
摂食障害治療最前線-NICEガイドラインを実践に活かす
西園マーハ文 (編集)
株式会社 中山書店
212 頁
(2013年8月)


わが国初のNICEガイドラインを活用した摂食障害治療の実践書
本書は、NICEから翻訳許可を得たガイドラインのcore interventionの日本語訳に、日本の読者向けの解釈を加えたという形を取っています。
エビデンス豊富なNICEガイドラインを、わが国の摂食障害治療に活かすべく、症例とともに詳細、かつ平易に解説。袋小路に陥りやすい摂食障害治療のなかで、「こういう方法もあったか!」という突破口が開かれるきっかけに。
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わが国初のNICEガイドラインを活用した摂食障害治療の実践書。エビデンス豊富なNICEガイドラインを、わが国の摂食障害治療に活かすべく、症例とともに詳細、かつ平易に解説。プライマリケア医から専門医まで、摂食障害に関わる人、必読の1冊。
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はじめに
「摂食障害を診てくれる先生はどこにいるんですか」,「摂食障害の専門家を紹介してくれませんか」というような質問をしばしば受ける.「摂食障害をわかっていない医師が診てこじらせるよりは専門家に回したい」という,摂食障害を特に専門としない医師の思いもたいへんもっともなことである.しかし,残念ながら,今日本で摂食障害を専門中の専門とする人は少ない.専門病院もない.有病率は,若年女性においては統合失調症以上,また,うつ病とほぼ同じレベルと考えられながら,これらの疾患に比較して摂食障害を手がける治療者は極端に少ない.最近,未治療や治療中断後に慢性化したケースの治療についてコメントを求められる機会が増えたが,これらの人々の20 年以上の病歴のなかで,治療がいかに役に立ってこなかったかを聞くと愕然とする.もちろん,当事者の治療抵抗が強いという,この疾患特有の問題もあるのだが,治療抵抗の強さと治療者の少なさという2 つの条件が重なってしまうと受診する患者は極端に少なくなり,一般の医療者には実態のわからない病気になってしまう.すでにそのような状況になりつつあるようにも思われる.
現代の摂食障害の歴史は,思春期の神経性無食欲症の「流行」から始まった.経済的に余裕のある層の患者も多く,完璧な治療を求める家族も多かったため,身体面でも精神面でもかなり手厚い治療が行われた.1970〜80 年代は,長期の入院を行いながら個人力動精神療法を行うなどの労力を要する治療が他の精神疾患に対しても行われたが,摂食障害においては,身体治療を伴うため,特に手厚い治療が行われていたといえるであろう.このような治療が何年も続くこともあり,摂食障害は,「オーバートリートメント」(治療の過剰な提供)になりがちという批判もされるようになった.
このように考えると,摂食障害は,少数患者に対する「オーバートリートメント」と「ノートリートメント」(未治療)の両極端に陥りやすいといえるであろう.有病率の高さを考えると,ごく少数の患者に手厚い治療を提供するだけでなく,少し簡単な治療の普及,危機的な時には集中的な治療が受けられるようなシステム,危機的な場合の紹介の確実性,国内どこに転居してもだいたい同じような治療が受けられることの保証,治療者の個性に頼りすぎない治療を提供することなどが重要ではないかと思われる.これは結局,一般医療機関での開かれた治療に,専門医療が連携するシステムが必要だという結論になるであろう.
このように考えたとき,イギリスの医療システムから学ぶことが多いのではないかと筆者は考えた.イギリスでは,どのような疾患についても公営医療の治療資源を生かした治療をしている.専門病院ももちろんあるが,ある程度地域の治療資源で治療をしてみて,経過が思わしくないときに紹介されるという方法がとられている.
2012 年のロンドンオリンピックの開会式では,公営医療(National HealthService: NHS)の看護師が,子ども病院に入院中という設定の子どもたちと一緒に踊るという趣向があった.児童文学を紹介するための演出とはいえ,オリンピックの開会式に医療場面が登場するのは珍しく,NHS がいかに市民の身近にあるかが示されていたといえるであろう.
近年,イギリスのNICE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインは,エビデンスに関する権威づけとして日本でも知られるようになっている.科学的エビデンスは,国を超えるものであることが期待されるが,治療効果エビデンスのある治療をどのように当事者に届けるかは,それぞれの国の医療システム次第である.NICE ガイドラインの背景を知り,ガイドラインがどのように実際現場で活用されているかを検討すれば,「日本では無理だろう」,「日本には合わないだろう」という印象だけでなく,「医療システムの違いを考えてここを工夫すれば,日本ならばこのように生かせるかもしれない」という視点も得られるのではないかと考えた.花の種はどこにでも運べるが,よく育っていた土地の土壌を研究しておいたほうが,新しい土地で育てるときに失敗が少ないと例えたらよいであろうか.
本書は,NICE から翻訳許可を得たガイドラインのcore intervention の日本語訳に,日本の読者向けの解釈を加えたという形を取っている.イギリスの医療システムについて語りながら,NICE ガイドラインを紹介し,それを日本で活用する方法を考えるというのは,いささか野心的すぎる試みであった気もするが,袋小路に陥りやすい摂食障害治療のなかで,「こういう方法もあったか!」という突破口が開かれるきっかけになれば幸いである.
