医療機関における暴力対策ハンドブック

  • ページ数 : 180頁
  • 書籍発行日 : 2011年5月
  • 電子版発売日 : 2012年6月21日
¥3,960(税込)
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商品情報

内容

「暴力」のない安全、安心の職場をめざす!
医療機関で従来問題にされてきた下記4パターンの暴力を阻止するための対策と予防、対処法がつまった書。
1)職員から職員
2)患者から職員
3)患者から患者
4)職員から患者
医療機関だけでなく介護や福祉といった現場においても役立つ一冊。

序文

医療機関で発生する「暴力」は,「患者やその家族から職員」に向けられた事象が近年課題として認識されています.しかし,こうした事象の背景には,その他の様々な暴力が存在していることを忘れてはなりません.例えば,「患者同士のトラブル・暴力」や「職員から患者に対する暴力」も,数は少ないですが犯罪行為としてメディアに取り上げられています.また,「職員同士のトラブル・暴力」も医療に携わる職種の専門性と縦割りの組織構造のなかで目立ってきています.例えばハラスメントなどの事例です.これは上司から部下へのハラスメントだけでなく,逆に管理者などが能力を問われて部下達に追い込まれるようなこともあります.

暴力には様々な定義があります.本書では身体的暴力,精神的暴力(言葉の暴力,いじめ,ハラスメント)などを取り上げます.医療機関では以前より暴力が存在していました.しかし,行為者が「患者」であったため容認するという文化や,職員間の暴力を「指導」と認識せざるを得ない状況が少なからず存在したことが対策に二の足を踏ませることになっていたのかもしれません.

医療機関では,あらゆる暴力は許されません.こうした事象は人の尊厳を傷つけるものであり,なによりも我々がめざす医療の質の向上を妨げます.

暴力の対策を行ううえで最も重要なことは暴力発生の「予防」です.暴力発生を未然に防ぐ,あるいは最小に抑えることによって,医療機関が患者にとっても,職員にとっても安全な場となります.もちろん発生した暴力事例への対応も大事ですが,事例への対応だけを考えているようでは新たな事例の対応に常に追われることになります.

たしかに医療機関でも暴力に対する対策が少しずつ始まっています.先進的な取り組みをしている病院も珍しくありませんが,良好事例(グッドプラクティス)が共有されていないことや,小手先だけの対策に終わって対策が不十分な医療機関が多いのが実情です.また,医療機関で具体的な予防策を行う際に,「エビデンス」を求められることがありますが,予防の効果というのはなかなか見えづらいのが現状です.しかし時系列や場所ごとのデータをとって予防策をきちんと行えば次第に事象が減ってくるのが認識されるでしょう.

医療機関での暴力対策を抜本的に行うためには,大げさな言い方かもしれませんが,医療機関で暴力を容認しない「文化」を醸成する組織改革が必要です.場合によっては数年かかるかもしれません.そこで不可欠なことは医療機関のトップである院長や理事長などが職員を守るという強い意識をもつことと,対策を実行する熱心な担当者が必要ということです.暴力対策は地道な作業の繰り返しです.誰にとっても暴力は扱いたくない内容というのが本音です.そのため応援してくれる職員がなかなか集まらず,担当者が孤立していることもあります.また暴力に対応するストレスは非常に大きいため,担当者は自分自身のメンタルケアも不可欠です.本書を通してそうした担当者にもエールを送りたいと考えています.

本書の大きな特徴は「患者による職員への暴力」に限らず医療機関で発生する,様々な視点を取り扱っている点です.また,それぞれの章で取り上げた内容は初級編として,なるべく手に取りやすくなるように心がけました.紙面の都合で深く掘り下げた内容が紹介できないところもありますが,参考文献などでさらに深めていただければと思います.また,タイトルでは「医療機関」としていますが,同様の問題が起きている介護や福祉の場などでもお役にたつと考えています.

