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絶対成功する腎不全・PD診療 TRC(Total Renal Care)

石橋 由孝 (監修・編著)

株式会社 中外医学社

210 頁  (2016年6月)

Android 対応製品 iOS/iPhoneOS対応製品

eBook Price(ダウンロード販売): ¥3,888 (税込) 

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リリース日: 2017年05月26日

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腎不全・PD診療の神髄!

慢性腎不全患者の長期生存が現実となった今、医療者はいかにして患者のQOLを高めるための支援を行うべきか。治療を通じて人生を形作る医療とは。心理学・看護学はもちろん、哲学・生死学などの研究者の協力を得て、本邦初の学際的な試みがここに結実。

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医療技術の驚異的な進歩によって,慢性腎不全患者の長期生存が現実となったいま,医療者には,身体面の治療のみならず,患者のQL(Quality of Life)を高めるための支援が求められている.本書では,患者の精神心理・社会生活面を支援するためのTotal Renal Care(全人的・総合的腎疾患医療アプローチ)の実践と考え方を解説した.心理学・看護学はもちろん,哲学・死生学などの研究者の協力を得て,本邦初の学際的試みがここに結実!


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巻頭言

本書は『腹膜透析ハンドブック』の姉妹書である.前著が身体面の技術中心であったのに対して,本書は主に患者および支援者の精神心理・社会生活面の支援法が中心である.


はじめに本書を上梓した背景について述べる.わが国における医療技術の進歩には目を見張るものがあり,腎臓内科の分野においても同様である.透析や移植の技術的な完成度が高くなったため,慢性腎不全患者は末期腎不全に至ったあとも長期生存が可能になった.慢性腎不全患者は,腎症の早期にまで遡ると数十年にもおよぶ腎疾患ライフを過ごされる.こうなると,私たち医師に求められることは,身体面の治療技術提供は当然のことながら,患者の生活の質を高めるための支援をすることが重要になる.しかも,長期間各々の日常の活動範囲に合わせて医療システムとしてみることが必要である.

本書ではこうした背景から身体技術面の記述は必要最小限にとどめ(これについては姉妹書などに譲りたい),主に末期腎不全ライフを生きる患者の精神心理・社会生活面を含めた診療の視点を述べることを目的とした.

昨今の医療現場では,ガイドライン(身体面中心である)を学び,実践することが必要とされるが,個別の人間をみる場合に決して十分とは言えないであろう.特に腎代替療法の導入の実際の局面においてはそのことがクローズアップされるように思う.まだ経験の浅い若手医師も,ガイドラインに記載されていることはいとも簡単に修得し,さして困ることはないようである.これはどちらかというと部品の修理に近いところがあり,マニュアルがあれば対処可能で近代産業でお馴染みのオートメーションに近いと言える.ところがいざ実際に,若手医師が慢性腎不全患者の診療,特に腎代替療法選択プロセスを実践しようとすると事情が変わり,時に患者と対立して困惑してしまうことも少なくない.

考えてみれば,人生経験の少ない若手医師が,突然社会の大海原に投げ出されて,病いの経験を持つ個別の人間をみることになるわけである.若手医師は,成功や失敗を繰り返しながら,やがて経験とともに患者の満足度を高めていくが(なかには疲弊してしまう人もいるかもしれない),高い技術を身につけるには相当の時間を要すものと思われる.先輩医師も経験で身につけた技術を概念化して伝えないと培った技術は結局流されてしまい,現場は同じ状況の繰り返しから脱却できないことになるであろう.

身体面中心のガイドラインのように一律なものを作り上げるところまでには至らなくても(その必要はそもそもない),個別の人間のみかた・困難に直面した時に,どのようなプロセスを辿り,どのような考え方で診療を行えばよいのか.ある程度共通の視点を示すことができれば,若手医師の上達が早いだろうし,結果として腎不全医療の質も早く広く向上すると思うのである.

大海で迷った時には,原点に立ち返り,羅針盤を頼りに前に進むことが大事なように,慢性疾患の新たな医療モデルの創造期と言える今,原理に立ち返って考えてみることが必要だと思う.「善く生きる」という主題には,哲学が役に立つと思う.哲学というと難解に思うかもしれないが,ギリシアでフィロソフィーという言葉が最初に使われた時には実践的認識のことであったようである.原理的な考え方を身につけると,単なるハウツーでなく,個別の実践の場面でも応用がきくようになるだろう.


医療の進歩を考える時,真理は実践の場にある.故に,学と実践を行き来し続けることが重要である.慢性疾患であり善く生きることを支援するという観点から,実践は「病院と地域一体型」,学は「医療と文系の連携」を重視し,これらの考えに理解・共感を示していただいた先生方に執筆をお願いした.

