未来型血液治療学

  • ページ数 : 254頁
  • 書籍発行日 : 2019年10月
  • 電子版発売日 : 2019年10月4日
¥4,840(税込)
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商品情報

内容

今と未来を眺めることで血液治療学のすべてがわかる!

常に知識のアップデートが求められる血液内科領域において,血液治療に特化した内容で各分野のエキスパートが現時点での最新治療を紹介する.さらに本書の特長として,近未来の治療薬や治療法を紹介する『未来への展望』を設けた.エキスパートたちの未来の血液治療学に対する期待や思いに触れることで,魅力的でエキサイティングな血液内科の世界を感じ取ることができるだろう.“キング・オブ・ドクター”である血液内科医の真髄がここにある.

序文

このたび,私が会長を務める第81回日本血液学会学術集会(2019年10月開催)に合わせる形で「未来型血液治療学」を発刊することとなった.学生の頃,慢性骨髄性白血病の10年生存率はわずか10%程度であったが,チロシンキナーゼ阻害薬の登場によって今や10年生存率は90%と治療成績は著しく向上している.同様の傾向は,多発性骨髄腫や悪性リンパ腫などの分野にも広がりをみせている.

このように血液領域の治療は日進月歩の進歩を遂げていることから,血液内科医への最新情報提供という目的はもとより,血液内科医を目指し日夜勉強に励んでいる研修医の先生方に血液学の魅力をお伝えしたいとの思いから,今回このような斬新な本の編集をさせていただいた.タイトルからも了然としている通り,まさに治療に特化した内容であり,さらには最新の治療法の紹介に加え,近未来の治療薬や治療法を紹介する「未来への展望」というコーナーを新たに設けた.

血液学の領域は診断から治療まで全てのプロセスに関わることができる唯一の診療科である.したがって血液内科医は基礎的な知識と臨床的な知識を併せ持つ,いわゆる"Physician scientist"でなければならないが,と同時に高いコミュニケーション能力を持つことが要求される.そういう意味で私は,陸上の10種競技の勝者である"キング・オブ・アスリート"になぞらえて血液内科医は"キング・オブ・ドクター"であるとの高い誇りを持っている.ただ現状を顧みれば,残念ながら全国的にみても血液内科医を目指して教室に入局してくる研修医は少ない.この本を通し,読者の方々が感じ取った近未来の血液学がどんなにエキサイティングで魅力的な領域であるのか,研修医の先生方に熱く伝えていただければ,"キング・オブ・ドクター"としての血液内科医を目指す医師は確実に増えると信じている.

先に述べた「未来への展望」のコーナーでは,各執筆者の先生方に,「今後の血液治療学に対し大きな期待を込めた内容で」と非常に難しい課題を課してしまった.多忙な先生ばかりで,大変なご負担をおかけすることとなったが,私の勝手な要望に応えていただき,各領域の第一線で活躍している先生方の個性と血液学の未来に対する真摯な思いが随所に表れており,非常に読み応えのある内容となった.編者として心から満足している. 最後に,快く執筆してくださった先生方,このような貴重な編集の機会をくださり,編集にあたって貴重なご助言をいただいた中外医学社の桂 彰吾氏と高橋洋一氏にこの場を借りて深謝したい.


