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- Heart View 2021年12月号 Vol.25 No.13 心不全治療にSGLT2阻害薬を使いこなす
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序文
企画にあたって
室原豊明(名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科教授)
これまでのほとんどの糖尿病治療薬(血糖降下薬)には,毛細血管障害を減少させるエビデンスはあっても,大血管障害や心臓血管死を比較的短期間のうちに抑制できる効果はほとんどなかった。むしろ血糖値を短期間に厳格に下げすぎると重症低血糖をきたし,大血管障害は不変ないしはむしろ悪化というエビデンスも出てきていた。
しかしながら,衝撃的なEMPA-REG OUTCOME 試験が最初に出てきてからはこの常識も覆され,特に複数のSGLT2阻害薬において,心不全悪化による入院や,心血管死または心不全による入院の複合エンドポイントにおいて,さらには腎機能の悪化などの複合腎イベントを抑制できることが明らかにされた。さらに薬剤によっては,2型糖尿病患者の3-point MACE(複合心血管イベント)や全死亡まで有意に抑制するとのエビデンスも出てきて,急速に循環器専門医の関心が高まった。このような背景から,国内外で糖尿病専門医と循環器専門医とが情報を交換し密に連携し,合同のガイドラインやステートメントを発表するようになった。
その後,SGLT2阻害薬は必ずしも2型糖尿病を合併していなくても,慢性心不全患者やCKD 患者の予後を改善できるというエビデンスが出てきた。さらには,これまで難攻不落と言われ,利尿薬しか適応のなかった収縮能の保たれた心不全(HFpEF)患者の予後も改善させるというエビデンスまで登場するに至った。これらの背景より,SGLT2阻害薬は今後糖尿病の有無にかかわらず,広く「心不全治療薬」として使われていく可能性が高くなった。
そこで今回の企画では,「心不全治療にSGLT2阻害薬を使いこなす」と題して,各方面のエキスパートの先生方から,SGLT2阻害薬の発見と基礎研究から臨床応用・作用機序,さらには将来の心血管系疾患への治療応用について詳しくご解説いただいた。いずれの項目も素晴らしい内容となっており,読者の皆様には大いに参考にしていただけるものと確信する。
目次
特集:心不全治療にSGLT2阻害薬を使いこなす 企画・構成/室橋豊明
【診る】
1.SGLT2の発見とSGLT2阻害薬の開発経緯 金井好克
2.SGLT2阻害薬のクラス・エフェクトと,ドラッグ・エフェクト 菅沼正司
3.【Expertise】これまでの利尿薬とSGLT2阻害薬の関係,相互作用など 金﨑啓造
4.糖尿病性心筋症を診断する 丹野雅也,長瀬ちひろ,三浦哲嗣
5.糖尿病患者におけるHFpEFの病態と診断 坂東泰子
【識る】
6.SGLT2阻害薬の考えられる心不全抑制機序 佐野元昭
7.SGLT2阻害薬の考えられる腎保護作用の機序 丸野紗也子,田中哲洋,南学正臣
8.【Expertise】SGLT2阻害薬のケトン学説とは? 倉林正彦
9.【Expertise】SGLT2阻害薬は動脈硬化疾患も予防できる? 東 幸仁
【治す】
10.SGLT2阻害薬の血糖低下作用の機序と適正使用ガイダンスについて 藤田義人,稲垣暢也
11.2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験の概要 北風政史
12.2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の腎アウトカム試験の概要 横田祐之介,児玉 豪,深水 圭
13.【Expertise】SGLT2阻害薬は,アジア人で特に有効なのか? 岩本秀幸,木村友彦,加来浩平
14.左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)におけるSGLT2阻害薬のエビデンス 筒井裕之
15.【Expertise】SGLT2阻害薬はHFpEF 患者にも有効か? 大谷朋仁,坂田泰史
16.心不全診療におけるSGLT2阻害薬の位置付け 今村輝彦
17.糖尿病専門医と循環専門医の連携 田中敦史,野出孝一
連載
・【心臓の解剖 知っておきたい知識-疾患の病態生理から治療へつなげる解剖学-】
第9回 上大静脈の基本構造と疾患 井川 修
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書籍情報
- ISBN:9784008102513
- ページ数:120頁
- 書籍発行日:2021年11月
- 電子版発売日:2021年11月10日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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