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抗うつ薬プラクティカルガイド 上手に選んで使いこなす!

  • ページ数 : 180頁
  • 書籍発行日 : 2012年1月
  • 電子版発売日 : 2012年9月21日
¥3,300(税込)
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商品情報

内容

広く役立つ抗うつ薬の知識を凝縮!
うつ病の治療は、精神科医や心療内科医だけのものではなく、産業医を含めた全ての医師が対応・治療する能力を備えておかねばならない状況となりつつあります。中でも薬物療法の知識は、増加したうつ状態・うつ病の治療に必須ですので、「プラクティカルに役立つ」ことに重点をおいた本書は、精神科医、他科の医師、薬剤師まで、広くご活用いただきたい書です。

序文

わが国では気分(感情)障害圏の患者が増加している(図1).WHO(世界保健機関)の診断基準ICD-10を用いた厚生労働省の患者調査によれば,平成11年(1999年)におけるF30-F31:躁病エピソード及び双極性感情障害(躁うつ病)の患者数は約7万人,F32-F33:うつ病エピソード及び反復性うつ病性障害患者は約24万人,F34:持続性気分(感情障害),F38:他の気分(感情)障害及びF39:特定不能の気分(感情)障害などを合わせたものは約13万人であった.したがって,気分障害圏患者の合計は44万人ということになる.そして,10年後の平成20年(2008年)の調査結果によれば,F30-F31:約12万人,F32-F33:約70万人,F34及びF38-F39:約22万人の合計約104万人となり,気分障害圏患者は10年間で約2.4倍の増加がみられている.特にF32-F33の増加は顕著であるが,その増加率は年代別にみても傾向は変わらず,小児期から高齢者までどの年代においても気分障害圏の患者は増加している.そして平成23年(2011年)7月に厚生労働省は精神疾患をがん,急性心筋梗塞,糖尿病,脳卒中と共に重点的に医療計画を立てる必要がある五疾患に加えた.精神疾患の中で最近増加し,対策が急がれるのは,うつ病と認知症であろう.

このような気分障害圏患者の増加については,いくつかの要因が考えられる.直接的な要因の第一は,平成10年(1998年)以来13年間持続しているわが国における急激な自殺者の増加である.自殺の原因の第一位は統計開始以来ずっと健康問題による自殺であるが,その半数はうつ病とされており,うつ病の予防,早期発見・治療は自殺防止対策をする上で重要な位置づけを占めている.この10年前と比較して,働き盛りの50歳台の男性の自殺者が増加していることから,勤労者へのうつ病の啓発は重要な課題である.

ところで平成10年(1998年)にどうして急激な自殺者の増加がみられたかについては諸説がある.わが国の自殺者数は経済状況とよく相関しており,平成9年の完全失業率は4.2%であったが,平成10年には4.9%に急激に増加し,その時に自殺者はおよそ八千人増加している.その年は大手都市銀行や証券会社の倒産があった年であった.それ以来,わが国ではリーマンショックなどによる経済不況が持続している.さらに今回の東日本大震災や福島第一原発事故などの影響も雇用不安や人間関係の破綻を来し,将来に対する不安を増強させ,今後もうつ病患者や自殺者は増加する可能性があると思われる.

また,少子高齢者社会を迎え,世代間の考え方に解離が起こっており,それは労働観の違いにもみられ,職場への従属意識は若い人ほど少なくなっているように思われる.また,成果主義や裁量労働など働き方にも変化が起こっており,非正規雇用社員の割合は増加し,その一方で,個人の責任はかえって重くなっており,社会全体にストレス負荷が強まっている.

このように考えていくと,うつ病になりやすい執着性格や生真面目な性格を有する人にとって,現代は住みにくい世の中になってきており,うつ病が発症しやすい状況が持続していると考えられる.さらに,IT(情報通信)機器を用いた間接的なコミュニケーションが発達して,いわゆる人間関係が疎になってきている.また,企業は不況克服,合理化のため正社員を減らし,必然的に長時間労働を余儀なくされており,過重労働となることも多く,労働者は心身ともに疲れている.また,多くの女性が社会進出して経済的には生活が豊かになってきたが,まだまだ女性が男性と同等に労働するまでの職場環境がどの職場にも準備されているとは言い難い.また,子供の養育問題や高齢者の扶養の問題など社会全体で改善しなければならない課題が山積している.

これら社会の変化に適応できない人の増加は,うつ状態を発症する大きな要因となっている.さらに,精神科医側の問題であるが,病前性格や重症度,病態を全く考慮せず,症状項目とその持続時間だけで診断するICD-10診断や米国精神医学会の診断基準DSM-IVの浸透も多様な気分障害圏の診断を増加させた可能性がある.

このような社会的な背景が変化している状況で,1999年(平成11年)にこれまでの三環系や四環系抗うつ薬とは違った新規抗うつ薬である選択的セロトニン(トランスポーター)再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor: SSRI)の一つであるフルボキサミン(ルボックス,デプロメール)がわが国にも上市され,うつ状態・うつ病に対する新たな薬物療法が開始された.その後に上市されたSSRIやSNRI(serotonin noradrenaline reuptake inhibitor),NaSSA(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant)などは,従来の抗うつ薬に比べて抗コリン作用などの副作用が少なく,安全性が強調されており,これらの薬剤は使いやすく広範なうつ状態に使われるようになった.特にこれらの薬剤を開発した多くの外資系企業はうつ病の啓発に熱心に取り組み,うつ状態・うつ病の人がこれまで敷居が高かった精神科クリニックにも容易に受診するようになったが,このこともうつ病患者の受療率を上げたと言える.一方,安易な薬物療法がなされているのではないかという批判もある.したがって,個々の抗うつ薬の選択,用法,用量,特徴,副作用などを熟知し,臨床に応用する必要が出てきている.