令和元年9月 教授室から

小松 則夫

目次

1章 赤血球系疾患

A 鉄欠乏性貧血

1.鉄欠乏性貧血の病態

2.鉄欠乏性貧血の診断

3.鉄欠乏性貧血の治療方針

A.経口鉄治療

B.鉄静注療法

未来への展望

1.鉄欠乏性貧血に対する新たな治療選択肢

2.鉄欠乏性貧血の分子病態研究に関する今後の展望

B 再生不良性貧血

1.輸血の回避を目指したシクロスポリン療法

2.CsA投与のコツ

3.輸血からの離脱を目指したATG療法

4.ATG+CsA療法の実際

5.未治療例に対するEPAGの併用

6.免疫抑制療法不応例に対するEPAG

7.第2のTPO受容体作動薬

未来への展望

1.期待されるこれからの再生不良性貧血診療

 A.早期診断技術の開発

 B.ATG+CsA+ROMI

 C.ATGを使用しない薬物療法

 D.iPS細胞由来血小板

C 赤芽球癆

1.概念

2.病因・病態・分類

3.疫学

4.診断

A.急性型と慢性型の診断

B.病因の診断

C.後天性慢性赤芽球癆の鑑別診断

5.治療

A.初期治療

B.病因別治療

C.胸腺腫関連赤芽球癆

D.大顆粒リンパ球性白血病関連赤芽球癆

E.悪性リンパ腫

F.持続性HPV-B19感染症

G.ABO major不適合同種造血幹細胞移植

H.免疫抑制療法

I.再発・難治例の治療

6.予後

未来への展望

1.現在進行中の研究

 A.後天性慢性赤芽球癆の長期予後に関する前向き観察研究(PRCA2016)

 B.次世代シーケンシングによる再発・難治性後天性赤芽球癆の診断と治療に関する研究

  (PRCA-NGS2017)

2.今後の展望

D 自己免疫性溶血性貧血

1.自己免疫性溶血性貧血の治療

2.特発性温式AIHAに対する標準治療法

A.ステロイド治療不応時の治療法:第2選択治療

B.輸血療法

3.CADの治療

未来への展望

1.温式AIHAに対する新規治療薬

 A.C1エラスターゼ阻害薬(C1-INH)

