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生命をつなぐドパミンの物語 抗精神病薬の薬理から

長嶺 敬彦 (著)

株式会社 中外医学社

182 頁  (2012年12月)

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eBook Price(ダウンロード販売): ¥2,808 (税込) 

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リリース日: 2013年08月30日

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抗精神病薬が主にドパミン神経系に作用して治療効果を生じさせていることは広く知られている。そのドパミン神経系は、人間の行動を決定するにあたって、様々な神経系の中でも中心的な役割を果たすものであるが、全貌はいまだ解明されていない。本書では、そのドパミンの謎に、日々の臨床で観察される抗精神病薬の作用と、精神薬理学の知見から迫る。ドパミンの物語に耳を傾ければ、抗精神病薬の正しい使い方が見えてくる。

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抗精神病薬が主にドパミン神経系に作用して治療効果を生じさせていることは広く知られている.そのドパミン神経系は,人間の行動を決定するにあたって,様々な神経系の中でも中心的な役割を果たすものであるが,全貌はいまだ解明されていない.本書では,そのドパミンの謎に,日々の臨床で観察される抗精神病薬の作用と,精神薬理学の知見から迫る.ドパミンの物語に耳を傾ければ,抗精神病薬の正しい使い方が見えてくる.


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刊行にあたり

心はどこにあるのでしょうか.脳の中でしょうか.わかっていることは「脳は休みなく神経伝達を行っている」ということだけです.そしてその結果,わたしたちは日々ものを考え,行動しています.

わたしたちの脳には,さまざまな神経回路と神経伝達物質があります.

そのうちドパミン神経系は,わたしたちの行動を決定する中心的な神経回路です.ドパミン(dopamine)という分子量わずか153.2 の物質がわたしたちの感情や行動を制御しています. もちろんドパミンが脳の中でどのような仕事をしているのか,その全貌は解明されていません.しかしドパミン神経系に作用する抗精神病薬の半世紀以上にわたる歴史から,ドパミンがわたしたちの精神機能に直接的な影響を与えていることは明白です.

脳科学や精神薬理学の進歩は,精神機能を少しずつ解明しています.しかし実はわからないことのほうが多いのです.ドパミン神経系の詳細はわかっていないことを踏まえた上で,現時点でのドパミン神経系の仕事ぶりを見てみたいのです.なぜならドパミン神経系はわたしたちの生命をつなぐ役割をはたしていると感じるからです.

精神薬理学を内科学の知識で読み解き,精神科臨床に応用する医学の一分野をPIM(Psychiatric Internal Medicine)といいます.最先端の精神薬理学と内科学を同じ土俵で議論する試みです.PIM は精神と身体をつなぐ現象を道標として,一歩一歩山を登ります.山頂にあるのは「心」です.その景色を見たくて,わたしは毎日研究しています.この分野の研究者は非常に少ないです.本書が多くの人の目にとまり,この分野に興味をもたれる方が一人でも増えることを願っています.

心はどうして生まれるのでしょう.不思議です.この不思議な感覚をドパミン神経系の仕事ぶりや精神科臨床で観察される抗精神病薬の作用を通して,みなさんと共有できればと思います.


2012年 10月

長嶺敬彦


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Part 1 プロローグ

A.ドパミンとの再会

B.構造生物学は進歩したが,ドパミン受容体の動的立体構造は解明されていない

Part 2 只者ではないドパミンの仕事ぶり─ドパミンはサリエンスを媒介する─

A.生命を救うドパミン

B.次なる一手─冷や汗が出る場面では「直観」に助けられる

C.忘れられないバナナの味

D.ドパミン神経細胞は意外と少ない

E.ドパミンの原始的な役割

F.恋は盲目?

G.A10をインチキして自分で刺激すれば依存が形成される

H.危険察知と不安の中枢である扁桃体はドパミン神経系で制御されている

I.幸福感には2つあり,A10のドパミンはオキシトシンを分泌する

J.ドパミンはプロラクチンを制御する

K.夢に関するHobsonの立方体モデルとドパミン

L.ドパミンはさまざまなサリエント機能を媒介する

Part 3 意思決定での神経回路とドパミン

A.意思決定の基本は何か

B.個のレベルの意思決定(1)─基礎的意思決定

C.個のレベルの意思決定(2)─反転学習

D.人間はなぜ強いのか─社会脳の発達

E.種のレベルの意思決定(1)─心の理論

F.種のレベルの意思決定(2)─利他的行動

G.うつ病とドパミン

H.社会の中での人間の行動を決定する脳機構

I.空の旅は社会の縮図

J.言語と地域社会

K.SNSがなぜもてはやされるのか─人は自分について語るとき幸せである─

Part 4 もっとも売れている薬は何?

A.薬の開発には労力がかかる

B.抗精神病薬はもっとも売れている薬だが,不適切な使用も多い

C.抗精神病薬の作用点としての神経遮断受容体

D.抗精神病薬の主たる薬理作用はドパミンを遮断することである

Part 5 脳内の4つのドパミン神経系と統合失調症の病態仮説

A.4つのドパミン神経系

B.血液脳関門

C.ドパミンと統合失調症の病態仮説

Part 6 抗精神病薬の副作用を概括する

A.薬の種類で抗精神病薬の効果はほぼ同等

B.薬の種類で抗精神病薬の副作用のパターンは異なる

C.抗精神病薬の副作用にはどのようなものがあるのか

D.コインの表と裏

E.「質」に関する副作用は「臨床的受容体プロフィール」で予測できる

F.抗精神病薬は減薬するときも副作用に注意する必要がある

G.離脱では臨床的に3つの症状群に注意する必要がある

H.Aripiprazoleと過敏性精神病

I.抗精神病薬の効果を最大にするには─「用量反応関係」という土俵で検討するとよい─

J.至適最小用量はわかりにくいので変動幅を考える

K.徐放化製剤の利点

L.持続的にドパミンを遮断すると脳容積は低下する

M.抗精神病薬の副作用回避の重要性

Part 7 非定型抗精神病薬は一部ドパミン伝達を行う?─アゴニストとは何かを再考する─

A.抗精神病薬は精神疾患患者に福音をもたらす

B.非定型抗精神病薬の薬理学的根拠のあいまいさ

C.「鍵と鍵穴」モデルの誤解

D.鍵穴はいい加減である

E.ドパミンと抗精神病薬の違い

F.薬理学ではアゴニストの反対はアンタゴニストではない

G.抗精神病薬の共通の性質はドパミンブロッカーである

H.定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の線引きは何か

I.アゴニスト作用はサッカーゴールにボールを蹴り入れるようなもの

J.Blonanserinの非定型性はG蛋白の微弱な活性化ではないか

K.純粋なアゴニストは創薬では危険である

L.グルタミン酸仮説とドパミンの関係

Part 8 精神疾患の意味論

A.精神疾患と創造性

B.創造性には感覚の連動が関与する?

C.共感覚

D.共感覚は異常な世界ではない

E.共感覚と言語

F.共感覚は神経回路の刈り込みと関連する可能性がある

G.神経回路はミクロのレベルでも驚くほど精密に形成されている

H.クラスター入力は不要なシナプスが刈り込まれることで可能になる

I.神経細胞の刈り込みはGABAが制御している

J.神経回路の形成は機能的で美しい

K.ドパミンは未来をつくる

Part 9 エピローグ

A.我慢とドパミン

B.リサーチマインドとドパミン

C.山火事を消すと山火事が起こりやすくなる?

D.心はどこにある

E.ノーベル賞

謝辞

索引

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