認知症診療Q&A92

  • ページ数 : 308頁
  • 書籍発行日 : 2012年5月
  • 電子版発売日 : 2013年2月22日
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商品情報

内容

認知症の診断・鑑別診断、そして治療に際し、日常的に遭遇する疑問について、この領域の専門家が回答するQ&A形式のハンドブック。診察室ですぐに役立つ実用的なエッセンセンスが満載。
臨床現場で活用され、日常の認知症診療にぜひお役立ていただきたい一冊。

序文

高齢者の増加とともに認知症者数は増加し,また,軽症の認知症患者の受診や把握も進み,65歳以上の認知症有病率はすでに10%を超えたとの報告も示されて,社会的にも認知症医療の充実が強く要望されるようになってきている.

認知症診療や研究の進歩も目覚ましい.病因解明や原因蛋白などの基礎研究が大きく進歩し,診断や進行予測のためのバイオマーカーに関する研究も進み,臨床的な診断基準のみならず,バイオマーカーを取り入れた診断基準も検討されてきている.さらに,Alzheimer病(AD)においても,その前駆段階と考えられる軽度認知障害(MCI)のみならず,preclinical ADなどの概念も示されてきている.また,我が国においても複数のAD治療薬が使用可能となり,治療の選択肢が広がっている.

地域における医療・福祉などの連携も進められ,かかりつけ医・サポート医,専門医,介護・福祉関係者などを含めた多職種による連携も整備されている.認知症疾患医療センターも設置され,地域連携や救急対応などの体制整備も進められている.ただ,必ずしも全国均一に整備されているわけではなく,地域差の存在が課題である点も指摘されている.日本認知症学会や日本老年精神医学会などにより認知症医療に取り組む専門医も育成されてきているが,増加している認知症者数に比べると,まだまだ不足している現実もある.

さらに多くの医師に認知症医療に取り組んでいただく必要があり,日本神経学会,日本精神神経学会,日本認知症学会,日本老年精神医学会,日本老年医学会,日本神経治療学会の認知症関連6学会が協力して,一般の医師を対象とした『認知症疾患治療ガイドライン2010』(日本神経学会監修/医学書院)も発刊された.治療ガイドラインは認知症診療を支援するための参考資料を提供するもので,エビデンスレベルに沿って推奨グレードを決定している.しかし,認知症診療においてはエビデンスレベルの高い医療はむしろ少なく,専門家の経験や意見も重要である.一方,治療ガイドラインでは,その置かれた位置づけから,専門家の意見といったものを具体的に明快な記述を行うことがしにくい傾向もある.

このような状況から,認知症診療Q&Aを発刊することとした.できるだけ臨床の現場で活用される内容を目指し,認知症診療現場で遭遇すると思われる問題点や疑問点などを中心に92のclinical questionを取り上げた.執筆は我が国の認知症診療の第一線で活躍していらっしゃる専門家を中心に依頼し,エビデンスに基づく医療のみならず,専門家による考えや経験による指針をできるだけ具体的に解説するようにしていただいた.上記の治療ガイドラインや,日本認知症学会による専門医用に作成されたテキストである『認知症テキストブック』(日本認知症学会編/中外医学社)などとの整合性にも配慮するが,エビデンスにこだわり過ぎることなく,専門家が日常診療で行っている診療の工夫やコツといったものも含めて記載していただいた.治療の項では具体的な処方例も記載していただいている.また,有害事象など臨床上の注意点やその回避策,患者や介護者への注意点などの解説など,読者への一言メッセージをOne Point Adviceとして記載していただいた.

本書が臨床現場で活用され,日常の認知症診療に役立つことを期待する.


2012年 4月

中島 健二

目次

Ⅰ. 診断・症候・鑑別診断

1) 認知症

1. 軽度認知障害(MCI)とはどのような状態でしょうか? MCIの診断基準を教えてください.

2. 認知症に進展する軽度認知障害(MCI)はどのようなものでしょうか? その特徴を教えてください.