本書は医療機関で働くすべての職種の方々に読んでいただきたい書籍です.医療機関のトップである理事長や院長にも是非読んで頂き,自らが方針を示すことが重要であることを理解するだけでなく,実際の取り組みに汗をかいている人たちを「大事」にする気持ちをもって欲しいと思います.管理者は普段から予防に努めるだけでなく,事例が起きたとき,まず最初に「部下を守るにはどうしたらいいか」を考えるべきです.もちろん管理者でなくとも,すべての職員は自分自身をどのようにして守り,組織の体制に参画するためになにができるかを考えていかなければなりません.

本書を通じて,医療機関でのあらゆる暴力を予防し,発生しても早期に対応することで,患者にとっても職員にとっても安心できる環境を作り,本来の業務である医療の質を高めることに専念できるような組織作りの一助となればこのうえない喜びです.本書の出版にあたって中外医学社企画部の岩松宏典氏,他スタッフの方々に感謝申し上げます.


2011年 4月

編集者一同

目次

1章 職員から職員への暴力

現状と対策

A.職場内で最も心理的負担が強いのは「職員間暴力」という事実

B.職員間暴力の被害者:6割が「何もできず」,相談するのは1~5割

C.看護師が受ける職員間暴力の被害実態:精神的暴力が多い

D.職員間暴力の影響

E.職員間暴力の被害事例

F.セクハラ対策から職員間暴力対策,  さらには院内暴力対策へ

1.職員間暴力の被害事例と対応

A.職員間暴力の被害を傍観する職員の存在

B.職員間暴力の被害事例と対応

2.看護部長の立場から見た職員間の暴力と対策

A.職員間の暴言・暴力の予防と対策

B.当院の取り組み

3.医療現場でパワーハラスメントが起きる背景と発生時の具体的対応

A.医療現場でパワーハラスメントが起きる背景

1.ミスが許されない職場

2.ストレスフルな職場

3.スペシャリスト集団,組織統括の概念が少ない

B.パワーハラスメント問題への具体的対応

1.窓口に相談するパワハラ問題

2.職場で解決するパワハラ問題

3.管理者の役割

4.一人一人の対応

5.相談しましょう

4.職員間暴力を防ぐ職場でのコミュニケーションの活性化

A.看護職員(看護師,クラーク,看護助手)による職場活性化の取り組み

B.救急外来における医師による看護師のモチベーションを上げる取り組み

コラム─フィッシュ哲学

まとめ─職員から職員への暴力

2章 患者(家族を含む)から職員への暴力

現状と対策

A.医療機関における院内暴力の実態調査

B.最も暴力を受けているのは誰?