典型的なうつ病治療の基本は,薬物療法と休養である.うつ病は,適切な診断,治療がなされれば治る病であり,現代のうつ病治療に薬物療法の知識は欠かせない.

本書は,精神科医や心療内科医だけでなく一般診療科の医師や薬剤師をも対象にして書かれたもので,分かりやすく,臨床現場で直ぐに役立つことを目標としている.

うつ病の治療は,精神科医や心療内科医だけのものではない.増加したうつ病の治療には,産業医を含めたすべての医師が対応し,治療する能力を持たねばならない状況になっていると考えられる.中でも薬物療法の知識は,増加したうつ状態・うつ病の治療に必須であるので,本書が多くの医師に利用されることを期待したい.


2011年 12月

中村 純

目次

1.うつ状態・うつ病における抗うつ薬の位置づけ

1.うつ病の診断が確定している場合に薬物療法が選択される

2.双極性障害が示すうつ状態(双極性うつ病)

3.抗うつ薬使用の原則

4.うつ病に対する薬物治療アルゴリズムの課題

5.一般的なうつ病の経過

6.薬物療法を補完する基本的な精神療法

2.抗うつ薬の種類・効果的な薬物療法

1.うつ病の多様性

2.抗うつ薬の有害事象からの薬剤選択

3.意欲・活動性低下や思考力低下が前景であるうつ病

4.不安・焦燥感が前景であるうつ病

5.食欲不振や不眠が前景であるうつ病

6.精神病性うつ病(妄想性うつ病)

7.血管性うつ病(vascular depression,post-stroke depression)

3.三環系抗うつ薬

1.三環系抗うつ薬の必要性

2.各三環系抗うつ薬の特徴

1.イミプラミン

2.アミトリプチリン

3.トリミプラミン

4.ノルトリプチリン

5.クロミプラミン

6.アモキサピン

7.ロフェプラミン

8.ドスレピン

4.四環系抗うつ薬・トラゾドン

1.四環系抗うつ薬

1.マプロチリン

2.ミアンセリン

3.セチプチリン

2.四環系抗うつ薬の適応

3.トラゾドン

4.トラゾドンの適応

5.せん妄への適応

6.四環系抗うつ薬/トラゾドンによる賦活と自殺の危険性

5.SSRI

(1)フルボキサミン

1.用法や用量,投与期間の工夫

2.フルボキサミンの副作用と薬物相互作用

3.σ1受容体について

(2)パロキセチン

1.用法・用量

2.有効性

3.使用にあたって留意すること

4.症例

(3)セルトラリン

1.薬理学的特性

2.臨床効果の特徴

3.有害事象

4.症例報告

(4)エスシタロプロム

1.効能,用法・用量

2.薬理学的特徴

3.有効性

4.安全性

5.薬物動態・薬物相互作用

6.高齢者

7.妊婦・産婦・授乳婦

8.身体合併症

9.治療期間

10.他剤からの置換

6.SNRI

(1)ミルナシプラン

1.ミルナシプランについて

2.ミルナシプランはどのようなうつ病に効果が期待されるか

3.ミルナシプランを年齢で使い分ける

4.性別でミルナシプランを使い分ける

5.精神症状によるミルナシプランの使い分け

6.躁状態を伴ううつ病へのミルナシプランの選び方

7.ミルナシプランの用い方

(2)デュロキセチン

1.デュロキセチンが奏効した痛みと多彩な心気症状を伴ううつ病の1例

2.適応

3.用法・用量

4.利点

5.副作用

6.禁忌

7.使用上の注意点

8.薬物動態

9.薬物相互作用

10.中止法

7.ミルタザピン

1.ミルタザピンとは?

2.ミルタザピンの薬理学的作用

3.ミルタザピンの利点

4.ミルタザピンとミアンセリンは何が違うか

5.大規模研究からみたミルタザピンの位置づけと使用方法の留意点

6.併用療法としての可能性

7.有害事象

8.スルピリド

1.ドパミン神経路と生理的機能

2.ドパミン2 受容体

3.スルピリドの薬理

4.スルピリドの商品名・剤型

5.スルピリドの使い方

9.抗うつ薬の効果が不十分な時の工夫―難治性うつ病(治療抵抗性うつ病),追加療法,増強療法―

1.難治性うつ病に対する追加療法

1.炭酸リチウム

2.甲状腺ホルモン

3.バルプロ酸・カルバマゼピン

4.ラモトリギン

5.非定型抗精神病薬

6.ドパミン作動薬

7.ケタミン

10.抗うつ薬の副作用とその対策―うつ病の多様性をめぐって―

1.患者をも"急増"させた?副作用の克服

2.抗うつ薬の副作用

3.抗うつ薬の副作用?うつ病の症状?

4.うつ病の多様性

11.抗うつ薬と他の薬剤との相互作用

1.薬物相互作用とチトクロームP450

2.主な新規抗うつ薬の薬物相互作用

12.一般身体科医と精神科医との連携

索引

付.抗うつ薬一覧表

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書籍情報

  • ISBN:9784498017849
  • ページ数:180頁
  • 書籍発行日:2012年1月
  • 電子版発売日:2012年9月21日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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