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パーキンソン病 発症機序に基づく治療

水野 美邦 (著)

株式会社 中外医学社

224 頁  (2017年3月)

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パーキンソン病研究・治療のオーソリティが、約半世紀をかけて積み上げてきた膨大な経験値とパールの数々を、この一冊にコンパクトに凝縮。豊富な自験例の紹介から、治療の考え方、文献レビューなど数多く掲載。

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パーキンソン病治療において最優先されるべきなのは,やはり薬物治療,なかでも発症機序に添った治療薬であるL-ドーパがもっとも有効であること.

それこそが,パーキンソン病診療のオーソリティが辿り着いた結論であった.豊富な自験例の紹介から,治療の考え方,文献レビューまで.約半世紀にわたって積み上げられた貴重な診療体験を凝縮した一冊.


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緒言

本書を上梓したのは現状でのパーキンソン病の治療法が自分のなかで大体かたまってきたからである.iPS細胞は多くの期待を寄せられながらまだ実用化のめどは立たず,深部脳刺激療法も一部の症例では良いが,大部分の症例には使いにくい.それは患者さんの側からみれば,脳を手術することへの恐れであることが多い.医者の目からみても,十分内科的治療を行わずに手術されてしまっている症例が少なくない.手術は多くの例で約10年は効果があるが,その間にも,声が小さくなり何を言っているのかわからない,前ほどではないにしてもウェアリングオフやジスキネジアが出てくる,さらに稀ではあるが認知症を起こしたとみられる症例や,手術をしても少しも良くならない症例にまで手術をされている.このような現実をみるとやはり薬物治療が優先されるべきで,しかもできるだけ症状をとる方向での治療が望ましい.

パーキンソン病の治療には種々の薬物が使用されているが,そのなかでL-ドーパはパーキンソン病症状に最も有効であり,いつまでも効き,副作用も少ない.減少しているドパミンを補うので,最も理にかなった治療である.たくさんの抗パーキンソン病薬のなかで最も有効な薬である.ただ血中濃度の有効時間が約3時間と短いのが難点であるが,最初はドパミンの再利用機構が残っているので,ウェアリングオフは出てこない.しかし,L-ドーパを使用し始めて5年も経つとそろそろウェアリングオフが出てくる.その間にもドパミンニューロンの変性が進むために再利用機構がだんだん失われてウェアリングオフが出てくるので,L-ドーパの副作用というよりは,病気の進行による薬理的な現象とみたほうがよい.ウェアリングオフに少し遅れて出てくるジスキネジアも,シナプスに放出されたドパミンがドパミン再取り込み部位のないセロトニンニューロンの中などで,脱炭酸されて放出されるためではないかと考える.

このように考えるとパーキンソン病の治療においてはL-ドーパをいかに上手に使うかが患者さんの幸せにつながっていると思う.最初は毎食後に100 mgずつでよいが,ウェアリングオフが出てくると,効いている時間に合わせて飲むことが大切になってくる.ウェアリングオフにやや遅れてジスキネジアが出現するが,これもドパミントランスポーターがないセロトニンニューロンなどで,L-ドーパが脱炭酸されたために,シナプス間隙に放出されたドパミンがドパミントランスポーターで取り込まれないため,一過性にシナプス間隙に放出されたドパミンが過剰となって出現すると考えられる.すなわち薬理的現象である.したがって,ジスキネジアが出始めたら,できるだけL-ドーパ服用量を少なくして,飲む回数を増やすしかない.

このような方針で患者さんを治療してきて,最初のときから数えると45年にもなる.最初の頃は紆余曲折もあったが,ここ20年くらいは上記の方針で治療を行っている.その成績を残すことは重要と考え,本書の上梓を思い立った.第1章は自験例498例の治療成績である.意外にジスキネジアの頻度が低かった.これは手前味噌ではあるが,その都度ジスキネジアの出る機序を考えて治療をしてきた結果ではないかと思う.なお本稿での統計処理については,富山大学院医学薬学研究部バイオ統計学・臨床疫学教室の折笠秀樹教授に多大なお世話になった.ここに深甚の謝意を表する次第である.