 B.抗CD20モノクローナル抗体

 C.シロリムス

 D.ボルテゾミブ

 E.ホスタマチニブ

 F.FcRn阻害薬

 G.C3阻害薬

2.CADに対する新規治療薬

 A.ボルテゾミブ

 B.エクリズマブ

 C.抗C1s抗体

 D.C3阻害薬

E 発作性夜間ヘモグロビン尿症

1.発作性夜間ヘモグロビン尿症の病態

2.PNHの治療

3.抗C5抗体エクリズマブの効果

4.エクリズマブの課題

A.髄膜炎菌感染症とその対策

B.血管外溶血

C.C5遺伝子多型によるエクリズマブ不応症

未来への展望

1.新規治療薬の開発

2.今後の展望

F 遺伝性球状赤血球症とサラセミア

1.遺伝性球状赤血球症

A.病態

B.誤診しやすい疾患とその鑑別のポイント

C.治療

2.サラセミア

A.病態

B.治療

未来への展望

1.遺伝性球状赤血球症に対する部分脾臓摘出術

2.重症型サラセミアに対する遺伝子治療

G 腎性貧血

1.腎EPO産生細胞:REP細胞

2.REP細胞の性質:可逆的と非可逆的形質転換とEPO産生

3.腎性貧血の治療:EPOの補充療法

未来への展望

1.経口腎性貧血治療薬:PHD阻害薬

2.腎臓以外からEPOを誘導する:GATA阻害薬

2章 骨髄系疾患

A 急性骨髄性白血病

1.初発AML患者に対する標準的治療

A.寛解導入療法

B.寛解後療法

2.unfit AMLに対する治療

未来への展望

1.今後期待されるAMLに対する治療戦略

 A.分子病態に基づく予後層別化

 B.AMLに対する新規治療薬

B 急性前骨髄球性白血病

1.急性前骨髄球性白血病

2.初発寛解導入療法

3.初発ATRA併用化学療法による寛解後の地固め療法

4.初発寛解例に対する維持療法

未来への展望

1.2018〜2019での報告

 A.経口ATO

 B.超高齢者APL

 C.ATOの上乗せ効果

 D.経口ヒ素

 E.ATRAの必要性

2.現在進行中の臨床試験

C 骨髄異形成症候群

1.治療の現状

A.リスク層別化

B.低リスクへの治療

C.高リスク例への治療

未来への展望

1.現在の臨床試験と将来の展望

D 慢性骨髄性白血病

1.CML治療の進歩

2.治療効果と臨床的意義

3.第1世代TKI vs. 第2世代TKI

4.TKI中止の試み

未来への展望

1.CML治療の未来 ─夢─

E 真性赤血球増加症

1.治療方針

2.リスク評価と治療のアルゴリズム

3.PVに対する薬物療法

A.アスピリン

B.抗凝固薬

C.ハイドロキシウレア

D.ルキソリチニブ

未来への展望

1.IFNの作用

 A.PVに対するIFN治療

 B.IFN治療の課題

 C.IFNの治療効果を高めるための戦略

F 本態性血小板血症

1.治療目標

2.薬物療法の実際

A.低用量アスピリン(バイアスピリンⓇ)

B.ハイドロキシウレア(ハイドレアⓇ)

C.アナグレリド(アグリリンⓇ)

未来への展望

1.インターフェロン(IFN)

2.徐放型アナグレリド

3.現在進行中の臨床試験

4.非薬物療法

G 原発性骨髄線維症

1.PMF治療の実際

A.治療方針の考え方

B.無症候性の低リスク・中間-1リスク群の治療

C.PMFに伴う貧血の治療

D.PMFに伴う脾腫に対する治療

E.PMFの根治を目指す治療:同種造血幹細胞移植

未来への展望

1.PMFの未来型治療

 A.クリニカルシークエンス導入による高リスク群の選別

 B.JAK2阻害薬の同種造血幹細胞移植前治療への組み込み

 C.PMFに対する新規薬剤

H 好酸球増多症候群・慢性好酸球性白血病

1.原発性HES /CELの治療

A.M-HESの治療

B.CEL,NOSの治療

C.家族性HESに対する治療

2.二次性HES: lymphoid HES(L-HES)に対する治療

3.特発性HESの治療

A.従来行われてきた治療

B.HESには未承認だが期待される既存の生物学的製剤

C.好酸球数減少効果のある経口低分子化合物:デクスプラミペキソール

未来への展望

1.未来型HESの診断と治療

3章 リンパ系疾患

A 急性リンパ性白血病

1.急性リンパ性白血病の現時点での達成

A.CRとMRD

B.新規薬剤

C.6MPのオーダーメイド医療

未来への展望

B 慢性リンパ性白血病

1.診断

2.治療の適応

3.治療法の選択

4.初回治療

A.fitの場合

B.unfitの場合

未来への展望

1.CLLの治療が目指すもの

A.分子標的薬

B.イブルチニブ

C.MRD陰性化と治癒

C ホジキンリンパ腫

1.ホジキンリンパ腫:どうして限局期と進行期が分けられて開発されたか

2.限局期ホジキンリンパ腫の現時点での標準療法と課題

3.進行期ホジキンリンパ腫の現時点での標準療法と課題

4.新規薬剤を用いたホジキンリンパ腫の治療開発の現況

未来への展望

1.ホジキンリンパ腫の未来型治療

 A.ホジキンリンパ腫の再分類

 B.ホジキンリンパ腫の予後予測

 C.患者意見を取り入れた治療開発

D びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

1.治療(治療アルゴリズム)

A.初発限局早期DLBCL

B.初発進行期DLBCL

未来への展望

1.R-CHOP療法を越える新たな治療法の開発

 A.強化化学療法

 B.COOに基づく新規治療薬

 C.細胞療法

 D.DLBCL治療の未来

E 濾胞性リンパ腫

1.濾胞性リンパ腫とは?

2.組織診断・臨床病期診断がついたらすぐ治療を開始すべきか?

3.FLの予後推定は?

4.治療介入時にどんなレジメンを選択するか?