3. せん妄を認知症と区別するには,どうすればよいのでしょうか?

4. せん妄を早期に把握するには,どのようにすればよいでしょうか? また,進行させないようにするために,注意点や配慮すべきポイントがあれば教えてください.

5. うつ病にも認知機能低下があり偽性認知症と呼ばれていますが,認知症との区別にはどのような点に注意すればよいでしょうか?

6. いわゆる“治療可能な認知症(treatable dementia)”を見逃さないためには,どのような注意が必要でしょうか? かかりつけ医が心がけるべき具体的な注意点や対応を教えてください.

7. 認知機能や精神機能に悪影響を与える薬剤について教えてください.

8. 認知症の中核症状(認知機能障害)の評価尺度について教えてください.

9. 認知症の行動・心理症状(BPSD)を早期に発見するにはどうすればよいでしょうか?

10.認知症の診断手順を教えてください.また,初診の認知症患者で,一般の外来でまず行うべき最低限の検査は何でしょうか?

2) Alzheimer病

1. Alzheimer病(AD)の診断基準が新しく改訂されたと聞きましたが.どのように改訂されたのでしょうか?

2. Alzheimer病(AD)で画像診断をせずに治療を開始してもよいですか?

3. Alzheimer病(AD)の診断でどのような症状に注意すれば正しく診断できますか? AD患者に「取り繕い反応」がよくみられると聞いたことがあります.具体的にはどのような症状でしょうか?

4. Alzheimer病(AD)の画像診断における特徴的所見を教えてください.診断する上での注意点はありますか?

5. Posterior cortical atrophy(PCA)の臨床的特徴や病理学的背景を教えてください.

3) 血管性認知症

1. 血管性認知症(VaD)ではAlzheimer病(AD)と同じように記憶障害が初発症状となるのでしょうか? VaDの症状について教えてください.

2. 血管性認知症(VaD)には複数の診断基準がありますが,どの診断基準を用いるのがよいのでしょうか?

3. 血管性認知症(vascular dementia:VaD)の診断に有用な画像所見について教えてください.

4. 「血管性認知症」と「脳梗塞を合併したAlzheimer病」を鑑別する上で,重要な点を教えてください.

5. 皮質下性血管性認知症という認知症がありますが,どのような疾患でしょうか?

4) Lewy小体型認知症

1. Lewy小体型認知症の臨床的特徴とその診断基準は?

2. 「Lewy小体型認知症」と「認知症を伴うParkinson病」は同じ病気ですか? 症状の違いはあるのでしょうか?

3. Alzheimer病(AD)とLewy小体型認知症(DLB)の鑑別診断で,どのような症状に注意すれば正しく鑑別できますか?

4. レム期睡眠行動異常症と夜間幻覚の鑑別点を教えてください.

5. Lewy小体型認知症(DLB)の診断に123I-MIBG心筋シンチグラフィーが有用と聞いたことがあります.どのように有用でしょうか? また,この検査を利用する上での注意点を教えてください.

5) 前頭側頭葉変性症

1. 前頭側頭型認知症の臨床的特徴と診断基準は?

2. 前頭側頭葉変性症の分類を教えてください.

3. 認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS-D)の臨床的特徴は?

4. 認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS-D)と前頭側頭型認知症-運動ニューロン疾患(FTD-MND)は異なる疾患でしょうか?

5. Logopenic aphasiaとはどのような病態でしょうか? また,どのような疾患にみられるのでしょうか?

6) その他の疾患

1. 認知機能障害で発症する進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症があると聞いたことがありますが,どのような症状で発症するのでしょうか?

2. 「嗜銀顆粒球性認知症」や「神経原線維変化型老年期認知症」というタウ蛋白が関係する認知症があります.その臨床症状を教えてください.

3. 急速に進行する認知症としてCreutzfeldt-Jakob病(CJD)がありますが,臨床症状や検査所見を教えてください.

4. 特発性正常圧水頭症の診断手順を教えてください.

Ⅱ. 病因・病態

1. 我が国における認知症の有病率・発生率について教えてください.海外と比べてはどうでしょうか?