C.暴力が発生する背景

D.職場で取り組んでうまくいった成功事例

E.医療機関における職員の安全への配慮

1.患者からのセクハラ被害と対応

A.セクハラは個人対応ではなく組織対応が基本

B.セクハラへの対応:「明確な意思表示」,「密室化を作らない」,「複数対応」

C.悪質なセクハラの対応:「書面による警告」,「証拠の提示」

2.医療従事者へのストーカーの予防と対応

A.ストーカーから身を守る方法

3.船橋市立医療センターの取り組み─救命救急センター医長の立場から─

A.当院における患者対応の3つの基本姿勢:「丁重,丁寧,低姿勢」

B.救急外来における患者,家族対応の実際

1.電話対応編

2.救急外来編

3.暴言・暴力対応編

C.今後の展望

4.筑波メディカルセンター病院の取り組み─渉外管理課の立場から─

A.暴力発生予防のための対策

1.要注意患者および家族の情報共有

2.暴力対策マニュアルと方針の策定

B.事例紹介

5.川崎市立多摩病院の取り組み─看護部長の立場から─

A.暴言・暴力に対する当院の取り組みの経緯

1.安全衛生委員会で暴言・暴力の実態調査

B.患者・家族からの暴言・暴力に対する取り組みの実際~予防,直後の対応,再発防止策~

1.病院の方針を明確にして病院全体で取り組む

2.暴言・暴力を受けた職員に対して

C.各種マニュアル作成の整備と活用

まとめ─患者(家族を含む)から職員への暴力

3章 患者から患者への暴力

現状と対策

A.患者同士の暴言や暴力の発生状況

B.対策のあり方

1.医療機関としての方針を示す

2.小さなトラブルに迅速に対応する

3.凶器になりそうなものを管理する

4.トラブル発生の際の対応を決める

5.長期的な対策として「個室」化を検討する

1.事前の対策で患者間トラブルを予防する

A.暴言や暴力に至る背景と事例

1.病院の設備事情を背景とするもの

2.患者の状況認知(ニーズを含め)の差異を背景とするもの

B.予防策

1.設備・表示について検討し工夫を加える

2.五感を働かせた状況把握と看護判断と対応

3.入院中の生活ルールをしっかり明示する

4.自分達が事前対処できる範囲を知っておく

C.患者間のトラブルが発生した時の対応方法

1.患者同士で解決が可能な場合

2.看護師が仲裁に入る場合

3.専門の担当者(保安員,夜間など人数の少ない時は事務当直や男性医師など)に通報が必要な場合

D.事後対応

1.被害者のケア

2.事後報告

2.精神障害が関係する患者間暴力への対応

盗食して患者が殴られた場合

幻聴により他の患者に暴力をふるった場合

認知能力の低下により,他患者の部屋に入り傷害を負わせた場合

精神障害者が消化器外科に入院中に他患者を殴った場合

3.患者間のトラブル防止と警察通報の判断

A.患者間のトラブルの原因

B.患者間のトラブル防止策

1.病院の管理権を確立し行使する

2.マニュアルの整備

3.情報の共有化をはかる

4.病室の個室化

5.現金持ち込み禁止の厳守

C.警察との連携と協力体制の確立

1.警察に通報すべき暴力行為

2.警察への通報基準

3.誰が警察へ通報するか

4.警察との連携強化策

コラム─前橋赤十字病院の取り組み「よろず相談メモ」の活用

まとめ─患者から患者への暴力

4章 職員から患者への暴力

現状と対策

A.職員から患者への暴力の事例

B.予防と対応のための体制作り

C.ロールプレイによる教育

D.破壊的行動をとる医師(Disruptive physician)

E.外部の相談窓口

1.事例から読み解く─看護師が起こした傷害事件─

A.京都大学医学部附属病院の看護師による患者への傷害事件─不必要なインスリン投与により患者が意識障害─

B.佐用共立病院の看護師による患者への傷害事件─6人の患者の肋骨を折る─

C.看護師による患者への傷害事件防止のために

2.愛知県医師会医療安全支援(苦情相談)センターの事例を通して

A.対象事例の抽出

B.対象事例の言葉上の内容の吟味

C.検証事例から透見できるもの

3.医療従事者がトラブルを起こすとき─精神科医の立場から─

A.医療従事者本人に精神的な問題がある場合

B.本人以外の要因がある場合

コラム─「ドクハラ」に関連した悪質な反社会勢力やマスコミの対応

まとめ─職員から患者への暴力

5章 医療機関での体制作り

1.医療機関で発生する暴力は組織的な取り組みで克服する─実態と対策─

A.暴力対策を進めるための7つのステップ

B.対策が進む医療機関の特徴

C.対策に取り組む意義

2.医療機関における組織的な取り組みのための参加型プログラムの実施─アクションチェックリストの活用─

A.暴力対策のための職員参加型研修の企画

B.組織としての取り組みのヒントと活用できるツール

1.アクションチェックリスト

2.チェックリスト活用のヒント

コラム─暴力後に行うメンタルケア

まとめ─医療機関での体制作り

医療機関における安全で,安心な環境づくりのための改善アクションチェックリスト2011

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書籍情報

  • ISBN:9784498076464
  • ページ数:180頁
  • 書籍発行日:2011年5月
  • 電子版発売日:2012年6月21日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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