第2章は,第1章の結果を踏まえ,パーキンソン病患者さんの治療を進めるうえで大切と思われることを自由に書かせていただいた.基本は各自にあったL-ドーパ製剤の飲み方を探すという点である.パーキンソン病には経過があり,それに従ってL-ドーパ製剤の服用量または服用回数を少しずつ増やしていかねばならない.殊にジスキネジアが出てからは,L-ドーパ以外の抗パーキンソン病薬は塩酸アマンタジンを除きすべてジスキネジアを悪化させる可能性があるものと考える必要がある.

第3章は,抗パーキンソン病薬の現状として,主な文献のレビューを行った.これは各抗パーキンソン病薬が,国際的にどういう評価を受けているかを自分で知りたかったことが一因として挙げられる.ここにはたくさんの二重盲検試験を紹介することになったが,対象薬が,対照薬より良い結果になっているものが多い.これは実際その薬を使用した経験とは合わないことが多い.それは1つには,二重盲検試験に選ばれる症例は,典型的な例が多いことによるのではないかと思う.実際の診療では数々の非典型例も対象としなければならない.

パーキンソン病の患者さんは少しでも良い治療を求めて,iPS細胞や遺伝子治療などの情報を求めるが,L-ドーパ治療が最も理にかなった治療法であることを伝えることが大切である.それに従って患者さんの変わりゆく反応を受け止め,治療にも少しずつ変化をもたせることが重要である.本書が,皆さまの外来診療の少しでも助けになれば望外の幸である.


2016年11月吉日

水野 美邦


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1.自験498例の長期成績

はじめに

方法

1 パーキンソン病の診断

2 初診時の対応

3 薬物治療の原則

4 運動症状に対する薬物治療の原則

5 非運動症状に対する治療

6 各症状の半定量的解析

7 推計学的検討

結果

1 総数

2 多変量解析の結果

3 発症からの年数別解析

4 発症年齢別解析

考察

まとめ

文献

2.発症機序に基づく治療の進め方

運動症状に対する治療の進め方

1 治療の進め方基本

2 不安の解消

3 パーキンソン病の原因

4 初期の治療,何を使うか

5 L-ドーパ製剤の用量

6 L-ドーパ製剤の飲み方の変更―食前投与

7 MAOB阻害薬またはドパミンアゴニストで治療を始める場合

8 それ以外の薬物で治療を始める場合

9 L-ドーパの効果不十分

10 ウェアリングオフとジスキネジアの発現機序

11 ウェアリングオフの治療: L-ドーパ製剤の頻回投与

12 ウェアリングオフの治療: 他の薬物を併用する場合

13 ジスキネジアが出た場合の処置

14 すくみ足が出た場合の対応

非運動症状に対する治療の進め方

1 自律神経症状

2 感覚障害

3 睡眠障害

4 覚醒障害

5 不安状態

6 鬱状態

7 疲労

8 行動抑制障害

9 精神症状

10 認知症

日常生活での注意

1 家に帰ると急に引きずり歩行になる

2 1日10分歩く練習をする

3 2つのことを同時にやると転倒することがある

4 パーキンソン病ではやっていけないことはない

5 外に見聞にでかけよう

3.パーキンソン病治療薬の現状

L-ドーパ

抗コリン薬

モノアミン酸化酵素B阻害薬

1 セレギリン塩酸塩

2 ラザベミド

3 ラサギリン

ドパミンアゴニスト

1 プラミペキソール

2 ロピニロール

3 ロチゴチン

4 アポモルヒネ

アマンタジン塩酸塩

カテコール-O-メチル転移酵素阻害薬

1 エンタカポン

2 その他のカテコール-O-メチル転移酵素阻害薬

ゾニサミド

イストラデフィリン

サフィナミド


まとめ

索引

特記事項

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