2. 家族性Alzheimer病にはどのような遺伝子異常が知られているのでしょうか? 家族性Alzheimer病に臨床的な特徴はありますか?

3. アミロイドβ蛋白はどのように老人斑に蓄積されるのでしょうか? そのメカニズムを教えてください.

4. タウ蛋白はいろいろな認知症にかかわる重要な分子と聞きました.タウ蛋白と認知症の関係を教えてください.

5. α-シヌクレイノパチーと呼ばれる疾患群があると聞きました.どのような疾患概念でしょうか?

6. 前頭側頭葉変性症に関連する蛋白分子が複数報告されていると聞きました.これまでにどのような蛋白がわかったのでしょうか?

7. 認知症の行動・心理症状(BPSD)の背景となる病態を教えてください.

Ⅲ. 治療法選択・治療方針

1. 認知症の治療方針はどのようにしますか?

2. 高齢者に対する薬物治療をする際の注意点を教えてください.

3. せん妄の治療方針や,薬物治療はどのようにするのがよいでしょうか?

4. 認知症者に対して抗精神病薬を使用する際の注意点を教えてください.

5. 認知症の行動・心理症状(BPSD)の発症や悪化を防ぐためには,どうすればよいでしょうか?

6. 認知症者にみられるうつ症状の治療方針は?

7. 認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する薬物治療,特に焦燥性興奮(agitation),不穏などに対する薬物治療について教えてください.

8. 気分安定薬を用いる場合があると聞いたことがあります.具体的にどのように使用するか教えてください.

9. 認知症者にみられるもの盗られ妄想に対して,有効な薬物治療はありますか? その他の妄想に対する治療についても教えてください.

10.認知症者で性的行動の亢進がみられた時には,どのように対応し,治療すればよいでしょうか?

11.認知症者にみられる睡眠障害に対してベンゾジアゼピン系薬剤を用いる際の注意点を教えてください.また,それ以外の有効な薬剤はありますか?

12.レム期睡眠行動異常症(RBD)の治療はどのようにすればよいでしょうか?

13.生活習慣病の治療が認知症発症予防に関連すると聞いたことがありますが,降圧薬,スタチンあるいは糖尿病治療薬のエビデンスを教えてください.

Ⅳ. 治療の実際(薬物療法)

1. Alzheimer病(AD)の治療薬にコリンエステラーゼ阻害薬というものがあります.作用機序やその効果について教えてください.

2. コリンエステラーゼ(AChE)阻害薬を使用すると食欲低下,悪心,嘔吐,下痢などの消化器症状が出ると聞いています.これに対する対処法は? また,同薬の治療継続を希望される場合はどうしたらよいでしょうか?

3. 軽度認知障害(MCI)の方に抗認知症薬を使用する場合がありますが,認知機能改善に対する有効性はどうでしょう? また,認知症進展予防効果はありますか?

4. Alzheimer病(AD)の治療薬にNMDA受容体拮抗薬があると聞きました.どのような患者に対して使用するのでしょうか? コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬と併用は可能でしょうか?

5. 抗認知症薬はいつから投与するのがよいでしょうか?

6. 血管性認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などの抗認知症薬の有効性について教えてください.

7. 血管性認知症に対して我が国で保険適用を有する薬剤を教えてください.

8. 脳卒中後の患者で認知機能が低下した時,どうすべきでしょうか?

9. Lewy小体型認知症にもコリンエステラーゼ阻害薬が有効であると聞いたことがあります.Alzheimer病と同様に使用してもよいのでしょうか? 使用する際の注意点はありますか?

10.Lewy小体型認知症(DLB)・認知症を伴うParkinson病(PDD)で,幻覚や妄想が強い場合の対処法について教えてください.

11.Lewy小体型認知症(DLB)のパーキンソニズム,起立性低血圧,便秘などの認知機能低下以外の症状に対する治療法について教えてください.