日本摂食障害学会では,公的摂食障害センター(治療および研究,教育のための施設)を作ろうという運動も展開している(http:// www.edcenterjp.org/).日本に一つも専門病院がない現在,専門機関を作るということと,上記のような治療の裾野を広げる試みとは矛盾するものではない.NICE ガイドラインには,専門施設の役割も述べられている.プライマリケアと専門施設の役割分担や連携のテーマは,日本でもますます重要になってくる課題だと思われる.冷静に考えてみれば,日本でもさまざまな疾患で病診連携は進んでいるのであり,摂食障害に限ってということはないはずである.特に,糖尿病など,生活習慣をベースにもち,時々入院を要する危機的な病状がみられる身体疾患の治療に必要な治療システムは,摂食障害の治療のモデルとして参考になる.非常に特殊な疾患というよりは,そのような身近な疾患の治療との類似点も見つけながらお読みいただければ幸いである.
執筆途中で職場を替わったため,完成には想定した以上の時間がかかってしまった.中山書店編集部には,全過程で緻密なサポートをいただいたことに心から感謝したい.
2013年6月
西園マーハ文
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はじめに
Part 1 NICEガイドラインとNHS
I NICEガイドラインとは
1.NICEとNICEガイドライン
a.ガイドラインの内容
b.ガイドライン作成のプロセス
2.治療推奨のグレードについて
3.NICEガイドライン以外の摂食障害臨床ガイドラインとの違い
a.アメリカ精神医学会(APA)のガイドライン
b.オーストラリア・ニュージーランドのガイドライン
c.Guidelines for the nutritional management of anorexia nervosa
d.日本摂食障害学会『摂食障害治療ガイドライン』
II National Health Service(NHS)とは
1 .NHSという医療制度と摂食障害
a.NHSのキー概念1−治療や検査は最小限に
b.NHSのキー概念2−GP制度がある
c.GP制度の問題点
2.NHSのなかのメンタルヘルスのシステム
a.地域メンタルヘルスチーム
b.児童・思春期精神医学チーム
c.学校とCAMHS
Part 2 NICEガイドライン
I NICE ガイドラインにおける治療の基本
1.どのような状況にも共通する治療の基本
a.症例から,治療の始め方の課題を考える
b.Aさんの治療が始まるまでのさまざまなハードル
受診に至るまで
II NICEガイドラインの推奨ステートメント
1.評価と治療の連携
a.Aさんの経過をNICEガイドラインから判断すると
b.1.1.1.1〜1.1.1.4 のステートメントについてのさらなる考察
2.良い情報とサポートの提供
a.プライマリケアの役割
3.早期に援助を得ること
a.地域摂食障害専門チームでの連携のあり方
4.身体面のマネジメント
5.児童・思春期ケースに対する配慮
6.プライマリケアおよびメンタルヘルス以外のセッティングでの摂食障害の同定とスクリーニング
Part 3 神経性無食欲症(AN)の治療
I プライマリケアにおける神経性無食欲症(AN)の評価とマネジメント
1.体重についての考察
II 神経性無食欲症(AN)の心理的治療
1.ANの心理的治療の共通要素
2.外来での心理的治療
a.治療期間
3.入院治療の心理的側面
4.退院後の心理的治療
a.ケアプログラム−退院後の連携
b.再発マネジメントカード
5.児童・思春期のAN患者に対する配慮
a.さまざまな家族へのアプローチ
III 神経性無食欲症(AN)の薬物療法
IV 神経性無食欲症(AN)の身体管理
1.体重増加の管理
2.リスクの管理
3.患者の意思に反する栄養補給
V 神経性無食欲症(AN)の入院治療
1.デイケア
VI 児童・思春期患者に対する配慮
Part 4 神経性大食症(BN)の治療
I 神経性大食症(BN)の心理的治療
1.Cさんにはどのような治療がベストか−イメージ共有のための症例
2.Cさんにはどのような治療が行われるか−日本の日常診療での選択肢
a.Cさんの行動予測
3.NICEガイドラインではBNに何を勧めているか
4.「心理的治療」の第一段階にあげられるセルフヘルプについて
a.セルフヘルププログラムとは何か
b.セルフヘルププログラムの効果に関する研究結果
c.「ガイデットセルフヘルプ」への発展
5.NICEガイドラインをCさんの治療に生かすとしたら−日本では何ができるか
a.症状の記録,症状モニター
b.動機づけの方法の工夫
動機づけを数値で表す
手紙療法
初診後のフォーミュレーションの手紙を本人に送る
6.NICEガイドラインが推奨する認知行動療法(CBT)とその他の本格的心理療法
a.BNに特化したCBTの位置づけ
b.その他の心理療法
c.摂食障害に特化したCBTとはどのようなものか
d.認知の再構成
e.日本でできること
II 神経性大食症(BN)の薬物療法
III 神経性大食症(BN)の身体面のマネジメント
IV 神経性大食症(BN)の入院治療
V 児童・思春期患者に対して必要な配慮
Part 5 非定型的摂食障害の治療
I 非定型的摂食障害
1.非定型的摂食障害の一般的治療
2.むちゃ食い障害の心理的治療
3.むちゃ食い障害の薬物療法