1章は,全人的・総合的腎疾患医療アプローチ(Total Renal Care)の概念について,私が記載した.

2章では,腎不全患者さんの典型例をとりあげた.現時点で読者の皆さんはどのように診療していかれるであろうか.

3〜6章は,実践から理論へ進むことを意識して構成した.各章のはじめに総論を設けた.

3章では,PD診療の身体管理の重要ポイントといえる感染と体液(食塩)に絞り解説した.

4章では,疾患ライフの受容段階というものさしと,それに基づいたアプローチについて解説した.

患者教育というと医療者が一方的に知識を提供するものと思うかもしれないが,それだけでは実際にはうまくいかないことも多いであろう.そのような教育のみであれば,コンピューターなどの機械に任せたほうが効果的かもしれない(精度高く何度も繰り返し教えてくれる).疾患ライフの向き合い方に応じて認知行動療法の手法が異なることをみていただければと思う.強調すべきは,慢性腎不全患者をみる時には「(長い)時間のものさし」と「人は変化する」という視点を意識してほしいことである.この分野の権威の一人でもある武藤崇先生にご指導頂いた.

しかし,現実には容易に状況の改善しない患者さんも多いことであろう.「自己管理」が治療の要である慢性腎臓病であるが,みかたを変えると,一向に「自己管理」に向かえない人をどう見るのか,が主題化されてくる.診療経験上,幼少期からのプロセスに傷を負っていると思える腎不全患者さんにそのような経過をたどる方が多いと感じられたため,児童虐待の現場で長年にわたりフィールドワークをされていた哲学者であり教育者でもある大塚類先生に,腎不全の医療現場に1年ほど参加していただいた.現代社会病理の抱える諸問題が根底にあり一朝一夕に解決することではないが,少なくともこのような視点を知ることにより,「ダメな患者さん」というレッテル貼りにとどまっている現状(結構多いかもしれない)に示唆を与えてくれることと思う.大塚先生は,「問わず語り」として語らせる場を設けることが重要と強調され,私も全くその通りだと思う.

これらは看護師,栄養士,臨床心理士,運動療法士など多職種のチーム医療が重要となるが,上記の個別性をみる視点を共有して,病院システムとして動かしていくことが最終的には重要である.まずは何より医師が実践していくことが大事であり,医師単独で行う場合の診療のポイントおよび当院でのシステム化に向けて注力した点について概説した.

5章では,腎不全ライフの最大のターニングポイントとも言える腎代替療法選択の考え方について,当院の実践から理論にバトンタッチする形で記述されている.

6章では,高齢者をめぐる問題について述べた.高齢化のトップランナーと言える日本は,高齢者腎不全医療においても世界に範を示す責任がある.基幹病院および地域での実践を提示した上で,高齢患者さんの特徴について,主に身体面に関して東大死生学講座の会田薫子先生,支援者を含めた心理や医療連携の視点を東大看護学部の山本則子先生,意思決定や家族との関係性調整の視点を東大死生学講座の清水哲郎先生,さらにアジアとの交流などグローバルな視点で個をみる高齢者医療のシステム化に取り組まれている祐ホームクリニックの武藤真祐先生にご執筆いただいた.

終章では,「個のみかた」について,20世紀に発展した哲学の一分野である現象学の視点を現場実践に生かす形で榊原哲也先生に執筆していただいた.ハウツーではなく,原理を知ると応用がきくと思う.

これら全体をふまえて最後に,実践に直結すると思われる資料集をつけた.日々取り組む上で参考にして頂ければ幸いである.


本書は,私が日本赤十字社医療センターに異動した2012年より構想していたが,この本の構想・執筆および編集作業の過程において,同センター腎臓内科の上條由佳先生と臨床心理士の藤本志乃さんに協力していただいた.

中外医学社の五月女さん・上村さんには,前著にひきつづき今回もタイトスケジュールの中でご尽力いただいた.

最後に,この本の執筆にご協力いただいた先生方はもとより,これまで出会ったすべての人のおかげと心から感謝したい.将来Made in JapanのTRCの腎不全医療が世界の模範となることを目指してさらに精進していきたい.

本書は,先人の智慧を腎不全の医療現場に導入したトライアルの初版であり,不十分な点や視点が欠落しているところも多々あると思う.第一歩を踏出すことが大事だと考えていたので,この時期に上梓することができて執筆代表者としてほっとしている.読者の皆様からの忌憚のない御意見を賜りながら本書をブラッシュアップして腎不全医療の進歩に貢献していくことができれば誠に幸いである.