12.前頭側頭葉変性症に対してコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬などの抗認知症薬は効果がありますか? また,抗認知症薬以外で有効な薬剤を教えてください.

13.認知症に有効な漢方薬について教えてください.どのような症状に対して使用するのか,また使用する際の注意点はどういったものがありますか?

Ⅴ. 治療の実際(非薬物療法)

1. 身体運動やレジャー活動は認知機能低下を予防すると聞いたことがあります.どのような運動や活動がよいか具体的に教えてください.

2. 食事や飲酒は認知症発症に関連すると聞いたことがあります.認知症予防にとってよい食事とはどのような食事でしょうか? また日本人の場合,適度の飲酒は認知機能低下や認知症発症を予防しますか?

3. リアリティー・オリエンテーションという非薬物療法があると聞きました.その効果と具体的な方法を教えてください.

4. バリデーション療法が認知症の行動・心理症状(BPSD)の改善に効果的と聞きました.どのような方法か教えてください.

5. 回想法の具体的な方法について,教えてください.

6. 認知トレーニングは軽度認知障害(MCI)から認知症進展予防に有効でしょうか?

7. 最近,パーソンセンタード・ケア(person-centered care)という言葉をよく耳にしますが,どのようなケアのことでしょうか? 認知症ケアの心がけについても教えてください.

8. 認知症者あるいは家族・介護者に対する教育が大切であると聞きますが,そのポイントを教えてください.

9. 徘徊が頻繁になり抗精神病薬を使用しましたが改善されません.家族も大変苦労しておられますが,少しでもよくするにはどうしたらよいでしょうか?

10.前頭側頭型認知症の特徴的な症状を利用した行動療法が効果的と聞きました.具体的にはどのようなアプローチでしょうか?

Ⅵ. 社会的対応について(介護保険・成人後見人制度)

1. 道路交通法で認知症者の自動車運転は禁止されていますが,私の患者さんはその旨を説明しても理解されず,ひとりで運転してしまいます.自動車運転をやめさせることはできないものでしょうか?

2. 介護保険制度を利用する際に主治医意見書の記載を依頼されますが,認知症者の場合,どのような点を気にかけて記載すべきでしょうか?

3. 軽度認知障害や認知症の患者に対する病名告知についてのメリットとデメリットは何でしょう?

4. 成年後見制度とはどのような制度でしょうか?

5. デイサービスを薦めるのですが,自宅から出たがらず閉じこもり傾向となっています.このような方へのよい対処方法はないものでしょうか?

6. 在宅療養が困難になった認知症高齢者が療養する施設には,どのようなものがありますか?

Ⅶ. 身体合併症・終末期の対応

1. 重度の認知症とはどのような状態をいうのでしょうか? また,どのような身体合併症が起こりやすいのでしょうか?

2. 嚥下障害による誤嚥性肺炎予防に有効な薬剤について教えてください.

3. 認知症患者にみられる栄養障害の対応は? 胃瘻の適応についても教えてください.

4. 尿失禁を示す認知症者への対応は,どうすればよいでしょうか?

Ⅷ. 認知症診療の進歩について

1. ADNI研究が進んでいると聞きます.その成果にはどのようなものがありますか? また,我が国でもJ-ADNI研究が進んでいると聞きますが,どのような研究でしょうか?

2. アミロイドPETにより生体での脳内アミロイドβ蛋白の沈着を調べることができると聞きました.認知症や軽度認知障害の診断における臨床的意義について教えてください.

3. 脳脊髄液中のアミロイドβ蛋白やタウ蛋白を測定することがあると聞きましたが,どのような意義があるのでしょうか?

4. アミロイドβ蛋白に対する治療法が開発中であると聞きましたが,どのような薬剤があるのでしょうか?

5. タウ蛋白を標的としたAlzheimer病(AD)治療薬が開発されていると聞きましたが,どのような作用機序で,どのような効果が期待できるのでしょうか?

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書籍情報

  • ISBN:9784498129405
  • ページ数:308頁
  • 書籍発行日:2012年5月
  • 電子版発売日:2013年2月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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