未来への展望

1.FLに対する新規治療

F MALTリンパ腫

1.MALTリンパ腫治療の現状

A.MALTリンパ腫とは

B.初回治療

未来への展望

1.MALTリンパ腫治療の今後の展望

 A.主な臨床試験

 B.再発MALTリンパ腫の今後の治療

G 成人T細胞白血病・リンパ腫

1.ATLの臨床病態と予後

2.ATL薬物治療の現状

A.化学療法

B.同種造血幹細胞移植術

C.抗ウイルス療法

D.新規薬剤(分子標的薬を中心に)

未来への展望

1.新規治療開発

 A.免疫療法

 B.新規分子標的治療薬の開発

H NK/T細胞リンパ腫

1.現在の治療方針

A.I期および鼻腔〜頸部リンパ節浸潤までのII期ENKLの初回治療方針

B.A以外のENKLに対する初回治療方針

C.再発または難治ENKLに対する治療方針

未来への展望

1.ENKL治療の未来

 A.ENKL診断の迅速化

 B.限局期治療の標準化

 C.新規治療薬の導入

 D.放射線治療のさらなる進歩

 E.細胞免疫療法

I 多発性骨髄腫

1.多発性骨髄腫の治療の現状は

2.MRD評価とこれを用いた治療戦略

未来への展望

1.近未来の多発性骨髄腫の治療は

 A.寛解導入療法は

 B.サルベージ療法は

2.CAR-T療法の現在

3.多発性骨髄腫治療の問題点

J 原発性マクログロブリン血症

1.原発性マクログロブリン血症とは?

2.WMの治療指針

3.WM/LPLにおけるMYD88とCXCR4遺伝子変異

未来への展望

1.WM/LPLに対する期待される新規治療

K 慢性活動性EBウイルス感染症

1.歴史と疫学

2.臨床像

3.診断

A.抗体検査

B.EBV-DNA定量検査

C.感染細胞の同定

4.治療法

未来への展望

1.病態解明と予後の改善に向けて

 A.発症機構解明の試み

 B.治療法の開発

 C.今後の展望

4章 血小板・凝固線溶系疾患

A 特発性血小板減少性紫斑病

1.従来のITPの治療

2.治療参照ガイドの改訂:2nd Line治療の変更

未来への展望

1.現在の治療の問題点と近未来のITP治療の展望

 A.特異的診断法の開発

 B.新規発症ITPの初回治療成績の向上

 C.2nd Line治療の選択基準の確立

 D.難治性ITPに対する治療法の開発

B 血栓性血小板減少性紫斑病

1.TTPの病態

2.後天性TTPの診断

3.後天性TTPの治療

未来への展望

1.後天性TTP治療の課題と新規治療薬

 A.発症早期の致死的な血栓症

 B.難治例,早期再発例

 C.高い再発率

C von Willebrand病

1.von Willebrand病について

2.VWF補充療法

3.デスモプレシン(DDAVP)

4.その他の補助療法・特殊な状況における治療

未来への展望

1.遺伝子組換えVWF製剤

2.遺伝子治療

D 血友病A・B

1.血友病治療の現状

A.血友病治療の現状

B.凝固因子製剤の進化

C.第VIII因子/第IX因子製剤による補充療法の課題

D.第VIII因子代替バイスペシフィック抗体の概要

E.エミシズマブによる新たな血友病Aの治療概念

未来への展望

1.非凝固因子製剤の開発と展望

 A.抗ATsiRNA製剤

 B.抗TFPI抗体製剤

2.遺伝子治療

 A.血友病Bの遺伝子治療臨床研究の実際

 B.血友病Aの遺伝子治療臨床研究の動向

 C.遺伝子治療の課題

E 播種性血管内凝固

1.DIC治療の変遷

2.現在のDIC治療

未来への展望

1.未来のDIC治療

 A.補充療法

 B.生理的プロテアーゼ阻害薬(PPI)

 C.抗凝固療法

F 先天性血栓性素因

1.成因

2.病態生理

3.疫学

4.診断

5.治療

未来への展望

1.内因系凝固反応を介した病的血栓増幅メカニズム

2.新たな抗血栓薬ターゲットとしての第Ⅺ因子,第Ⅻ因子


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書籍情報

  • ISBN:9784498225183
  • ページ数:254頁
  • 書籍発行日:2019年10月
  • 電子版発売日:2019年10月4日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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