ⅱ期は第12巻・第14巻・第18巻・第19巻を同時刊行。


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緒 言

ペンシルバニア大学の臨床医学教授であったウイリアム・オスラー博士(1849-1919)は,1889 年にペンシルバニア大学医学部の卒業生たちに対して行った講演で,医師に最も必要な資質は「平静心」であるとし,「いかなる状況の下でも精神の冷静さと威厳を保つこと,嵐の中での静けさ,重大な危険の瞬間における判断の明晰さ,不動心,平然さが大切である.たとえしばしば誤解されようとも,それが一般の人々に最も評価される特質なのである」と説いた.これは『平静の心』という題名の小さな本にまとめられ,以後何十年にもわたって医学部卒業生への贈り物となったことでよく知られている.このオスラー博士の医療倫理に関する考え方は,臨床医としての実際上の礼儀を示したものであり,それはヒポクラテスの誓詞の道徳的立場に基礎を置いているものであった.

その後間もなくして,医学界を揺るがすような歴史的な出来事,すなわち,ニュルンベルク裁判(1947),DNA の発見(1953),腎臓移植(1954),経口避妊薬(1960),シアトル透析選別委員会(1960),心臓移植(1967),ハーバード大学の脳死の定義(1968),タスキーギ梅毒研究の発覚(1972),ロウ対ウェイド判決(1973),カレン・アン・クインラン事例(1975),ルイーズ・ブラウンの誕生(1978),ベビー・ドゥ事件(1982)などによって,医療倫理の舞台は,臨床医から先端医学研究者へ,専門職集団としての医師の倫理から国民に対する具体的な社会政策へと移っていった.医療倫理に関する問題は,科学者である医師だけではなく,神学者,倫理学者,法学者らが中心となって,一般市民も参加する施設内研究審査委員会や倫理委員会の場で議論するようになった.

こうした医学をめぐる社会文脈の中で,礼儀,義務論,政治倫理を基本としてきたこれまでの伝統的な医療倫理は,患者の自律性を最も重視する新しい医療倫理としての「生命倫理学(バイオエシックス)」へと変遷していった.

以上は,アルバート・ジョンセン氏の医療倫理史観の真髄の一部をごく簡潔に表したものであるが,伝統的な医の倫理から現代の生命倫理学へ移行していく医療倫理の変遷史について大変わかり易く提示してくれている.

日本では,1990 年代に入ってからこの傾向が一気に強まり,専門職集団としての伝統的な医の倫理が陰を潜め,現在では患者中心の医療を病院の基本理念に掲げることが第三者医療評価機関から認定されるための必須条件となっている状況下にある.また一方で,こうした患者中心の医療倫理への行き過ぎに警鐘を鳴らすかのように,最近になって医療専門職のプロフェッショナリズムとしての倫理教育の重要性を再評価しようとする動きもある.

第19巻『医療倫理教育』は,こうした現在の状況を踏まえながら,12章にわたる構成を企画した.第1章「医療倫理教育の歴史的意義と課題」,第2章「医療倫理教育における哲学的・倫理学的基礎」,第3章「医療倫理教育のさまざまなアプローチ」,ここまでが総論に該当するところであり,第4章「臨床倫理学の教育方法と実際」,第5章「模擬患者(SP)の参加による医療者教育」,第6章「患者および一般市民のための生命倫理教育」,の三つの章が具体的で実践的な教育内容について言及している.さらに,第7章「医学教育における医療倫理」,第8章「歯学教育における医療倫理」,第9章「薬学教育における医療倫理」,第10章「看護教育における医療倫理」,第11章「介護福祉教育における「終末期介護」教育の意義と課題」,の五つの章で,医師,歯科医師,薬剤師,看護師,介護福祉士という医療専門職の養成における医療倫理教育の特徴と要点について解説されている.特に第7章では,日本医学教育学会で再評価の動きがあるプロフェッショナリズム倫理教育に焦点を当てて詳述されている.最後の第12章では,生涯にわたる臨床における実践倫理の総括的な展望として,「卒後臨床教育の現状と今後の展望」について,国際的動向の大局を見据えながら簡潔に解説がなされている.

日本における医療倫理教育は,各大学や病院などによって教育内容とアプローチ方法はさまざまであり,各施設で共通する医療倫理コアカリキュラムについては,未だ医療倫理に関連する学会等において公表されるに至っていない.日々医療現場で実践的な倫理教育に携わっている方々や医療者教育における倫理教育のあり方に高い関心のある方々にとって,本巻が少しでもお役に立つことを心より願ってやまない.


第19巻編集委員 伴 信太郎

藤野 昭宏


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第1章 医療倫理教育の歴史的意義と課題――その源流,展開,現在

第2章 医療倫理教育における哲学的・倫理学的基礎――価値の在りかとしての「現場」の意義

第3章 医療倫理教育のさまざまなアプローチ

第4章 臨床倫理学の教育方法と実際――ケーススタディ中心型授業の手法

第5章 模擬患者(SP)の参加による医療者教育――SP養成の実践例とカリキュラムを中心に

第6章 患者および一般市民のための生命倫理教育――パッケージ化された「生と死の物語」の構造を読み解く

第7章 医学教育における医療倫理――特にプロフェッショナリズム教育について

第8章 歯学教育における医療倫理――歯学教育モデル・コア・カリキュラムを中心に

第9章 薬学教育における医療倫理――自覚的薬剤師養成のための医療倫理教育

第10章 看護教育における医療倫理――「ケアの倫理」に焦点をあてて

第11章 介護福祉教育における「終末期介護」教育の意義と課題――「尊厳と倫理」へのアプローチ

第12章 卒後臨床教育の現状と今後の展望――世界的動向を踏まえて

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