2016年5月

石橋 由孝


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1章 全人的・総合的腎疾患医療アプローチ

死の受容から生の受容

慢性疾患の診療に必要な医療者の視点

人間の個別性

絶望の淵から人生の価値へ

腎代替療法選択―人生の目標を言葉にする

死に行く人の視点

全人的・総合的腎疾患医療(Total Renal Care: TRC)

2章 こんな患者さん,あなたならどう介入しますか?

3章 PD診療のポイント

1.総論

身体的管理のポイント

PD 離脱原因

2.腹膜炎予防の考え方

① 腹膜炎予防の考え方

腹膜炎制御の重要性―腹膜保護の観点から

原因からみた腹膜炎予防

PDCA を通した当院の腹膜炎予防実践

② 出口部ケアの考え方

① 急性期―A.テンコフカテーテル挿入周術期の管理

① 急性期―B.感染合併時の出口部管理

② 慢性期―C.維持期のケア

3.体液管理

① 食塩制限の重要性

PD 患者における体液管理の現状と重要性

体液管理の対策

*食事制限を実生活になじませるまで―患者と家族の手記から

患者(70代男性)の手記

家族の手記

② 体液管理のための食事療法の実際―奪うのではなく人生の楽しみを引き出す栄養指導

味付けを1 品のみにする!

副菜は食塩の少ない調味料や薬味を利用して美味しく食べる!

減塩の達人に聞こう!

腎臓食で旅行!

4章 患者教育(自己管理)

1.総論

慢性期腎疾患の診療―なぜ透析患者さんは難しいのか?

急性期疾患と慢性期疾患の視点の違い

PD 患者の2 つのカテゴリー

2.心理面

① 受容段階

慢性疾患の受容段階

実臨床での使用方法

症例

② 疾患受容が進まない背景を探る―自己語りという観点から

はじめに―自分を大切にできない子どもたち

受容「しない」のではなく受容「できない」

語ることでしか自己は変化しない

おわりに―「問わず語り」を引き出すために

3.患者指導のポイント

何のために,誰に,何を伝えるか?

誰に教えるか?

患者教育をする人は?

患者教育のポイント

何を教えるか?―インストラクションする技能の種類

患者教育プログラムの作り方と評価

4.減塩指導のポイント

食塩管理とは

栄養指導の実際

5.診療のポイント

自立可能な患者: 受容段階が進んでいない場合の問診のポイント

自立可能な患者: 受容段階が進んでいる場合の問診のポイント

要支援患者

6.院内システムの構築

PD診療システム―当院のシステム構築を例に

5章 療法選択

1.総論

我が国の腎代替療法選択

療法選択とは

Narrative-basedmedicine(ナラティブ・ベイスト・メディスン)

ダイナミックな腎代替療法選択プロセス

2.実践

医療者の役割は「意思決定支援」

意思決定のための支援方法

医療者間での情報共有

3.高齢者の療法選択

① フレイルの知見を臨床に活かす

フレイル―高齢者医療とケアの新たな視点

ストレッサーへの脆弱性

透析療法の適否の判断―年齢ではなくフレイルを参照

透析療法の意思決定支援ツール

② 高齢者ケアに必要な視点―人間における倫理の成り立ち《皆一緒》と《人それぞれ》のブレンド

《皆一緒》と《人それぞれ》の並存

現在の結果から遡って,歴史的経緯を推測すると

医療従事者-患者・家族関係における《皆一緒》と《人それぞれ》

質の高い《人間尊重》へ

臨床倫理の基礎となる考え方

6章 高齢者

1.総論

2.基幹病院の実践

基幹病院の役割

高齢者PD の実践

3.その人らしく在宅生活を送るために―退院支援に必要なこと

対象

結果と考察

おわりに

4.サルコペニアを中心とした高齢者の低栄養・身体機能低下

高齢者の加齢に伴う身体機能低下

高齢者CKD特有の病態

高齢CKD 患者の低栄養

サルコペニアの病態

サルコペニアの治療戦略

5.高齢者の心理と介護の問題について

6.地域高齢社会の先進国モデル

超高齢社会に求められる医療

在宅医療を通じた高齢社会への取り組み

ICT を活用した医療介護の情報連携

シンガポールにおける在宅医療・介護の展開

終章 医療現象学―個別化医療に必要な視点

はじめに

疾患と病い

患者の個別性を理解するための現象学的視点

個別化医療の目標としての「安らぎ」

まとめ

資料集

資料1 救急外来腹膜炎対応マニュアル

資料2 出口部ケアシート

資料3 受容段階ワークシート

資料4 食事記録表

資料5 診療ワークシート

資料6 PDカンファランスシート

資料7 療法選択ワークシート

資料8 高齢者用ワークシート


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